エースとして、キャプテンとして。清水エスパルスの北川航也は3年ぶりのJ1でチームを勝利に導けるか
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
清水エスパルスのFW北川航也は東京ヴェルディとのJリーグ開幕戦に向けて、気勢を上げている。欧州から復帰して4年目となる今季は3年ぶりのJ1だ。
夏にオーストリアのラピード・ウィーンから復帰した2022年は、半年間で1得点。チームをJ1残留に導けなかった。2023年はキャプテンとしてチームを支えるとともに、エース級の働きで12得点6アシストを記録し、J2優勝・J1昇格の立役者となった。
「この世界で競争は当たり前」
3年ぶりのJ1に向けた鹿児島キャンプではチーム練習の合流が遅れて、総仕上げとなる恒例の“静岡ダービー”は雷雨で2本目の途中で中止となり、北川は出番がなかった。
その試合で1トップでスタメン起用されたドウグラス・タンキが、中原輝のCKを豪快なヘッドでゴールに叩き込むと、さらに高木践のクロスから豪快なヘディングで2得点目を記録。秋葉忠宏監督も「ストライカーというのは点を取るのが仕事。そういった意味では本当にいい仕事をしてくれている」と笑顔で語る好調ぶりを見せた。
前線のライバルでもあるタンキの活躍について「僕的には嬉しい」と前置きしながら「欧州でたくさん点を取っているアフメドフが新しく加入して、調子をあげているタンキ、郡司(璃来)もいる。この世界で競争は当たり前なので、そこに勝っていくことが大事だと思う。自分はそこにチャレンジしていきたい」と語る。
「(練習試合をこなせなかった)ゲーム勘というところでは、やっぱり多少の不安はあるし、やってみなきゃ分からない。ただ去年の成功体験があるし、自信を持っていいのかなって…。自分もシーズンを通して試合に出れたというのはなかなかなかったので。J1相手でも、しっかりプレーできれば」
カピシャーバ、中原との相性は?
北川は「どんな選手でも合わせられるし、お互いを見ながらプレーできるのが強み」と自負するが、左サイドに快速ドリブラーのカピシャーバ、右サイドに左利きの中原が入り、乾貴士に加えて二列目の助けは北川の得点数にもプラスに影響しうる。
「カピシャーバの縦の突破だったり、前の推進力は必ずチームの力になってくれる。輝はセットプレーもそうだし左足のキックがあって、縦にも仕掛けられる選手。生かしてもらうことも、生かすこともしながら、力になってくれる」と期待する。
「まずは守備から」の意識
今シーズンの目標を“2018年の13得点を上回る数字”という北川はもちろん得点に強いこだわりを見せるが、長いシーズンでいつもゴールが取れるわけではないことも理解している。
「うまくいかなかったら、まず守備で入るというのは自分の中で持っている。攻撃の中で起点になれないことも時間帯ではあると思う。その中で、どうやってチームの助けになれるのかなと思ったら、やっぱり守備のところ」
開幕戦で当たる東京ヴェルディは2023年に昇格プレーオフの決勝を戦い、敗れた因縁の相手だが、北川は「注目度は高くなると思うけど、しっかり自分たちが地に足を付けて、やってきたことを表現するだけだし、相手どうこうより、自分たちのサッカー、ここまでやってきたことを表現するかだと思っている」と落ち着いている。
東京Vとの国立決戦に向けて
昨季J1復帰したヴェルディがFC町田ゼルビアとともに上位に躍進し、それぞれ6位、3位でフィニッシュしたことが、同じJ2で戦っていた清水にも自信を与えているという。
「全員が同じ意識でプレーすることが一番大事だと思う。特にヴェルディはそこがはっきりしてるのかなと…。メンバーの多少の入れ替わりがあっても、やろうとすることは変わらないし、前線の選手がしっかりハードワークするし、そういうところは見習うべきところ。そういったことをやっていれば、自然と結果はついてくる」
清水は因縁の相手に勝利し、さらなる自信と勢いを得ることができるか。
北川はリーグ開幕に向け「全員の意識を合わせるのが(キャプテンの)仕事だと思うけど、ベテランにも頼りになる選手がいるし、副キャプテンにも、若い選手にも頼りになる選手がいる。僕一人がというよりは、チーム全員が同じ目標を見て戦う必要があると僕は思っている。誰か一人に頼るのではなく、チームとして戦っていければ」と語る。
相談している選手は誰かと聞くと「やっぱり同い歳の宮本航太は常に話を聞いてくれるし、ベテランの吉田豊さんとか経験のある乾さんとか、そういった選手たちと話したりはする。なにより秋葉さんがしっかりチーム(が向かう方向)を示してくれている。そこに全員ついて行くだけ」と答えた。監督のベクトルを第一としながら「よそを向く選手がいれば、選手間で話していければ」と語る。
ゴールでチームを勝利に導くエースストライカーとして、そしてチームの一体感を醸成するキャプテンとして。北川航也のピッチの内外での活躍に期待しながら観ていきたい。