Yahoo! JAPAN

【80年代春うたセレクション】アイドルポップスから季節を彩る化粧品CMソングまで11選

Re:minder

1981年04月01日 田原俊彦のシングル「ブギ浮ぎ I LOVE YOU」発売日

歌謡ポップスチャンネル「Re:minder SONG FILE」vol.9〜 80年代春うたセレクション

番組の幕開けは石野真子「春ラ!ラ!ラ!」


毎回趣向を凝らしたテーマと選曲でお楽しみいただいている歌謡ポップスチャンネルの『Re:minder SONG FILE』。3月は “80年代春うたセレクション” と題し、卒業ソングを除く、選り抜きの春うた11曲をお届けする。

今回のテーマを聞いたとき、“1曲目はこれしかない!” とすぐに浮かんだのが石野真子の「春ラ!ラ!ラ!」(1980年)である。というのも、この曲は1980年1月1日の発売。80年代春うた特集の幕開けを飾るにふさわしいと思えたからだ。担当ディレクターはソルティー・シュガー「走れコウタロー」(1970年)で競馬の実況を早口で披露していた髙橋隆。前任者から石野の楽曲制作を引き継いだばかりの彼は新春の初荷シングルであることを念頭に、遊び心とインパクトのある作品を構想する。

当時の石野真子はデビュー3年目の18歳。アイドルとして抜群の人気を誇りながら、ニューミュージックが音楽シーンを席巻していたため、レコードセールスは伸び悩んでいた。そのタイミングでディレクターに就任した髙橋は作家を一新。作詞にはCMソングの名手・伊藤アキラを、作曲には森田公一を起用し、編曲の竜崎孝路にはジングルのような耳に残るフレーズを多用するように依頼する。

狙いはズバリ的中し、「春ラ!ラ!ラ!」は石野最大のヒットを記録。念願だった『ザ・ベストテン』(TBS系)にも初出演を果たす。髙橋いわく、歌い出しの「♪春という字は 三人の日と書きます」はアン真理子「悲しみは駈け足でやってくる」(1969年)の「♪明日という字は 明るい日と書くのね」を意識したそうだが、三人とは “あなた” と “私” と “あなたの前に好きだった彼” のこと。きっと話が合うだろうから「♪三人そろって 春ラ!ラ!ラ!」と歌う、なかなか能天気な仕上がりとなった。河合奈保子「けんかをやめて」(1982年)に先立つトンデモソングともいえるが、違和感なく成立したのは春という季節と、石野の屈託ないキャラクターによるものだろう。

―― ということで、番組序盤は「春ラ!ラ!ラ!」同様、心浮き立つアイドルソングをセレクトした。

アイドル春うたは、田原俊彦、芳本美代子、酒井法子と続く!


2曲目は今年、歌手デビュー45周年を迎える田原俊彦の「ブギ浮ぎ I LOVE YOU」(1981年)。4作目のシングルで、1曲のなかに多彩なサウンドが詰め込まれた春うただ。テレビ出演時は三原色のド派手なツナギにローラースケート型のポシェットを着用。奇抜な衣装も、歌のなかで「♪HA-HA-HA-HA-HA」と笑ったあと渋い表情で「♪馬鹿だネ」と締めるパフォーマンスも、“カッコ可愛い” トシちゃんだからサマになった。

『ザ・ベストテン』ではバックダンサーのジャPAニーズから水をかけられるたびにツナギの色が変わる演出が注目されたが、7月に発売される Blu-ray BOX『田原俊彦 KING OF IDOL HISTORY in TBS Vol.1』にはその回(1981年6月18日)の映像も収録される模様。笑ったあとにくしゃみをする、その日だけのお茶目な歌唱にも注目だが、今回の『Re:minder SONG FILE』では春爛漫のファンキーな世界観を味わっていただきたい。

続いては芳本美代子のデビュー曲「白いバスケット・シューズ」(1985年)。早春の海辺を舞台に、少女の恋心を歌ったオールディーズ調のアイドルポップスだ。“渚色” の表現や、奥手な男子と積極的な女子の対比は松本隆ワールド全開で、松田聖子「Rock’n Rouge」(1984年)の高校生版ともいえる。ブリッジにあたる「♪心のハープをかきならして」が1番のあとに登場する曲構成は当時としてはユニークだった。2020年に音楽活動を再開したミッチョン。デビュー40周年の今年はこの歌を聴ける機会がさらに増えるに違いない。

