『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』石川界人さん×山根綺さんインタビュー|ランドセルガール編から登場していた赤城は、自分の信じる正しさに基づいて行動しているキャラクター!?
累計発行部数300万部を突破し、昨年(2024年)完結を迎えた鴨志田一先生による小説“青春ブタ野郎シリーズ”。
2018年にTVアニメ化を果たし、2023年に劇場アニメとして公開された『青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない』『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』をもってアニメも《高校生編》が完結しました。
そして、その続きとなる《大学生編》『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』が、7月5日(土)からTOKYO MXほかで放送中。
アニメイトタイムズではその放送に連動して、出演声優陣へのインタビューを実施。原作における『ナイチンゲールの夢を見ない』編の最終回が放送される今回は、梓川咲太役・石川界人さんと赤城郁実役・山根綺さんが登場です!
赤城は映画『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』から登場シーンがありましたが、山根さんにはその当時のお話も含めてオーディション時や収録時のエピソードを中心に伺っています。
また、赤城は咲太の中学時代を知っているということで、石川さんと山根さんのトークからその複雑なキャラクター性も掘り下げました。ぜひ第7話の放送前後にチェックしてみてはいかがでしょうか。
【写真】『青ブタ』ナイチンゲール編:石川界人×山根綺インタビュー
赤城役の決め手は山根さんの真面目な一面!?
──まずは、これまでの《大学生編》の物語やナイチンゲール編を振り返っての印象からお願いします。
梓川咲太役・石川界人さん(以下、石川):ナイチンゲール編は『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』から張られていた伏線が関わってくるので、遂にそこが収束したなと感じています。『青ブタ』の中でもとりわけ複雑なエピソードなので、きちんと作中で開示されている情報を整理しなければならず、収録時はその部分の整理に苦心していました。
赤城郁実役・山根綺さん(以下、山根):石川さんのおっしゃる通り凄く複雑だったので、私も何回か原作や台本を読み込まないと理解できたか自信が持てないくらいでした。それくらい視聴者側としても難しい内容でしたが、きっと物語の中の咲太くんや彼の周りの人たちも、郁実が何を考えているのか何がしたいのかを掴みかねていたと思うんです。
色々な人の思考が何層にも積み重なっているような感覚もありましたし、視聴者の皆様からすると、この子は一体何がしたいのだろうという目的の部分は、ナイチンゲール編を最後までご覧になっていただかないとわからないのではないかなと感じました。
──郁実は映画の『青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない』にも少しだけ登場していました。その当時のお話も伺えますでしょうか?
山根:オーディションはランドセルガール編の収録前にありました。原稿にはまず、ランドセルガール編の登場シーンがあって、その後に今回のナイチンゲール編の台詞が抜粋されている形でした。
その中に、ひっかけなのかな?と思った台詞があって。原作の地の文には泣きながら喋っているという情報が書いてあるのですが、オーディション原稿にはそれがなかったんです。原作をチェックしていなかったら、泣きながら喋っている台詞だとわからなかったと思います。
後々「この人が一番真面目だと思った」という部分で、郁実役に選んでいただけたということを知って。そういう部分でも、ちゃんと読んでおいてよかったと思いましたし、郁実の生真面目なところが、自分とも似ていたのかもしれません。
──また、原作からチェックされているとのことですが、『青ブタ』という作品にはどんな印象を受けましたか?
山根:オーディションを受けるにあたってお芝居の温度感を見てみたいと思ったので、TVシリーズ第1期の『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』をチェックしました。そこでどんな物語なのかを掴んだのですが、何故もっと早く見なかったのだろうかと思うくらい面白くて。
出演されているみなさんのお芝居が凄く自然に感じましたし、物語の中で描かれる思春期の葛藤をリアルに演じられていたので、「これは絶対に受かりたい!」と思って、自分が納得するまで何度も何度も繰り返し時間をかけて、オーディションのテープを録っていましたね。
石川:タイトルのインパクトが強いので、忌避される方もいることは僕も何となく知っていて。だけど、実際に触れるとキャラクターたちの悩みや心情がとても身近なものに感じられて、そのギャップからコロッとハマってしまう。
とても美しい理想を掲げて物語が進んでいますし、見ていると自分もこうありたいなと思えてくる。そんな作品だからこそ、真面目な気質のある山根さんにも刺さってくれたのかなって思います
──ありがとうございます。ランドセルガール編のオーディション時から郁実のナイチンゲール編の台詞が抜粋されていたそうですが、そこから《大学生編》に至るまでの役作りで意識されていたこともお教えいただければと思います。
山根:どうしても郁実を演じたい!と思いながらオーディションに臨みましたし、決めていただいた時には両手を上げて喜びました。だけど、いざ映画の収録が近づくとあまりにも人気な作品ですし、出演されている方たちはみなさん先輩なので「どうしよう(※震え声)」という気持ちになってきて。
当時はものすごく緊張していたので、自分としてはゆっくり喋っているつもりなのにパクが合わなかったくらい全部早くなってしまったんです。
──相当緊張されていたんですね。ナイチンゲール編の収録はどんな感じで進んだのでしょうか?
