ガンダムを鹵獲したシャアに魅了された人々「マリガン編」|『ジークアクス』考察
2025年4月8日(火)より日本テレビ系列で放送中のTVアニメ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』。その第2話「白いガンダム」において、1月に劇場で先行公開された『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』における1年戦争パートの一部が遂にベールを脱ぎました。
また、第4話「魔女の戦争」やその予告映像において、第2話「白いガンダム」で描かれた1年戦争パートのキャラクターが登場したり、1年戦争の影響で『機動戦士ガンダム』と比較するとその後の人生に大きな変化がおきたキャラクターがいることがわかりました。
『機動戦士ガンダム』で描かれた1年戦争の別の可能性を描き、そこから先の未来を生きるアマテ・ユズリハたちの物語を紡いでいる『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』ですが、今後も1年戦争が別の結末を迎えたことで影響を受けた人々が現れるのでしょうか。
もしシャア・アズナブルがあの時、ガンダムとペガサス(※ペガサスはアニメ『機動戦士ガンダム』におけるペガサス級二番艦ホワイトベースの立ち位置で奪取後はソドンと改名。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』劇中でのペガサスという呼称は、小説版『機動戦士ガンダム』などに登場するペガサス級の一番艦のものになっています。)を奪取していなければ、彼らの人生はまた違ったものになっていたはず。
今回は現時点までの『ジークアクス』に登場し、シャアによって運命を狂わされたと思われる人をピックアップしていきたいと思います。
今回の人物は、「マリガン」です。『機動戦士ガンダム』において、ドレンと並んでシャアの副官として知られる人物ではありますが、一定以上の信頼を得られていたドレンと比べると、時折シャアの意に反する行動をする人物として描かれていました。
本稿では、あえてそんなマリガンへ焦点を当て、『機動戦士ガンダム』と『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』とでシャアとの関係性の変化が戦局にどのような影響をもたらせたのか見ていきます。
本記事は、考察記事です。また、ネタバレを含みます。
未視聴の方はご注意ください。
シャアとぶつかることが多かった生真面目な副官
『機動戦士ガンダム』におけるシャアはガルマ・ザビの戦死(シャアによる謀殺)後、その責任を問われ左遷されます。その後、キシリア・ザビの庇護を受けるのですが、その際に副官となったのがマリガンです。
第26話「復活のシャア」において再登場したシャアが、シーランスで偵察に出ようとするのを止めようとするなど、マリガンは当初からシャアとは意見が食い違う描写が多かった印象があります。
シャアの命令無視と、デミトリーの戦死によるシャアへの負債
劇中での主な活躍は、第32話「強行突破作戦」における一幕です。このエピソードでは、モビルアーマー・ビグロのパイロットを務めたトクワンの仇を討つべく出撃を志願するデミトリーに対し、マリガンはシャアの命令を無視してザクレロでの出撃を許可してしまいます。
しかし、慕っていたトクワンの仇を取りたいというデミトリーの意思を汲み取った判断ではありましたが、ザクレロはアムロ・レイの操るガンダムによってあっけなく撃破されてしまいます。この結果、シャアに対して大きな借りを作ってしまいました。
軍人にとって上官の命令違反は重大な失態であり、マリガンのこの行動は、当時のシャアとマリガンの間に円滑な関係が築けていなかった可能性を示唆しています。たとえデミトリーの勢いに押されたとしても、出撃前にその状況をシャアに報告する機会はあったはずです。
シャアへの進言聞き入れられず
マリガンに対するシャアの扱いはかつての副官であるドレンとかなり異なっている印象があり、シャアの臨機応変な対応に振り回されているように見えるところも。
さらに、第37話「テキサスの攻防」では、マリガンはゲルググで出撃するシャアに対し、ノーマルスーツ(ガンダム世界における宇宙服)の着用を進言しますが、これもあっさりと拒否されてしまいます。
後にララァ・スンにも同じようにノーマルスーツを着て出撃するようお願いされた際には、シャアはモビルスーツに乗っても必ず帰ってくる主義を曲げて「ララァがそう言うのならな」と答えるのです。
この時には着なかったものの、後にジオングに乗ってからは着ているあたり、シャアの中ではマリガンよりララァの存在の方が大きかったのではないでしょうか。
ただし、シャアの命令を聞かなかった部下は他にも登場しており、例えば第40話「エルメスのララァ」においてララァ・スンの駆るエルメスの護衛を命じられたはずが、逆にエルメスを前に押し出し自分たちは後方に下がってしまったリック・ドムのパイロット、バタシャムとその部下でしょうか。
その責を問われた際に「ひょっとしたら、エルメスはシャア大佐のゲルググ以上でありましょう」と言われてしまう場面があり、加えて地球方面軍司令だったガルマを死なせ左遷されたという立場から、この時のシャアは部下たちを上手く統率できない状況にあった可能性が捨てきれません。
結局このふたりがエルメスの後衛に回ることを許可することになっているあたり、もしかしたら物語前半の頃のようなカリスマが、『機動戦士ガンダム』では既にシャアから損なわれていたの......かも!?