そして4曲目は酒井法子の「GUANBARE」(1988年)。“おきゃんなレディ” のキャッチフレーズで1987年にレコードデビューした “のりピー” は元気さと健気さを併せ持ったキャラクターで、初期の制作方針は “教室の隅っこにいて男の子を励ますタイプの女の子像” だった。失恋した自分にエールを送る本作は “桜並木” など春を感じさせるワードとシンセ主体のキラキラしたサウンドがあいまって、心の雪解けを思わせる春うたといえるだろう。

ここまでは王道のアイドルソングだが、番組中盤ではアイドルから次のステージに移行した20代の女性歌手による春うたをセレクトした。

アイドルから次のステージに移行した河合奈保子、三田寛子


まずは、河合奈保子の「ジェラス・トレイン」(1985年)。作詞:売野雅勇と作曲:筒美京平のコンビによる、ビートの効いたアダルト路線の決定版ともいえる20作目のシングルだ。ほかの女性を助手席に乗せ、4月のハイウェイを西へ走る彼を列車で追うというシチュエーションは米国のロードムービーを観るようだが、嫉妬に身を焦がすヒロインの心情を咆哮とウイスパーを織り交ぜて聴かせる緩急自在のボーカルを堪能したい。

続く「少年たちのように」(1986年)は、20歳を迎えた三田寛子に中島みゆきが書き下ろした12作目のシングル。大人の女性への成長を春の芽ばえに重ね合わせ、想いを寄せる相手の近くにいるために少年たちのようになりたいと願う少女の内面をワルツのリズムに乗せて歌った切ないナンバーだ。本人出演のNEC製ワープロのCMに起用されたものの大きなヒットにならなかった惜しまれる傑作なので、これを機に多くの方に知っていただけたら嬉しい。

大人の春うた小柳ルミ子、和テイストなら岩崎宏美


大人の春うたとしては小柳ルミ子「来夢来人」(1980年)も外せない。デビュー10周年の節目に発売された30作目のシングルで、小柳は当時27歳。萩田光雄が手がけた煌びやかなサウンドに岡田冨美子の手による艶めかしい歌詞が乗って、桜吹雪が見えるような和風情緒溢れる1曲となった。作曲の筒美京平は小柳プロジェクト初参加だったが、細かい譜割りで起伏の激しいメロディを提供。ブリッジが2回登場する定型破りの構成は同時期に発売された西城秀樹「悲しき友情」や岩崎宏美「スローな愛がいいわ」にも共通する、この時期の筒美作品の特徴といえる。

しばらくヒットから遠ざかっていた小柳はこの曲で『ザ・ベストテン』のスポットライトコーナーに登場。年末の『第31回NHK紅白歌合戦』では初めて男性ダンサーを従え、衣装の早替えを交えたダンスも披露する。80年代の紅白は彼女のセクシーなパフォーマンスが見どころの1つとなったが、「来夢来人」はその幕開けを告げた楽曲なのである。

和テイストの春うたといえば、今年デビュー50周年を迎える岩崎宏美の「恋待草」(1981年)も忘れがたい。小林亜星の曲に「♪春は紫 恋は真紅(べに)」という文学的な歌詞を乗せたのは伊達歩(伊集院静のペンネーム)で、岩崎によると伊達は夏目漱石の『坊ちゃん』に出てくるマドンナをイメージしていたとか。曲想に合わせて和装で歌唱していた岩崎は東京音楽祭の国内大会で大賞を獲得し、世界大会に出場。スティーヴィー・ワンダーやペリー・コモら、世界の大物が居並ぶなかで本作を歌唱し、銀賞に輝いた。当時の彼女には珍しい、美しいファルセットも聴きどころだ。

ニューミュージック系の春うたからは、さだまさし & 資生堂 vs カネボウ


さて、番組終盤では “ニューミュージック” と呼ばれていたフォーク / ロック系の春うたを紹介する。

まずは、さだまさしの「驛舎」(1981年)。この表記で “えき” と読ませる、さだならではのタイトルだが、旧字体の “驛” をこの曲で知ったという御仁も多いのではないか。都会で傷つき、故郷に戻った女性を優しく見つめる男性目線の歌詞は美しい日本語で綴られており、一遍のドラマを観るような味わいがある。服部克久による爽やかで温もりのあるアレンジも秀逸で、締めの「♪改札口を抜けたならもう 故郷は春だから」のフレーズは聴く者にも春を感じさせてくれる。

そして、1980年代のニューミュージックはCMとのタイアップが積極的に行なわれていた時代。なかでも季節ごとに大プロモーションを展開していた化粧品のCMからは数多のヒットソングが誕生する。ちなみに春は口紅、夏はファンデーション、秋はアイメイク、冬は基礎化粧品を前面に打ち出すのが当時のお約束。そんな春のキャンペーンからは――