山根:ランドセルガール編と今回のナイチンゲール編とで大きく役作りを変えたところはないのですが、郁実が抱えているモヤモヤとした感情をあまり出し過ぎないことを最後まで大事にしていました。
テスト収録の時に一度、その時の郁実が感じている心情をかなり乗せて演じたことがあったのですが、ちょっと感情を出しすぎかも、もっと淡々と喋ってほしいというディレクションをいただきまして。そこで、ここまで感情を出してしまうと答えになってしまうんだと気づきました。
視聴者のみなさんは咲太君を通して物語を見ているから、私が感じていることが伝わり過ぎてしまうと、これが答えですよとレールを敷いているような感じになってしまうなと思ったんです。
作っている気持ちや感情の方向性はあっていたと思うのですが、情報過多にならないようもっと飄々としているというか、何を考えているのか、どういう人なのかを掴めない感じにしなければならない。そのバランス感をずっと考えていました。
──ランドセルガール編に加え《大学生編》の第1話やPVの印象だと、この子は何を考えているんだと気になってしまうような、何か強い引っ掛かりがあるキャラクターという感覚がありました。
山根:そうですよね。その掴めない雰囲気と本心とのバランスが大切なキャラクターなんだと思います。郁実の中には中学時代の出来事とか、これまで生きてきた中での色々な葛藤があるのですが、それを表に出し過ぎないというのが難しかったところです。
──石川さんは郁実についてどんな印象を受けましたか?
石川:赤城と咲太は割と似たような志を持っていると取られがちなのですが、僕としてはかなり違うと思っています。どちらかというと咲太は相手のありのままを受け入れて寄り添って行くのですが、赤城は自分の考える正しさを証明していく人だと思っています。僕は、そんな赤城の一本芯の通ったところが凄く好きです。そういう彼女の哲学についても、非常に好ましいなと思っています。
赤城にはそんな生真面目さがあるけれど、そこに縛られてしまっている。彼女本人の葛藤が今回の思春期症候群に繋がっている訳なのですが、その生真面目すぎるところは長所でもあるし、短所でもあるんですよね。大学生なんだけどまだ思春期の終盤にいるような、精神的な部分の絶妙なバランスが、赤城というキャラクターを魅力的にしていると感じました。
そんな彼女を大人になった山根さんが演じることで、赤城の固いキャラクター性に生真面目さやコミュニケーションが上手なところ、立ち居振る舞いの美しさみたいなものが加わっていました。このあたりは、赤城というキャラクターを上手に表現するための力になっていたのかなって勝手に思っています。
山根:言語化が上手過ぎます! そして、そう仰っていただけて嬉しいと同時に、大変恐縮です!
石川:いやいやいや(笑)。
山根:郁実は真面目で正義感が強いというか、自分の中で正しいと思うことがとてもハッキリしているんですよ。私も昔から曲がったことが嫌いなジャスティスな人間でしたし、周りの人たちからもずっと言われていて。
私としては正しいことは正しいのだからいいじゃないか、という「正しさ」に囚われてしまっていた部分があるので、郁実は演じていて昔の自分を見ているような感覚がありましたね。きっと自分もそういう風に考えていた頃があるなって、私以外にも思ってくださる方はいるんじゃないかなと思います。
赤城と咲太の掛け合いは腹の探り合い
──山根さんから見て咲太の印象はいかがでしたか?
