森本草介展
昨年10月25日の豪雨で大きな被害に見舞われたホキ美術館。改修工事の後はコロナ禍にも見舞われ、実に9カ月ぶりの再開となりました。
リニューアルオープンを記念した展覧会は「森本草介展」。ホキ美術館は、創設者の保木将夫が、写実絵画の第一人者である森本草介の作品に出会ったことがきっかけになって設立。美術館の原点に還り、再び森本草介の展覧会から再スタートという事になります。
「森本草介展」会場
保木氏の写実絵画コレクション第一号は、《横になるポーズ》。1998年にこの作品を手にして以降、保木氏は森本氏と親しく交わり、その後も数多くの作品を収集しました。
今回の展覧会では、34点の森本作品がギャラリー1にずらり。森本氏ならではのセピアトーンの作品は、ゆったりとした時間を感じさせます。
森本草介《Venus》2010年
森本草介《未来》2011年
森本草介《光の方へ》2004年
同時にギャラリー2では「第3回ホキ美術館大賞展」も開催しています。40歳以下の新人写実画家を対象に昨年行われた第3回ホキ美術館大賞には全国から93点の応募があり、大賞には中西優多朗さんの《次の音》、準賞には岩下慎吾さんの《神鳴》が選ばれました。両作を含めて、入選作21点が紹介されています。
大賞に選ばれた中西優多朗さんは、2000年生まれ。前回の第2回ホキ美術館大賞ではなんと16歳で入選を果たしている、まさに気鋭の若手作家です。現在は京都市立芸術大学に在学中、今後の活躍も注目したいと思います。
(左)中西優多朗《次の音》2019年
ギャラリー3以降は常設展。野田弘志、五味文彦らの作品や、最後のギャラリー8にはホキ美術館を代表する作家14名による描きおろしの大作「私の代表作」など、さまざまな写実作品を展示。「本物そっくり」だけではない、作家それぞれの個性が感じられます。
ギャラリー3の展示
ギャラリー8の展示
豪雨は、美術館の周辺が平年の1カ月分の雨量が数時間で降るほどの凄まじさ。水は美術館裏側のスロープから一気に浸水し、水圧で美術館のドアが曲がるほどの被害を受けたそうです。
その被害は、残念ながら作品にも及んでおり、約100点が水に濡れ、うち約50点は修復が必要な状態に。修復作業は進んでいますが、現時点でも30点ほどは、作家に確認しながらの修復が進められています。
美術館は、日時指定の予約制を導入しております。来館前にウェブでお申し込みください。
[ 取材・撮影・文:古川幹夫 / 2020年7月30日 ]