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日本バレーボール協会の川合俊一会長とパリ・オリンピックの振り返り

TBSラジオ

ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。

川合俊一さん
日本バレーボール協会会長。1963年、新潟県生まれ。中学からバレーボールを始め、大学在学中の1984年にロサンゼルオリンピックで日本代表として出場。1988年のソウルオリンピックでもチームを五輪出場に導き、1989年からは主将として日本バレーボール界を牽引しました。1990年からはビーチバレーボールの普及にも力を入れ、2022年からは日本バレーボール協会の会長を務めています

JK:相変わらず大きいわね!

川合:歳をとると身長縮むって言いますけど、1㎝伸びてる(^^) 現役の時は194㎝だったんですけど、こないだ測ったら195.5ぐらいあった。よく寝てるからですかねぇ? 背が伸びてるんならいいけど、胴が伸びてるんだったらいやだなぁ~(笑)

出水:今日はジュンコさんと川合さんのマイクの高さにかなり差があります(^^)

JK:本当だ! でもあの当時バレーブームって川合さんの時から始まったと思う。やっぱり松平さんの功績が大きいですね。あの人は仕掛け人だった。

川合:80年代ですね。その前も人気あったんですけど、あの頃は異様な人気って感じでした。あの頃のスポーツ選手はプロ以外バラエティ番組に出ちゃいけないから、試合とインタビューしかない。なのに人気があるっていう。

JK:松平さんのふとした思い付きで、タクシーに乗ってるときに「バレーボール選手のユニフォーム作ってくれる?」って。そこから始まったんです。じっくり考えて「お願いします」じゃないの!

出水:ジュンコさんは92年のバルセロナ・オリンピックの時に日本代表のユニフォームをデザインしたんですよね。

JK:きっかけは新日鉄。中垣内さんとかいい選手がいっぱいいて応援したいってことになって、それでユニフォーム作ったんです。いい時代ですよ~! バルセロナの時は判定勝ちで5位になったのかな? 松平さんが文句言いに行って。

川合:アメリカに逆転勝ちしましたね。不思議なことが起きて、4セット目、あと1点勝ったら日本が勝ち、っていう時に向こうが文句ばっかり言って、イエローカード2枚目が出たんですよ。そうすると自動的にレッドカードで1点入ってその試合は終わりのはずなんです。ところが審判が前にイエローカードを出したのを忘れてて、試合を継続して逆転負けしたんです。それで5セット目で負けて。終わってから松平さんが「2枚目だからあそこで試合終了だったはずだ」と。次の日入れ替わって日本が勝ちになったんです。

JK:私あの時いましたから!

川合:アメリカのサミュエルソンっていうスキンヘッドの選手がイエローもらったんですよね。その次の試合から、アメリカ選手は全員丸坊主。「お前のせいじゃない」って。あんな金髪のめっちゃカッコいい選手が、全員丸坊主!

JK:今回も盛り上がりましたね! あのたった1点・・・

川合:でも、あと1点で世界に勝てるぐらいの実力がついてきた。あの1点の取り方ですね。僕は日本で見てたんですよ、イタリア戦。第3セット24対21で、あと1点取ったら勝ちっていう時に、会場がものすごく勝った雰囲気になってたんです。あの瞬間「やばい!」と思ったんです。なんでかっていうと、昔イタリアに24対17から逆転されたことがあるんです。7点連続取られて。

出水:!!

川合:うわっ、イタリアに3点差は怖いな、と思って。なおかつ全員勝った気になってて、前むいちゃうんです。わかります? 全員打ちに行く。違う違う、うちらは守備でしょ。守備をちゃんとしてからいかないと! すごくブロックついてるのに「決めてやろう!」と思うから、いつもだとポイッと軽くパスで当てて、リバウンドを取って、態勢を整えてからやるんだけど、みんなガンガン打ちにいっちゃって。でもそれはしょうがない。オリンピックあるある。

出水:あるあるですか・・・全員、自ら試合を決めたいですもんね。

川合:1点差ぐらいだったらよかったんですけど・・・それで3セット目逆転されます、4セット目はもう勝てない。だって1回勝ったと思ってるから。

JK:精神的なものがすごいですね。

川合:そうですね、身体は異常ないんですけど、気持ち的には勝ったと思ったところからもう1度勝たなきゃいけないから・・・怖いですね。「会場のみなさん、勝ったつもりにならないでください!」って。伝わっちゃうんですよ。僕は昔富士フィルムという強いチームにいて、いつも3-0で勝つんですよ。ファンの方も多くて、1、2セット目はすごい応援なんですが、3セット目は如実に応援が減るんです。いっぱい試合見たいから、「このセット取られないかな」って。3-1ぐらいで勝つのが面白いんです。それが伝わるんですよね! そうすると勝つのが難しい。

JK:応援ってものすごく影響するんですね!!

出水:今回イタリア戦はフルセットで、そのうち2セットは2点差という惜しい結果でした・・・。

川合:勝てば一番楽しい試合ですけど、負けたら・・・それでもよかった。みなさん「すごく面白かった!」って言うんですよ。

JK:すごくいい試合です。間違いなくいい試合!