山根:心に波はあると思うのですが、基本的には大きく動じることがないというか。この人だったらなんとかしてくれるんじゃないかなっていう、そういう希望を見出してしまいそうな安心や信頼、期待みたいなものを感じますね。
郁実はずっと過去の自分に囚われて苦しかったと思うのですが、咲太君と再会したことで、この人なら助けてくれるかもしれないって思えたような気がしています。
石川:僕としては、赤城はきっと咲太が自分と違う正しさを持っている人だと認められたんじゃないかと思います。赤城は色々な要因から、正しい自分でありたいと考えて今回のような出来事を引き起こしてしまった訳ですが、そんな間違いを犯してしまう自分すらも正しいと思えるっていうのが咲太の正しさなんじゃないかって思うんです。赤城は咲太を頼るというよりも、咲太が信じている正しさの先を見てみたいのかもしれませんね。
山根:その通りだと思います。郁実自身は気付いていないかもしれませんが、咲太君と再会して影響を受けていく内に、また新しい自分を始められると思えたのではないかなと受け取っています。
──そんな咲太と郁実はそこまで繋がりがなかった中学時代の同級生で、大学生になって再会したというややこしい関係性かと思います。掛け合いではどんなことを意識して演じられましたか?
山根:原作にも書いてあったのですが、郁実と咲太君は会話をしているようでしていないんです。お互いに言葉を積み上げながら腹の内を探り合っていたので、かけすぎない、受け取りすぎないを常に意識していました。
あのベンチで喋っているシーンは、心と心のやり取りとして会話をするのではなく、相手から文章をもらってそれに対して淡々と返したというか。郁実と咲太君の間に、何か見えない壁が1枚あるような雰囲気で会話していたなと思っています。
石川:あまり意識することはなかったですね。咲太は誰に対しても割とフラットでありつつ、相手のパーソナルな部分が見えてこないとそれに対するペルソナが出てこないところがあります。なので、序盤のジャブ的なところ、腹の内を見せない赤城に対してはどう接すればいいのかわからないみたいな距離感だったのかなって個人的には思っています。
ただ、だからといって咲太は性格的に手を差し伸べない訳にはいかない。何故なら、彼は優しい人になりたいという理想を持っているので、今問題を抱えている赤城に対して自分に何ができるのかを、パーソナルな部分を分析することで掴もうとします。本当に山根さんがおっしゃった通り、探るっていうコミュニケーションが一番正しかったのかなって。
──中々パーソナルな部分が見えてこないというか、見せてくれないので、視聴者の中にも郁実が何を考えているのかずっと引っ掛かっていた人は多そうです。
石川:咲太も最後の最後まで掴むきっかけを得られないかもしれません。ここまで赤城は自分のパーソナルな部分をさらけ出すことがなかったし、学校でのシーンも本音のように聞こえるけど本当に大事な情報は隠している。どこまでが嘘でどこからが本当なのかも含めて、第7話の展開に期待してもらえたらなと思います。
──また、収録時に咲太に関しては何か《大学生編》ではディレクションがありましたか?
石川:それが、キャラクターの内面的なものはほとんど無くて。読み間違えや口パクがあっていないとか、掛け合うキャラクターとの距離感に気を付けてみたいなテクニカル部分の細かいディレクションはあるんですけれども。
やっぱりシリーズを長くやってきたからもあると思いますし、主人公は咲太でも物語を動かすのはあくまでもヒロインたち。おそらく、状況的によほど間違っていなければってことなんだと思っています。だから、僕自身はきちんと台本を読み、ヒロインたちの悩みや現状を知る方に注力していたように思います。
──先に麻衣役の瀬戸さんにお話を伺う機会があったのですが、麻衣もほとんどそういった指示はなかったのだとか。やはり、おふたりは長くキャラクターに寄り添って来たからこそな部分がありそうです。
山根:おふたりは本当に何のディレクションもなかったですし、掛け合いもすごくやりやすくて、さすが青ブタを長年支えられてきた方々だなと思いました。私がお芝居の中で郁実の見ている世界と同じものを見られたのも、きっと咲太君と麻衣さんのおかげです。
石川:こちらとしても、そう思ってもらえていたのならありがたいです……!!
──咲太としてヒロインたちと掛け合う時は、どのようなことに注意されていますか?
