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自閉症息子、3歳で療育手帳取得、6歳で返納へ。小2現在は精神障害者保健福祉手帳を取得【今思う手帳のメリット】

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自閉症息子、3歳で療育手帳取得、6歳で返納へ。小2現在は精神障害者保健福祉手帳を取得【今思う手帳のメリット】

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

興味の偏り、言葉が遅かった3歳の頃……

自閉スペクトラム症がある長男けんとは、現在、小学2年生です。
まだ発達外来を受診する前、3歳の時に療育手帳を取得しました。コロナ禍の影響で更新が1年延び、6歳の更新の時に行われた発達検査の点数が基準点を超えたため、療育手帳は対象外となり返納。そして、同じ頃に精神障害者保健福祉手帳を取得しました。

なぜ、3歳の時に療育手帳を取得することにしたのか。そして実際に取得してから、どのような時に利用していたのか……など、現在にいたるまでの療育手帳にまつわる、わが家の場合のお話を書かせていただきたいと思います。

けんとが3歳になったばかりの頃、興味があったのは、数字や文字、エレベーターなど。言葉がとても遅かったので、児童館や地域の子育てサロンなどで会う同じくらいの月齢のお子さんたちとの発達の違いを感じ、私は悩んでいました。

私は市が主催する、子どもの発達に悩みがある人を対象とした親子教室に通っていましたが、それとは別に児童発達支援施設というものがあることを知りました。私はその施設にも通いたいと思い、市の発達相談の窓口に連絡をしました。
そして、窓口で手続きを進めていく中で紹介を受けたのが「相談事業所」です。そこは、子どもの発達に関する悩みを相談したり、地域の発達支援施設の情報を提供してくれたりするところで、けんとも契約をすることにしました。

相談事業所の相談員さんに、けんとの様子を実際に見てもらいながらいろいろな話しをしていると、療育手帳を取得することを薦められました。
その理由は……わが家が「転勤族だから」です。

相談員さんから薦められた療育手帳の取得

相談員さんのお話しによると、療育を受けるにあたり、療育手帳は必要ではないとのこと。しかし、地域によって療育を受けられる基準や、受けるまでの道のりが違うらしいのです。違う地域へ引っ越し、そこで療育を受けたい場合、療育手帳があると手続きがとてもスムーズにいくとのことでした。

そのお話しを聞いた時、私はけんとが療育手帳を取得できると思っていませんでした。苦手なことはたくさんあるけれど、数字やパズルがとても得意で、3歳で2桁の足し算を理解しながら解けるようになってきていたので、知的障害があると思っていなかったからです。

聞き取りの間、けんとの様子を見てくれていた相談員さんに「療育手帳、取得できると思いますか?」と、私が質問すると、「軽度か中度で取得できるんじゃないかと私は思います」と言われました。

正直なところ私は、相談員さんの話を半信半疑のまま療育手帳を申請しました。そして、実際に発達検査を受けてみると、中度に近い軽度で取得。3歳で足し算ができることや、記憶力がいいことは、発達検査の数値と関係はないようです。

発達年齢と実年齢のひらきにショックを感じ、落ち込みましたが、発達検査で分かった得意、不得意を通して、「現状を理解できた」という安心感が少し入り混じる、何とも言えない気持ちになったのを覚えています。

療育手帳のメリット! 引っ越し先でスムーズだった受給者証の手続き

ついに引っ越しをする時がきました。
療育を受けるに当たり必要な受給者証を、新しい居住地域の市役所に申請することに。長男けんとは療育手帳を持っていたため、市役所で提示するとすぐに申請ができました。

言葉が遅い2歳の次男ゆうきも、以前の地域で療育に通っていたので、新しい地域でも受給者証の申請を行おうとしました。しかし、診断を受けておらず、療育手帳がなかったため、すぐに申請することができませんでした。
次男ゆうきの場合、新しい地域で受給者証を申請するには、発達外来を予約し受診。医師に療育の必要があるという「意見書」を書いていただいて、それを市の窓口に提出する必要があったのです。

新生活に加え、知人もいない中、情報もなく、新たな発達外来を探すことや、その予約を入れることはとても大変でした。
けんとは療育手帳を持っていたため、申請がスムーズ。早く療育に通うことができたので、療育手帳を薦めてくださった相談員さんのお話通り! とても助かり感謝しました。

6歳で療育手帳を返納、そして精神障害者保健福祉手帳を取得

コロナ禍による影響で更新時期が1年延び、6歳の時に療育手帳の更新で再び発達検査をすることに。結果は基準点を超え、療育手帳は対象外。返納となりました。

わが家では、経験を積むチャレンジの一環として、水族館や博物館、公営公園、テーマパークなどレジャー施設によく行きます。その時に療育手帳を提示しての料金割引や、サービスを利用させていただいていました。

そして、次の転勤で引っ越した先でもいろいろな手続きがスムーズに行くかもしれないと考え、精神障害者保健福祉手帳を申請してみることにしました。提出資料をつくるに当たって発達外来へ。主治医の先生に「取得できるかは分からないですが、申請してみましょう」と言われました。そして申請が通り、取得。

現在は自閉スペクトラム症という診断を受けているので、診断書を病院で書いていただいて持っていけば、引っ越しの際、各種手続きはスムーズにいくと思います。でも、診断書は有効期限などがあるので、やはり手帳があったほうが、何かがあったときにすぐに提示できてありがたいなと感じます。

療育手帳は返納となりましたが、けんとはたくさんの特性をもっています。今のところ、わが家の場合は手帳を取得して、ありがたかった経験ばかり。「取得しなければ良かった。」と思ったことは一度もありません。転勤先の地域によっては精神障害者保健福祉手帳が対象外になることもあるかもしれませんが、それまでの間、更新を希望していこうと思っています。

執筆/ゆきみ

(監修:室伏先生より)
けんとくんが療育手帳を取得された経緯や、そのメリットについて共有くださりありがとうございます。
療育手帳や精神障害者保健福祉手帳は、診断を受けたからといって必ず取得しなければならないものではないため、どうすべきか悩まれている親御さんも多いことと思いますので、とても重要なメッセージと思います。

手帳は、障害者枠で配慮を受けながらの雇用を望む場合には必要になりますが、幼児期や学童期に手帳がないから療育が受けられないということは基本的にはないため、取得されていないお子さんもたくさんいらっしゃいます。
いっぽうで、今回共有してくださったように転居や各種手続きの際にスムーズになる、料金割引がある、周囲の理解を得やすいなどのメリットを感じられて取得されているお子さんもたくさんいらっしゃいます。
外来でご相談をお受けすることも多いのですが、「焦って取得する必要はないけれど、ご家族が心理的な抵抗などがないようであれば取得してデメリットはないと思います」とお伝えしています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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