明確な活躍なく戦死
そしてマリガンの最期は、明確な描写がないまま母艦であるザンジバルを撃沈され運命を共に……というものでした。劇場版ではその描写もなく戦死しているようで、シャアと上手に関係を構築できていればその運命もまた違ったのではないかと思わずにはいられません。
『機動戦士ガンダム』におけるマリガンは、シャアという特異な上司に翻弄されるどこか悲劇的な人物像を漂わせています。
『機動戦士ガンダム』のマリガン
シャアの命令無視
上官であるシャアの命令に背き、トクワンの仇討ちに逸るデミトリーに対し、無謀なザクレロでの出撃を許可
デミトリーの戦死によるシャアへの負債
自身の判断ミスによりデミトリーを戦死させ、結果としてシャアに大きな借りを作ってしまった
シャアへの進言聞き入れられず
ゲルググで出撃するシャアにノーマルスーツの着用を進言するも聞き入れられず
明確な活躍なく戦死
劇中で特筆すべき功績を残すことなく、最終的に母艦ザンジバルと共に宇宙の塵と消えてしまった
一方で、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のマリガンは別人のような活躍をします。
シャアのためにガンダムを赤くプロデュース?
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』でマリガンは、第2話「白いガンダム」において、キシリア・ザビ配下の士官として登場します。
声優を担当した斉藤壮馬さんは、『ガンダムビルドダイバーズ Re:RISE』でシドー・マサキ、劇場版の『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』でレーン・エイムを演じており、シリーズ作品で重要キャラクターを二度も演じられている方です。
そんな斉藤さんのお芝居も相まってか、『ファーストガンダム』におけるマリガンに負けず劣らずの存在感を放っています。キシリアがシャアとの連絡役に選んだあたり、彼女の信頼もそれなり以上に得られていたことでしょう。
ガンダム量産計画に関与? 赤いガンダムのプロデュース?
その最たる例が、シャアが提唱したガンダムの量産計画が、リバースエンジニアリングによって承認された事実を報告する場面です。これは、連邦軍の象徴とも言えるガンダムの技術がジオン側に渡り、その技術を用いた量産機が生まれるという後の戦局を大きく左右するターニングポイントといえます。
さらに注目すべきは、キシリアの指示があったことを窺わせはするものの、『機動戦士ガンダム』ではシャアの意に反することが多かったマリガンが、シャアの意向を汲んでガンダムを赤く塗り直していることではないでしょうか。
シャアへの便宜供与?
『機動戦士ガンダム』では命令に反してデミトリーを出撃させ借りを作ってしまったり、シャアの主義を知ってか知らずかノーマルスーツを着るよう進言していたことを思うと、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』ではマリガンの中でのシャアの評価が高く感じられる部分があります。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』ではガルマを死なせておらず、ガンダムの奪取など破竹の活躍を見せていることから、ジオン軍内でのシャアの評価が安定しており、この時点でもカリスマを維持できていたのやもしれません。
それこそ『機動戦士ガンダム』ではララァのエルメスはシャアのゲルググ以上だと言われてしまいましたが、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』ではマリガンから「もし、大佐が特別な人でおありなら」と言われるくらいにシャアは特別視されている印象があります。
実際、『機動戦士ガンダム』でのシャア視点で見たマリガンはあまり重要視していない部下のひとりですが、マリガン視点で見た場合は左遷されてきたにも関わらず勝手な判断で行動する困った上司に見えなくもない。
たとえ聞き入れられずとも、例えばキシリアのようにシャアよりさらに上の立場の人間の意向と反する場合は、意見しなくてはなりませんよね。
実際、このあたりのすれ違いの要因になりうるアレコレが発生しなかったことで、シャア自身がマリガンに対し「キシリア閣下配下の貴様がなぜ私に便宜を図る?」と疑問を投げかけるくらいにはマリガンはシャアの意を汲んでいるように見えます。これは、『機動戦士ガンダム』でのマリガンではなかったことではないでしょうか。
もちろん配下である以上はマリガンの後ろにいるキシリア・ザビの意向が強くあることは窺えますが、戦争終結をシャア個人に期待するくらいには『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のマリガンはシャアに個人的な期待をしている部分がありそうです。
そして、マリガンからのガンダムとソドンをグラナダへ運んでほしいとの依頼を受けたシャアは、素直にそのままグラナダへ飛んでおり、フラナガン博士(※ニュータイプ研究を行うフラナガン機関の長であり、同機関はキシリアが主導したという話があります)と邂逅。