石川:咲太は割と誰に対してもフラットなところがあるのはお話した通りですが、例えば古賀に対する扱いは結構ぞんざいだったりしますし、《大学生編》からは大分変わっていますけれど、花楓/かえでに対しては凄く優しい兄であることを大切にしていました。
麻衣さんは一番甘えられる存在ではあるので、そういった形で信頼関係を示したり。後は、豊浜に対しては古賀よりもぞんざいで、なんならめんどくせぇなっていうのを前面に出して喋っていたりする。
それぞれのヒロインたちに必要だったことが、そのまま咲太のパーソナルに反映されていると思っているんですよね。古賀なら絶対に裏切らない親友だったし、麻衣さんは愛してくれる存在、豊浜は何を言っても離れない仲間。咲太にはそれぞれにあわせたパーソナルがあるのだけど、それは無意識にやっていることなので、たまたまそうなっているんだろうなと。
《大学生編》に関しては咲太も大学生になり、《高校生編》からここに至るまで月日が経過しています。そんな中で触れるコミュニティであるとか、親への感謝であるとか、精神的な成長をする様々な機会があったと見受けられるので、今後も表立って変わることはないかなと僕としては思っていますね。
──そして、咲太と赤城の共通の知り合いとして上里沙希が再登場しています。《大学生編》の彼女の印象はいかがでしょうか?
石川:なんだかおじさんみたいな目線になってしまうのですが、TVシリーズ第1期の初登場時からもう7年も経っているので僕もそれだけ歳を重ねましたし、大人になったよなっていう感想になってしまいます。
嫌いな人と接さなければならない時は誰しも必ず来るもので、高校生くらいまでなら何か起きたとしても、小さな社会でのことだからそこまで大きな問題にはなりづらい。でも、大学生にもなると関わるコミュニティも増えますし、社会的な責任も重くなる。そういう雰囲気が上里のあの振舞いからも見えましたね。
──《高校生編》での咲太と上里のやり取りは本当に大好きでした。
石川:アレは本当にね。今となってはなんであんな自然に、さらっとあんな台詞を吐けたのだろうと思いますよ。
一同:(笑)。
──山根さんは上里についていかがですか?
山根:郁実と咲太君を繋いでくれるというか、郁実がどういう人なのかっていうヒントを意図せず咲太くんに与えていた存在でしたよね。郁実も沙希に心を開いていない訳ではないと思うのですが、郁実側から見えている世界が結構狭いのかなって思うんです。
この人は何をどう感じているかとか、周りの人の状況をあんまり見ないようにしているところがあるようにも思いましたし。沙希も信頼する友達だとは思うのですが、この時点ではまだ腹の内や心情を全てさらけ出せる存在ではなかったのかもしれません。
──郁実と上里のこの先の物語が気になってしまいますね。
山根:見てみたいですね! アナザーエピソードがあればぜひ!
石川:コミカライズとかでやりそうですよね。コミカライズはヒロイン視点で描かれることが多いので。
山根:それはちょっと期待したいと思います!
第7話で赤城の真意が明らかに!?
──他にもナイチンゲール編の収録で印象に残ったエピソードやディレクションはありますか?
山根:これは大丈夫だったのかなって気になっていることがひとつあります。台本のてにをはの部分なのですが、オーディション原稿にもあった台詞だから「これはあの時にもあったな」って覚えていたんです。
予習したのはかなり前だったのですが、それでも覚えているくらい練習していたというか。何回も何回も反芻した台詞だったので、思い入れも強くて。ここでこの1文字が加わるかどうかでかなり意味合いが変わってしまうし、私はこの1文字が無い方が好きだなと思ったのですが、台本通りではないものの原作通りに読んでみたんです。
それを本番でもやったらここちょっと違うかもと指摘が入ってしまったのですが、「原作ではこうだったんです……」と進言したら確認してくださって。その後に、「採用。君の勝ちだ」と言われました。(笑)
原作は原作、アニメはアニメですから、そこまで細かくなくても良かったのかもしれません。その収録の日は原作の鴨志田先生もいらしていたので、先生的にもスタッフさんたち的にもどちらでもよかったのかなってちょっと思っているのですが……。
だって原作面白いじゃないですか。そのくらいこの作品が好きなんです!
