衆院選の各政党の公約で見比べる「人手不足」への改善案
10月22日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、人手不足の深刻化に対する衆院選の各党の改善案について意見を交わした。
年収の壁は引き上げればいいだけじゃないですか!
衆院選は企業活動が制約を受けるレベルになった人手不足の改善策を競う場となる。与野党はパート従業員らが働く時間を抑制する「年収の壁」と呼ばれる問題の改善などを掲げる。
足元の人手不足は平成バブル期以来の水準といわれる。指標となるのは日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)だ。雇用が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」を引いた9月の雇用人員判断DIは大企業でマイナス28と1991年12月以来、約33年ぶりの低水準を2四半期連続で記録した。
バブル景気による人手不足だった当時と異なり、今回は働く世代の人口減が主因であるだけに問題はより深刻だ。東京商工リサーチが4月に実施した人手不足の調査によると正社員が足りないと回答した企業は69.3%に上った。
(寺島アナ)「人手不足が深刻化して久しいわけですが、衆院選の争点として労働市場改革、これは田中さん、どう捉えられているんでしょうね?」
(田中氏)「まず、この記事の労働市場に対する認識が間違っていると思います。“働く世代の人口減が人手不足の主因”と書いてますけど、これは全くインチキだと思います。人手不足は二つの要因で起きていると思います」
田中氏が人手不足の要因二つを解説。
(田中氏)「一つは、“景気のそこそこの安定化があるから”です。名目経済成長率も実質経済成長率も今まではそこそこ良かった。今年の夏以降は不安定化してますけど、労働市場っていうのは景気の一番後に悪くなったり良くなったりしますから、そういった意味で人手不足は、経済の安定化と共に2013年以降から続いています。もう一つは、最近顕著になっている“働き方改革による労働時間短縮”です。労働時間を短縮するってことは、仮に今まで10時間働いていた人が8時間働かなくなったとして2時間分の労働が不足するわけですよ。そういったことが人手不足の背景にあると思います。元々、人口があっても不況で人手が余るのが失われた20年の特徴でしたよね?それを完全に忘れて、景気の問題や働く時間の見直しをほとんど無視しているのが、日本のマスコミの異常な姿勢ですね」
労働力を増やすための政策として各党の公約にあるのは「年収の壁」の是正。従業員数51人以上の企業で年収106万円以上のパート労働者が配偶者の扶養から外れ、社会保険料の負担が発生して手取りが減るのを避けるために労働時間を抑えてしまう「106万の壁」などがある。
年収130万円以上になると企業規模に関係なく同様の問題が発生するため「130万の壁」という言葉もある。
厚労省の試算によると、106万円の壁によって労働時間を抑えるパート労働者は最大で約60万人いる。特に年間の収入がみえてくる12月になると、106万円や130万円に達しないようシフトに入るのを避ける人が増える。繁忙期に人手不足が深刻さを増す一因となっている。
(寺島アナ)「年収の壁の是正についてどうでしょう?」
(田中氏)「こういうのも官僚の受け売りをそのままマスコミが流しているんですよね。“年収の壁”って法律あるいは官僚の都合で作ったものでしょう?それなら年収の壁を引き上げればいいだけじゃないですか!」
(寺島アナ)「そうなんですよ!」
(田中氏) 「それで終わりですよ!106万円に壁があるなら上げればいいでしょ?いま経済がインフレ気味じゃないですか?っていうことは名目額が拡大していく経済に移行しつつあるわけでしょう?いつまでもデフレみたいに同じ数字にしておくのがおかしいんですよ。その他の130万円の壁も全部引き上げればいいだけじゃないですか。なんでそんなことができないのか?というと、“法律をいじらないといけないから”という官僚側の発想が出てくるわけです。それを打ち破るのが政治家なのに、政治家自身がそれに囚われている。今回の選挙でも、“この年収の壁を変えることができない”という前提でもっともらしく言っている政党もありますけど、そうじゃない政党もありますから、その辺も評価の基準にしたらどうでしょうかね」
〈出典〉
データでみる衆院選公約 人手不足、労働市場改革は及び腰 | 日本経済新聞 (https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA155CA0V11C24A0000000/)