その後、赤いガンダムへサイコミュが搭載される流れとなっているので、シャアとマリガンの関係値が『機動戦士ガンダム』とはまた違ったものになっていることで、ジオンの勝利に結びついた可能性が無きにしも非ず。
多数の重要な戦果を挙げてシャアの評価がジオン軍内でもかなり高いものになっていたこと、そしてそんなシャアの評価を受けてマリガンもその行いを諫めるような進言をする必要がなく信頼し、戦争終結の鍵になることを期待できる状況だったこと。
この2点から、マリガンは本来の優秀さを発揮して、曲者ではあるものの有能な上司であるシャアという男を上手くサポートすることができたのではないでしょうか。
キシリアを救いジオンの英雄となったシャアに心を奪われた可能性
実際シャアが素直にマリガンの依頼を達成すべくグラナダへ向かったことでフラナガン博士との邂逅が実現し、赤いガンダムにサイコミュが搭載されたとするならば、シャアとマリガンの関係値が『機動戦士ガンダム』よりも良かったことで、後にシャアによってグラナダへのソロモン落としが阻止された……とも見ることができます。
ザビ家への復讐を考えていたであろうシャア本人としたら、ゼクノヴァでソロモン落としを阻止しキシリアを助け自分が消えてしまうという状況は大変不本意ではありそうですが、ジオンの勝利を決定づけた作戦を自分の身を犠牲にすることで成功に導いたと考えられた場合もありそうです。
『機動戦士ガンダム』ではあまり目立った活躍のなかったマリガンですが、シャアの正体がザビ家が暗殺したジオン・ダイクンの遺児キャスバルというザビ家への復讐を考えてもおかしくない人物だと知ってなお、優秀だからと手元に置く柔軟な判断ができるキシリアがそもそも自身の配下とするはずがないのです。
実際キシリアに関しては、ニュータイプの存在に一定以上理解を示してフラナガン機関を作っていたり、優秀な人材を集めるために様々な手を使っていたみたいな話が出てきます。
そんなキシリアが重用したと考えられるマリガンが、戦争終結を期待した『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のシャアの活躍は『-Beginning-』をチェックです。TVシリーズ第2話では見られないシーンがいくつか存在しています。
シャリア・ブル以外にもジオンの英雄となったシャアに心を囚われたキャラクターとして、マリガンが再登場……なんてことも今後はあるかもしれません。『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』では1年戦争後、赤い彗星のシャアという存在が一体どんな扱いになっているのか、それを私たち視聴者に見せてくれる重要なキャラクターになることに期待したいですね。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のマリガン
・ガンダム量産計画に関与?
主導はキシリアの可能性が高いものの、マリガンはその中間管理者的業務と考えられる。シャアの提案したリバースエンジニアリングによるガンダムの量産計画が承認された事実を報告し、ジオン軍の戦力増強に貢献した。
・赤いガンダムのプロデュース?
キシリアの意向はあるものの、シャアのためにガンダムを赤く塗り直し、専用機として用意することで士気高揚と象徴的な存在としての確立に貢献した。
・シャアへの便宜供与?
キシリア配下でありながらシャアに便宜を図る行動は、シャアの能力に個人として期待していた可能性がある。また、シャアをグラナダに向かわせたことでフラナガン博士との邂逅を実現し、赤いガンダムにサイコミュが搭載されるといったその後の活躍も間接的に支援している。
・キシリアを救いジオンの英雄となったシャアに心を奪われた可能性
明示的な描写こそありませんが、自身の直接の上司であるキシリアをゼクノヴァで救ったシャアを、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』での一年戦争後は英雄視している可能性も。もし再登場するならば、シャアをどう見ていたのか明示されるのではないか。
ガンダムの鹵獲が、マリガンの人生を大きく変えた!
『機動戦士ガンダム』におけるマリガンの立場や言動を振り返ると、彼は周囲の意向に翻弄され、自身の意見は顧みられない、どこか悲哀を漂わせる人物として描かれていました。
それだけに、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』における彼の変貌ぶりは、『機動戦士ガンダム』を知ってから見ると、「あの、失敗を平謝りし、助言を邪険にされていた、あのマリガンが!」という驚きと、人の運命や巡り合わせの不思議を強く感じさせる、非常に興味深いワンシーンと言えるでしょう。
彼の行動原理や内面に迫ることは、本作をより深く理解するための重要な鍵となるのではないでしょうか。
[文/胃の上心臓]
本記事は考察を目的とした内容です。
作品の行間を読み解き、あるいは読者の皆様が抱く空白を補うひとつの視点として、お読みください。