石川:飲み会みたいなテンションになってきたぞ!
一同:(笑)。
山根:やっぱり何度も原作を読んでいるときに、頭の中で郁実として喋るじゃないですか。その時の音で覚えてしまっていたので、「あっ、ここが違う」って気付いてどうしようかと悩んだりしました。石川さんはどうでしたか? そういう経験はありますか?
石川:今のお話を聞いて本当に赤城っぽいなと思いましたし、そういう姿勢で自分もありたいなと思いましたね。
山根:大先輩にフォローしてもらって恐縮です……!
石川:僕は割と何でも戦ってしまう方で、その役の中で一番大事なシーンや台詞、単語みたいなところは役者や監督、皆さんで話し合い、慎重にシーンを作っていくべきだと思っています。
ひとつの作品を制作する上で色々な方が関わっていて、色々な理由があって(原作から)変更しているものも沢山あると思います。
こと『青ブタ』に関しては鴨志田先生も脚本会議に参加されているので、基本的には台本を大事にしています。ただ役者として「ここだけは譲れない」という部分はご相談させていただくこともありますね。
山根:そうだったんですね……。
石川:でも例えばですけれど、プリントのミスの場合や、台本屋さんが絵コンテから台本を起こす時に書かれている文字が不明瞭で直してくれることがあるのですが、そういう時に偶発的なヒューマンエラーが発生することがあります。そういう故意ではないミスの場合もあるので、そこで山根さんがしっかりと原作と違う部分を見つけて指摘してくれたのは素敵だなって思います。
──おふたりが《大学生編》で咲太と郁実以外で注目している、気に入っているキャラクターも教えてください。
石川:僕は福山ですね……!!
山根:わかります!
石川:ああいう友達が欲しくなるというか、気の置けないという表現がまさにその通りだというか。雑に扱ってもなんだかんだ話しかけてくれるし、そこに下心が全くなかったりする。だけど、下心がある感じで振舞ってくるんです。あの大学生感みたいなものは魅力的ですし、それを考えてやっているのかいないのか、わからないぐらい自然に演じている岩中睦樹さんのお芝居が素敵すぎて、何か凄い奴が同級生組に入ってきたぞと思いましたね!
──山根さんはいかがでしょうか?
山根:私はこれから深掘りされていくのだろうなと思うのですが、姫路紗良ちゃんが結構好きです。もし高校生の頃に実際にいたら、「ちょっとアイツさ」みたいに女子の間でなるような特異な存在というか。「おいおい」って思うような子ではあるかもしれないけれど、大人になった私が見た時にシンプルに可愛いなと思ったのは紗良ちゃんかもしれません。
この子は本当はどういう子なんだろうってみなさんも気になるはずです。郁実も何を考えているかわからないという点では同じベクトルの気持ちになると思いますが、郁実とはちょっと違う。そんな紗良ちゃんの胸の内やどんな環境で育ってきたのか、そういう内面を知りたくなるし、気になってしまう女の子なんじゃないかなと思いました。
──特に男性ファンには人気が出そうですよね!
石川:いいですよね、あざとい子って。僕は高校時代から大好きですよ、そういう子が!
山根:あざといって漢字は“小”さいに“聡明”で“小聡明”と書くらしいんです。確かに紗良ちゃんは賢いですよね。
──ナイチンゲール編以降はそんな紗良をはじめ、まだフォーカスのあたっていないヒロインたちの話が描かれることを期待させます。ネタバレにならない範囲で構いませんので、今後フォーカスされるであろうヒロインたちの注目すべきポイントも伺えますか。
石川:紗良は久々に来た高校生の思春期症候群という印象でした。だからこそ卯月の思春期症候群が描かれた迷えるシンガー編と郁実のナイチンゲール編の物語が、ちょっと大人な雰囲気のものだったんだなって実感できると思います。そういう意味でも紗良は《大学生編》のスパイスになっているキャラクターですし、後々この子が古賀の後輩なんだっていうのがありありとわかるんじゃないかなと。
ミニスカサンタについては、何を言うにも難しくて全てがネタバレになってしまうんです。今までのインタビューやイベントでも上田さんが非常に苦心されていたのですが、僕から言うのであれば咲太以外には認識できないという麻衣さんと似た状態になってしまっている……ということでしょうか。
初出し時のPVからバニーガールの恰好をしていた麻衣さんに似たセリフを喋っていて、非常に麻衣さんと近しいような表現がなされていました。その部分を考えながらご覧になっていただけると、ただ不可思議な現象で現れている訳ではないとわかってもらえるはずです。バニーガールの格好をしていた麻衣さんが実際にはどうだったか……というところまで思い返しながらミニスカサンタを見てもらえればと思います。
山根:郁実はこれからも頑張りますといった感じでしょうか。今度は咲太君の力になれるよう、郁実は自分にできることで新しい道を探していきます。ナイチンゲール編以降も彼女の活躍に期待してもらえると嬉しいです。
──《大学生編》からの新キャラクターだと美東美織もそうかと思います。スマホを持っていなかったり、咲太と近いというか似たような雰囲気もありますが……!?
