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発達障害息子、小2から特別支援学級へ。周りの保護者、同級生の反応が不安だったけど…転籍は中3の今にもつながって

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発達障害息子、小2から特別支援学級へ。周りの保護者、同級生の反応が不安だったけど…転籍は中3の今にもつながって

監修:初川久美子

臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち

トラブルが多かった1年生。2年生からは特別支援学級へ

タクは小学校に入学してから、トラブルや教室からの脱走が多発していました。スクールカウンセラーとの面談の末に、2年生に進級するタイミングで特別支援学級に転籍をしました。転籍に向けて1年生の終わり頃から、何度か特別支援学級の教室を見学したり、担任予定の先生とお話しをしたりしたので、不安は少なかったです。

少しだけ気に掛かっていたことは、今まで同じクラスで学んでいた友だちや保護者の受け止め方でした。憶測でいろいろと言われてしまうんじゃないかと不安な気持ちがありました。噂などを未然に防ぐために私が行ったのは、1年生の年度末保護者懇談会で「2年生から特別支援学級でお世話になることになりました!」と堂々と宣言することでした。そのためか、周りの保護者の方からの理解もスムーズだったと思います。

お友だちとの関係については、先生が「タクは2年生から苦手な教科を別の教室で受けることになったよ。でも今まで通り給食や休み時間は一緒に過ごせるからね」と分かりやすく事前に説明をしてくれました。先生が自然にフォローしてくださったおかげで、何の違和感も無くクラス移行ができたと思います。

タク本人に至っては、全く心配は無く特別支援学級で授業を受けることを楽しみにしていました。

教室の後方にクールダウンスペース。特別支援教育ならではの配慮

2年生になってからのタクは、学校での問題行動がぐっと減りました。授業中の教室から突然逃げ出してしまうということも、特別支援教室ではほとんどなくなったそうです。これは少人数で見てくれていることと、タクがソワソワ落ち着かない状態になった時に先生が早い段階で気付いてくれて声かけをしてくれていたからだと思います。

授業参観をした際には、教室の後方に低い棚があってその後ろにはマットが敷かれていました。そこはクールダウンスペースとなっており、気持ちがソワソワしてしまった時には先生に伝えてからその場所で静かに過ごすことができます。落ち着いて授業に参加できるようになったら、自ら机に戻ってまたすぐに勉強を再開することができます。実際にクールダウンスペースを利用しているクラスメイトを見たこともありますが、すごく良い取り組みだなぁと感動しました。

自分の気持ちの状態を自覚して行動ができるように、さまざまな工夫がされているんだと思いました。落ち着いて過ごせる時間が長くなったことで、給食や交流学級での授業中もトラブルを起こすことが減っていったのだと思います。

量より質。達成感を重視した宿題

特別支援学級になってから大きく変わったことは、勉強の中身です。タクの場合は使っている教科書は通常学級と同じものでしたが、授業の進むスピードがバラバラでした。

得意な教科はどんどん先に進んで、飽きさせないようにさまざまな応用問題を準備してもらっていました。逆に苦手な教科については、過剰に精神的負荷がかからないように細かく分けて授業をしてもらっていたようです。苦手な課題を終わらせたら、残り時間は好きな工作をやっていいなどルールを明確化していたとのことです。

タクは、SLD(限局性学習症/学習障害)の中のディスグラフィア(書字表出障害)の傾向が強くあります。黒板の文字をノートに写すのがとても苦手で、マスの中に文字を収めることがなかなかできません。そんなタクの特性に合わせて、板書が必要最低限で済むようなプリントなどを使って授業を行ってくださいました。

宿題の漢字では、(右利きのタクに合わせて)左のマスに先生がお手本を書いて、それを見ながら右側に記入できるように毎日工夫してくださいました。記入は1回のみでOKで、一番下のマスまで書く必要はないと説明を受けました。

最初の頃は「これじゃ簡単すぎないかな?こんなに甘やかしたらどんどん文字が書けなくなってしまうんじゃないか……」と心配になることもありました。しかし長い目で見ると、これが当時のタクにとっての適量の宿題だったんだと納得です。
量をこなすよりも、出された課題を最後まで終わらせるという成功体験が必要だったのです。

