「政治と金」に見られる背景や深象を考える 竜哲樹(元上越市議会議員、元産経新聞記者)
永年の「自民党」による政治資金の集め方は
昔から自民党は地方においては、その地方の有力者が比較的自民党支持者が多かった。もちろん農林業者はじめ農協、郵便局などとの繋がりもあってか、より多くの支持者を抱え、自民党には他の政党より政治資金を集める力があった。しかし、地方にもたくさんの企業が進出して来てからは、今までの官公労だけでなく企業労組が強くなり、相対的に野党系支持者が増えるため、近年自民党の集金力は落ちて行った。今回の政治資金の〃不記載問題〃も、そんな背景があるのかもしれない。集金力が落ちたなら、それに見合った選挙活動にとどめ、個人や民間企業に負担を掛けるべきではないだろう。
そこで選挙に金の掛からない方法はないのか
確かに、なぜ政治や選挙にそんなに金が掛かるんだという声はよく聞く。選挙の時だけでなく、普段から支持者を繋ぎとめていくためには、国会議員が足繫く選挙区内を回り、顔を出すだけでなく、国会報告会はじめ様々な大きい会合や大会などを開催し、露出度を上げなければならない事情もあるだろう。様々な団体や組織にも入り、そのための会費も大きいのだろう。この辺りは国会議員だけを責めるわけにはいかない。しかし、それらも含め、与野党で政治や選挙に金の掛からない方法・やり方を考える時期に来ている。
与党は国民や企業を守る政策を断行すべき
さて、テレビの討論番組を見ていると、野党から「パーティ券の購入はじめ自民党の政治団体への政治献金や寄付で政治が歪められている」との声が飛ぶ。一見正しい主張や発言に見え、国民の皆さんには〃そうだ、そうだ〃と聞えるやもしれない。与党が政治を歪めるようなことをやったら、「日本の政治はぶっ飛んでしまう」と思う。
確かに政党助成金が創られたのも、リクルート事件や佐川急便事件などがその背景にあったことは確かだ。だからこそ、権力を持つ与党はどこまでも公平・公正でなくてはならない。そして与党は国や国民・企業を守る政策を断行すべきだ。
国会の役割は言うまでもなく法律を作ること
法律を作ることが出来るのは国会であり国会議員である。その模範たるべき国会議員が、今回のように政治資金規正法を守らないことは許されないことだ。主権者たる国民から見たら、政治への信頼を失うせる国会議員を許さないのは当然だ。その裁きは受けなければならない。だからこそ、あの「保守王国」と言われる島根1区での補欠選挙と、先の静岡県知事選でも惨敗したのだ。
来年10月には衆議院議員の任期満了となる。その前の解散総選挙も取りざたされているが、自民党にとっては厳しい選挙結果が予想される。それまでに果たして信頼回復が出来るのか。
その正念場こそ、政治資金規正法の改正だ
「政治と金」の問題は戦後、何度も何度も事件となり、多くの有力な政治家が失脚して行った歴史を刻んで来た。まさに「懲りず候」が続いてきた。今回の改正では「お茶を濁したような改革」では国民は納得しない。あの政治倫理審査会でも、国民が納得出来るという説明がなされなかった。
改正の〃肝〃は、政治資金の透明性と罰則規定であることは言うまでもない。「そのお金を何に使ったのか」という説明責任であり、「会計責任者だけに押し付けるのではなく、政治家自身がその罪を逃れないようにする罰則(有罪で公民権停止)を定める」のは当然だ。まさに正念場になる。
竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。