石川:美東は自然だけど説明できない違和感がありますよね。本当に纏っている雰囲気に違和感があるとしか言えないのですが、それを知ってか知らずか石見さんがとても巧みに表現されていて。どうしてそんなにすぐ人の心の隙間に入ってこられるんだろうっていう部分が上手すぎて、逆に違和感があると言えばいいのかな。そういうところが面白いキャラクターですね。
──第7話の見どころもいただけますか。
山根:自分は自分以外のものにはなれないし、信じてきたものから目を背けて生きていくのはとても難しい。これまでの道のりや自分の感じた後悔とか、そういうものも全部受け入れて前に進んでいけるようなお話だったと思っています。
郁実は本当は何がしたかったのかとか、何を思っていたのか。それが彼女自身の口から語られるのがこの第7話だと思うので、郁実が自分で自分の気持ちに向き合って前に進んでいくところを見守ってほしいです!
石川:《大学生編》は『サンタクロースの夢を見ない』と題が打たれているものの、ナイチンゲール編はシリーズの中でもっとも長いお話になっています。この第7話でようやく『ゆめみる少女の夢を見ない』から派生した伏線がある程度、みなさんの中で理解を得られるお話になったなと思います。
これまでの物語も重要ですし、第7話で明かされる内容は今後にも関わってきます。ぜひ細部まで見逃さずに注目していただければと思います。
──ありがとうございます。それでは、今後の物語に期待している『青ブタ』ファンのみなさんへのメッセージをお願いします。
山根:この作品の舞台は神奈川県ですが、私も神奈川県出身で、金沢文庫の方に住んでいたこともあって。
郁実たちが通っている大学のモデルになった場所は、声優の道ではなく大学に行こうと考えていた子供の頃目指していたこともあるくらい、個人的にも思い入れがあるんです。
郁実というキャラクターは自分と近いところにいる女の子だと思っていたので、最初に絶対に自分が演じたいと思ったことを鮮明に覚えています。そこから気付けば収録が始まり、放送も始まっていて私自身も感無量です。
きっと大人になるって、今までの郁実が感じていた正しいことと正しくないことの境目だったり、自分の信じていた正義とか正しさを静かに諦めていくことなんじゃないかなと思っていて。
だから、今後は肩の力を抜いて、周囲の人たちとどんどんコミュニケーションを取ることで視野を広げ、新しい自分にとっての正義や正しさみたいなものを見つけていくんだと思っています。これまでの郁実もこれからの郁実もみなさんの中で膨らませていただいて、変わらず愛していただけたらとても嬉しいです!
石川:ここまでご覧いただき本当にありがとうございます。ナイチンゲール編も終盤となりますが、赤城はこれからも咲太と関わってくることになるかもしれません。今後もそんな彼女の活躍を見守っていただけると嬉しいです。
そして、今までの思春期症候群は割と主観的なものだったのに対して、《大学生編》からは客観から影響を受けたことによる症例が増えている。何故なら、何度も繰り返している言葉ではありますが、自分と関わる人間が増えることで、自分の知らない自分と対面しなければならない機会が増えるから。
それは非常に苦しくて大変なことではあるのですが、大人になる上で絶対に必要なこと。そう思いながら見ていただけると、ヒロインたちがひとつずつ色々なことに向き合い、前に進んでいることを実感してもらえると思います。ぜひ最終回までお付き合いいただければ嬉しいです。
[文・胃の上心臓]