セ・リーグ唯一の3割打者、巨人・泉口友汰をデータ解析 全ての球種、コースに対応する秘密
大阪桐蔭で徳山壮磨らとセンバツ優勝
近年のプロ野球は「投高打低」が顕著で、今季は首位打者でも打率3割に届かないのではないかと危惧されていたが、ここに来て3割に乗せた打者がいる。
巨人・泉口友汰だ。4日終了時点で436打数131安打、打率.3004とセ・リーグの規定打席到達者で唯一3割を超えている。
2023年ドラフト4位で入団した26歳。大阪桐蔭高時代は徳山壮磨(現DeNA)らと同級生で1学年下の根尾昂(現中日)、藤原恭大(現ロッテ)らとともにセンバツで優勝し、夏の甲子園は3回戦で仙台育英にサヨナラ負けした。
青山学院大では4年時に主将を務め、秋のリーグ戦でベストナイン選出。NTT西日本を経てプロ入りし、1年目の昨季は66試合に出場して打率.201、1本塁打、9打点だった。今季はどこが良くなったのだろうか。
苦手コースほぼなし
まずは下の表を見てほしい。
泉口はストレートに対して打率.300、1本塁打、変化球に対して打率.301、4本塁打とどんな球種にも対応しており、左投手に対して打率.297、2本塁打、右投手に対して打率.303、3本塁打と投手の左右問わず結果を残している。
いかに高い技術で安定した成績を残しているか分かるだろう。それは投球コース別の成績にも表れている。ストライクゾーンを9分割したコース別打率は下の通りだ。
打率3割以上を示す赤色が5つもある。内角低めとベルトラインは2割1分台だが、外角低めと高めも含めて満遍なく打ち返している。苦手なコースがほぼないのだ。
ボール球に手を出さない選球眼
どんな球種でも、どんなコースでも打ち返す。それを可能にしているのが選球眼の良さだ。下のデータがそれを証明している。
ストライクゾーンはスイング率59.6%なのに対し、ボールゾーンはスイング率26.5%と低い。ボール球に手を出していないのだ。
これがどれほど凄い数字なのかピンと来ないかもしれないが、セ・リーグの規定打席到達者でボールゾーンのスイング率はヤクルト内山壮真(25.6%)に次いで2位。比較対象に出して申し訳ないが、本塁打&打点の二冠王へ突っ走っている阪神・佐藤輝明はボールゾーンのスイング率36.0%、セ・リーグワーストの中日・上林誠知は48.1%となっている。
それでも手を出せばコンタクト率78.4%と高い確率でバットに当てている。これもセ・リーグで中日・岡林勇希(81.7%) に次いで2位なのだ。
ちなみにストライクゾーンのコンタクト率92.9%もセ・リーグ4位と高い。初球のスイング率が23.8%と低いことからも早打ちせずにじっくりと見極めていることが分かる。
ミートのうまい打者がボール球に手を出さないからこそ、どんな球種でも、どんなコースでも弾き返せるのだ。
見事に打ち分ける広角打法
そして、打球方向にも注目したい。今季の打球方向を5分割したデータは下の通りとなっている。
見事に広角に打ち分けていることが一目瞭然だ。ライト方向の18%から左中間の23%まできれいに数字が収まっている。セ・リーグ唯一の3割打者はすべてにおいてバランスが取れているのだ。
巨人で首位打者に輝いたのは2016年の坂本勇人(打率.344)が最後。今季は打率3割をクリアするかどうかも含めて首位打者への注目度は高い。泉口は残り試合でどこまで成績を伸ばすだろうか。
※成績は2025年9月4日終了時点
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記事:SPAIA編集部