▶ 渡辺真知子「唇よ、熱く君を語れ」(1980年)
▶ 竹内まりや「不思議なピーチパイ」(1980年)
▶ 庄野真代「Hey Lady 優しくなれるかい」(1980年)
▶ 矢野顕子「春咲小紅」(1981年)
▶ EPO「う、ふ、ふ、ふ、」(1983年)
▶ 岡田有希子「くちびるNetwork」(1986年)
▶ 中山美穂「色・ホワイトブレンド」(1986年)
▶ 小泉今日子「水のルージュ」(1987年)
▶ 南野陽子「吐息でネット。」(1988年)

―― などがヒットチャートを賑わせた。ここからはその中核を形成していた資生堂とカネボウの春うたを1曲ずつお届けしたい。

資生堂からは忌野清志郎と坂本龍一がコラボした「い・け・な・いルージュマジック」(1982年)。人気モデルの津島要を起用した口紅(資生堂ルア リップカラークリエイター)のキャンペーンソングで、2人がキスをするミュージックビデオも評判となった。BLという言葉などなかった当時、大胆なパフォーマンスが受け入れられたのはひとえに2人の稀有な存在感あってこそ。ロンドンレコード初の邦楽シングルとなった本作は時代の扉を開けた春うたともいえる。

一方、カネボウ陣営からはアルフィーの「シンデレラは眠れない」(1985年)をセレクトした。同年、NHKの朝ドラ『澪つくし』のヒロインを演じて一気に全国区となる沢口靖子をモデルに起用した “バイオシンデレラ” キャンペーンのイメージソングで、リードボーカルは坂崎幸之助。ステージではシンセドラムを叩きながら歌っていたが、シンデレラ(=愛する人)を見守るジェントルなラブソングは坂崎のキャラクターにマッチしており、『ザ・ベストテン』でも第1位を獲得する。

以上、様々なタイプの11曲を厳選した。当時を知る方も、そうでない方も、80年代の春を感じて、ほかの春うたをディグるきっかけとなれば幸いである。

Information
Re:minder SONG FILE「80年代春うたセレクション」

ココロ躍る音楽メディア「Re:minder」がテーマを決めて珠玉のソングファイルをお届け。

▶︎ 放送局:歌謡ポップスチャンネル

▶︎ 放送日時:
2025年03月26日(水)深夜0:00〜深夜1:00
2025年04月03日(木)深夜0:00〜深夜1:00

▶︎ 今月のテーマ:80年代春うたセレクション♪ 春ラ!ラ!ラ! / 石野真子
♪ ブギ浮ぎ I LOVE YOU / 田原俊彦
♪ 白いバスケット・シューズ / 芳本美代子
♪ GUANBARE / 酒井法子
♪ ジェラス・トレイン / 河合奈保子
♪ 少年たちのように / 三田寛子
♪ 来夢来人 / 小柳ルミ子
♪ 恋待草 / 岩崎宏美
♪ 驛舎 / さだまさし
♪ い・け・な・いルージュマジック / 忌野清志郎+坂本龍一
♪ シンデレラは眠れない / ALFEE

▶︎ 番組公式ページ:Re:minder SONG FILE「80年代春うたセレクション」

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. [京都ポルタ]にオープンした[Cath Kidston(キャス キッドソン)]に編集部が行ってみた! 京都限定アイテムやイチオシのグッズを紹介

    Leaf KYOTO
  2. ミッキーデザインのTDS春きんちゃく ぶどうチャームもついて美味しそう

    あとなびマガジン
  3. 方南町にオープンした日本初の「呪物カフェ」に行ってみた

    タイムアウト東京
  4. 大阪の新たな食の聖地「タイムアウトマーケット大阪」でプレオープンパーティーが開催

    タイムアウト東京
  5. イマーシブ・フォート東京「ザ・シャーロック」が大幅リニューアル 連続殺人事件に新たな真相、モリアーティ教授も登場

    あとなびマガジン
  6. eill、ワンマンライブを9月にLINE CUBE SHIBUYAにて開催決定

    SPICE
  7. ちょっと早起きして作りたい。【パスコ公式】の「食パン」の食べ方が最高にウマいよ

    4MEEE
  8. 3/19発売!ちょい持ちに最適!便利なコールマンの「ポーチ」【雑誌の付録レビュー】

    4yuuu
  9. カットで垢抜ける!アラフォー向けショートヘア5選〜2025年春〜

    4yuuu
  10. 【庁舎内のトイレで盗撮行為】新潟県阿賀野市職員を懲戒処分、「大変なことをしてしまった」

    にいがた経済新聞