また、今まではとにかく文字に強い苦手意識を持っていたタクですが、文章問題を音読してもらうことによってスムーズに計算を始めることができるようになりました。汚い字でも読めない字でも全否定しない先生の存在が、タクに自信を与えてくれたのだと思います。

忘れ物を減らす工夫を、先生と考える

1年生の授業ですでにつまずきを感じていたタクですが、3〜4人ほどの少人数クラスで授業を受けることにより、細かく手厚いサポートのおかげで学力が追いつきました。

勉強以外の面でも、変化が見られました。教室移動などの際に忘れ物が多いタクでしたが、先生の提案により学校内用のバックを使うことになりました。中身が透けて見えるタイプで、教科書と筆箱がぴったりとおさまる小さめのものです。このバックのおかげで移動教室の際にも、忘れ物や置き忘れが劇的に減っていきました。

周りの大人も本人も頑張りました!

小学2年生から特別支援学級に転籍したタクですが、本人にとってとてもプラスの結果となりました。

転籍の打診をされた時は、私自身は正直とてもショックでしたが……間違いなく転籍して正解だったと思います。一人ひとりに合わせたペースで授業をしてくれて学力も伸び、刺激が多い学校生活の中で安心できる場所になりました。

学年が上がる度に少しずつ集中力も付いて、交流学級で受ける授業が増えました。低学年の頃は「変わったやつ」だと言われることもありましたが、今では「変わってるけど面白いやつ」にキャラ変できた!!と本人も言っています。

特別支援学級に転籍という未知の道でしたが、先生たちのおかげで良い学校生活が送れたと思います。そして何よりも、少し変わり者で面白くて優しいタク本人の努力の結果だと思います。

タクは中学3年生になった現在でも特別支援学級に在籍しています。長い学生生活で、親から見てつらい場面や、やるせない出来事もありましたが、心身共に成長できたのは支援のおかげだと思っています。

執筆/もっつん

(監修:初川先生より)
通常学級に入学したタクくんが2年生から特別支援学級に転籍してみてのお話をありがとうございます。転籍を勧められるとショックを受ける保護者の方は多くいらっしゃいますが、実際移ってみるとお子さんがいきいきと過ごし、楽しそうに学習するようになったなど良い変化を目の当たりにされることも多いように感じます。

転籍にあたって、1年時のお友だちや保護者の方へどう説明しようかと悩まれたもっつんさん。学年末の保護者会で自らそこをお伝えされたとのこと、勇気のいることだったと思いますが、私は最適解だったと感じます。もっつんさんが心配されたように、変な噂が出ることやそれによって同じ学校でこれからも過ごしていくタクくんにとって何らかネガティブな影響が出てしまうのは避けたいところです。保護者の方に直接お話できる保護者会という機会を活かすのはとても良い方法だと思います。子どもたちへの説明は、担任の先生とご相談の上、担任の先生からなされるのもとてもよかったですね。先生の説明の仕方も発達段階に合った良い説明だと思います。

さて、特別支援学級での学びのいろいろについてもご紹介ありがとうございます。少人数だからこそ、個々人の得意不得意に合わせやすかったり、そもそもさまざまな障害・つまずきとそれへの対応に長けた先生も多くいらっしゃったりする環境です。具体的にタクくんに対する個別的な支援の実際をうかがうと、細やかに工夫いただいて、これは心強かったろうと思いますし、タクくんにとっても安心して学ぶ環境になったろうと思います。難しいことに困難を伴いながら頑張らせてもなかなか伸びなかったり、あるいは途中で心が折れたりしてしまうものです。自分にとって、しっかりと手応えと達成感を得られる課題から、成功体験を積んで学習をスモールステップで積み上げていくこと。学校生活において学習時間はなかなかの比重があります。その時間でしっかりとお子さん本人が手応えと達成感を得ながら取り組める環境になったことが、本当によかったなぁと感じます。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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