インバウンド鈍化、減収減益でも三越伊勢丹が業績予想を据え置く理由とは?【いづも巳之助の一株コラム】
百貨店はコロナ後にインバウンドという新しい基軸を作ったが、それも束の間で、各社が訪日客の需要鈍化で下方修正の嵐に。大丸、髙島屋、阪急などが、軒並みまだ第1Qなのに、通期営業利益を▲5%程度に下げてきた。まあ、そうなるよね。
ところがだよ、三越伊勢丹がなんと通期予想(売上高+0.3%、営業利益+2.2%)を据え置いたんだよ。え?なんでこんなに強気を貫くのか?
だって、第1Qで売上▲4.2%、営業利益▲17.1%って厳しい結果じゃないか。あ、わかった。第2Qで「やっぱり下方修正しまーす」なのかな?いや、それとも‥‥。
据え置いた理由を見てみると
①海外外商とカード戦略の成果
海外外商部の7月売上は前年同月比135%まで回復。ベーシックカード(無料カード)導入で国内顧客の購買単価も上昇し、カード+アプリのW会員売上は+12%。
②販管費削減の進捗
年間43億円削減計画のうち、第1Q時点で17億円(進捗率40%超)を実現。
③下期のリモデル効果
新宿・銀座・日本橋など旗艦店の改装による集客増を見込み、歳末商戦やEC販売強化で巻き返す。
①②は、まあわかるけど③は改装に伴う改装費や販促費がかかるから、うまくいかなかった場合はキツくなるね。それより、巳之助が様々なリスクを考えると、
A.昨年10月からの免税売上は、過去最高水準730億円(+38%)なので、本年は超高いハードルだよー。
B.これ以上円高になったら、インバウンド顧客は日本で買わなくなるし、結構ハイエンドブランドは値上げしまくったので、安く感じないかもよ。
C.それに株安になったら、国内の富裕層のラグジュアリー需要も伸びないよ
これだけリスクがあっても、恐らく第2Qでは下方修正はやらない理由を見つけたよ。それは、10月末まで自己株買い(上限5.5%)を実施中で、この期間に弱気材料を出せば株価が下落し、買付効率が悪化するよね。下方修正は自己株買い終了後に先送りする可能性がある。
それでも第2Q発表時で営業利益進捗率が50%を下回れば、市場は「達成はほぼ不可能」と判断すると思うよ。だって過去3年間、主要百貨店で進捗50%未満から通期達成に至ったケースはゼロだ。50%未満は心理的節目ではなく、統計的にもありえないからだ。
しかし!もし通期目標を達成できれば、他社が減益・下方修正で苦戦する中での百貨店で一人勝ちとなる。市場評価は一変し、2600円台までの上昇も視野に入る。その際の通期予想EPSは約200円、据え置き達成時の妥当PERは13倍と見るよ。だって、三越伊勢丹って好業績の時はだいたいPER13程度だからね。そうするとEPS200円 × PER13倍 = 2600円か。
さあ、11月の中間決算は勝者と敗者の分かれ道になる。あなたはどうする?
To buy or not to buy — that is the question.
買うべきか、買わざるべきか――それが問題だ。
シェイクスピア(じゃない)
▶巳之助メーター 2ニョロ 監視だね
目標達成は疑問だけど、下期の経済状況によっては一発あるかも?
(1ニョロ=素通り 2ニョロ=監視 3ニョロ=今だ!)
■プロフィール:いづも巳之助
プライム上場企業元役員として、マーケ、デジタル事業、株式担当などを歴任。現在は、中小企業の営業部門取締役。15年前からムリをしない、のんびりとした分散投資を手がけ、保有株式30銘柄で、評価額約1億円。主に生活関連の流通株を得意とする。たまに神社仏閣への祈祷、占い、風水など神頼み!の方法で、保有株高騰を願うフツー感覚の個人投資家。