川合:ブロックの本数でいうと、3-0で負けてる試合なんです。5セットでイタリアが15本、日本は2本ですよ。そんなんだったら、ふつう絶対3-0で負けてる試合なんです。だけど守備がいい。レシーブがいい! だから世界中が日本を応援するんですよ! フィリピンなんかいったらホームですよ! フィリピン人全員が「ニッポン・チャ・チャ・チャ!」って。

出水:パリ・オリンピックで監督をつとめていたフィリップ・ブランさんですが、川合さんは現役時代に対戦したことがあるんですよね?

川合:公式戦で2試合やって、1勝1敗かな? いい選手で、結構アツい選手だったんですよ。試合中に言い合いしたこともあるし(笑) それで覚えてて、監督になった日本でメシでも行こうかと誘って、「何食べたい?」って聞くとやっぱりフレンチ(笑)。やっぱりワインの選び方はすごい! 全部ラベルの裏を見て、ブドウの種類だとか●%だとか・・・1本頼むまでにすごい時間かかる(^^;)さすがフランス人!

JK:食べるものとスポーツ、同じレベルですね。

川合:こないだも石川祐希と1時間ぐらい2人で話した時に、「ブラン監督のいいところ教えて」って訊いたら、「一番若い選手の話まできちんと聞く」って。僕なんか20歳の時に代表に入ったんですけど、監督コーチになにか言うと「うるせえ黙ってろ」って言われましたから。全部上の人が決めて、中間から下は聴いてもらえない。そういう時代だった。ブラン監督は下の意見を聞いてくれて、風通しがいいと言ってましたね。

JK:ああ、そうですか!

川合:僕らなんか、すごく理不尽な練習とかあるでしょ? 全然遠くにボール投げられて、フライングレシーブして取りに行って、振り返ったらボールが反対側に落ちてて、それをまた取りに行かなきゃいけない・・・1回落ちたボールをなんで取りにいかなきゃいけないんだ!みたいな。代表になったばかりの時に、「コーチすみません、何の練習ですか?」って訊いたら、「うるせえ、黙ってやってりゃいいんだ!」って(^^;)

出水:石川選手は他に今回のオリンピックについて何か言ってましたか?

川合:そうですね、キャプテンだったからすごく反省していて。1試合目から調子が上がってなかったんですよ。オリンピックの前にネーションズリーグがあって、女子はそこで出場権を取らなきゃいけないから、そこがピークだった。だから女子はオリンピックで少しピークが下がってしまったのはしょうがない。男子は前年に出場権を取ってるから、ネーションズリーグはそんなに頑張らなくてよかったんですが、「メダルを獲りにいくぞ!」ってなって、初めて銀メダルを獲ったんです。

出水:ですよね、盛り上がりましたよね!!

川合:でもピークって1回上がったら絶対下がりますから。1回下がったら、また上げるのに3か月ぐらいはかかるんですよ。でも選手は勝ちたいですよね。しょうがない。でもネーションズリーグのパフォーマンスで行ってたら、オリンピックも勝てたと思います。2か月に2回もピークは持ってこれない。

JK:次のLAに向けてのいい経験ですね。

川合:石川君はよく考える選手なんで、他にもいろんな話をして・・・あとは感謝されました。南米とか北米とか、遠征するときに僕らはずっとエコノミークラスだったんです。ブラジルなんか27時間ぐらいかかって、着いたらもう足が動かない! それで2日後に試合があったりする。

JK:皆さん背も高くて、足も長いから、エコノミーはかわいそう!

川合:それで行きはビジネスに変えたんです。帰りは申し訳ないけど(^^;)でもそれで海外でもすごくいい試合ができた、と感謝されました。

JK:じゃあ今後もそうしないと!

川合:でもお金かかるんですよ(^^;)お金集めしないと。どこかお金余ってる企業ないですかね?(笑) ユニフォームにつけていい企業は3か所って決まってるんですよ。それだけだとカバーしきれない。だから、名刺に選手3人ぐらいの顔写真を載せるとか、会社のホームページに「弊社は日本代表のビジネスクラスのお金を払っています」って載せるとかね(笑)

JK:それでもいいんじゃない!

川合:名刺にそんなのあったらインパクトあるでしょ? だから儲かってるけど有名じゃない企業さんとかついてくれたら嬉しいなって。お金もらったからって僕らの給料があがるわけじゃない。全部強化にもっていくんです! 僕らの給料には一切反映させませんので、強化にお金をいただけませんでしょうか、って頭下げに回っていくことになりますね。

JK:会長としてはエラい役目ですね。

川合:あとは謝罪、ご挨拶。そんなんばっかりですよ。育成採用にどれだけ資金を出すかとか・・・今年と去年すごいお金がかかり過ぎちゃったので・・・

JK:今日は愚痴を言いに来たみたいね(笑)

出水:でもそれこそ、川合さんがオリンピック中に帰国したから結果が変わった、とおっしゃる方もいるじゃないですか!

川合:そんな変な伝説作るからいけないんですよ! 「川合俊一」ってのぼりを立てると勝つ、っていう変なジンクスもあるんですよ。

JK:オリンピックでもやればよかったじゃない?

川合:オリンピック会場では怒られるんですって! たしかに男子は僕が見た試合しか勝ってなくて、でもそれは選手の力だから、僕が見ようが見まいが関係ないんですけど、中にはいるんですよ、「帰って来るな」って言う人が! 僕も他にもいっぱいあるんですよ、小学生バレー大会とかビーチバレー全国大会の挨拶とかあるから、帰って来なきゃいけない(笑)

(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)

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