約100万人の観客が熱狂する!「第66回東京高円寺阿波おどり」が8月23・24日に開催
東京都杉並区の高円寺駅南北商店街、高南通りでは、「第66回東京高円寺阿波おどり」が2025年8月23日(土)・24日(日)に開催。本場・徳島に次ぐ規模を誇り、約1万人の踊り手と約100万人の観客が盛り上がる東京の夏を代表する風物詩。その熱気をぜひ現地で体感しよう。
阿佐ケ谷の七夕祭りに対抗して始まった
徳島を発祥とする阿波踊りと高円寺の出合いは1950年代までさかのぼる。かつて山の手を代表する繁華街のひとつだった高円寺は戦争で焼け野原になってしまい、街の人々はバラックのような店舗を開いて生業を立てていた。ゼロからの出発であり、街の発展などに心を配る余裕はなかった。そんな最中の1954年、お隣の阿佐ケ谷で七夕祭りが始まり、多くの人々が娯楽を求めて阿佐ケ谷に集まった。高円寺でも「自分たちの街にふさわしい行事を」と、商店街のにぎわいを求めて青年部が立ち上がった。
「パル商店街で何ができるかを考えましたが、盆踊りも神輿も却下。街を練り歩ける阿波踊りというのが四国にあるというので、“踊る阿呆に見る阿呆……”の“阿呆”に対抗して、1957年に『高円寺ばか踊り』を氷川神社例祭に合わせて開催したのが始まりです」と教えてくれたのは東京高円寺阿波おどり振興協会の冨澤武幸さん。とはいえ、最初は本場とはほど遠い奇妙奇天烈な踊りだったという。
その後、「いつまでも自分たちを馬鹿というのはどうだろう」とメンバーたちが阿波踊りの師匠を探し始めた。そして徳島の新聞社を通して徳島県人会で結成された「木場連」と出会い、阿波踊りの本格的な指導を受けるようになった。みるみるうちに技術が向上し、1963年には正式に「高円寺阿波おどり」と名乗るようになった。現在では、阿波踊りの技で高みを目指し地域を良くしようとする、高円寺阿波おどり連協会に31連が所属している。
演舞場によって雰囲気が異なるのも魅力
当日は本場徳島からも2連やってきて、のべ160の連、約1万人の踊り子たちが参加する。高円寺一帯の8つの演舞場を舞台に、軽快なお囃子にのせて豪快な男踊りとあでやかな女踊りによる流し踊りが繰り広げられる。高南通りのような広い演舞場では連ごとに趣向を凝らした大規模な演出の妙が見られ、商店街の中を通るような狭い演舞場では踊り子と観客の距離が近いため楽器の振動や顔の表情までも楽しめる。
また、日中は「座・高円寺」や「セシオン杉並」といった快適な環境で舞台踊りを堪能できる。「音響装置があるので三味線や笛の音もよく聞こえます。音や照明にもこだわっていて、“阿波踊りってこんなこともできるの?”と驚くぐらい、舞台芸術に近いものをお見せできると思います」と冨澤さんは太鼓判を押す。
踊り子と地域が一体になって行事をつくる
そんな活気ある高円寺阿波おどりだが、コロナ禍で存続が危ぶまれた時期もあったという。なぜ阿波踊りを踊るのかと勉強会を開いたり、続けるためにはどうしたらいいのかを話し合ったりして、それまでは「発信する」「広げる」ということに注力していたが、内なる改革を進めた。
「パンフレット作りや協賛集め、看板の取り付け、ゴザやブルーシートの設置、片付け、一斉清掃など、踊り子たちのマンパワーを活用しながら、みんなで一緒に行事をつくり上げているという意識をもつようになりました」(冨澤さん)
踊り子も踊りだけでなく地域の人々と一緒になって一から行事に参加する、そんな志の高さに高円寺阿波おどりが愛される秘訣があるのではないだろうか。「高円寺阿波おどりを支えつくってきた街を楽しんでほしい。個性的な店もいっぱいあるので散策しながら、阿波踊りを見て元気になってもらえれば」と冨澤さん。阿波踊り一色に染まる高円寺の街で、踊り子たちの熱気を肌で感じながら夏の夜を楽しもう。
開催概要
「第66回東京高円寺阿波おどり」
開催期間:2025年8月23日(土)・24日(日)
開催時間:17:00~20:00
会場:高円寺駅南北商店街、高南通り(東京都杉並区)
アクセス:JR中央線高円寺駅、地下鉄丸ノ内線新高円寺駅すぐ
【問い合わせ先】
東京高円寺阿波おどり振興協会☎03-3312-2728
URL:https://www.koenji-awaodori.com/
取材・文=香取麻衣子 ※写真は主催者提供
香取麻衣子
ライター
1980年生まれ。『散歩の達人』編集部でのアルバイト経験を経て、2010年からライターとしての活動を開始。あだ名はかとりーぬ。『散歩の達人』では祭り&イベントのページを長らく担当。青春18きっぷ旅や山歩きなどのんびりと気ままにお出かけするのが好き。あとビールや美術館めぐりも大好物。