ペットとの『10の約束』(犬の十戒)
「犬の十戒(いぬのじゅっかい、いぬのじっかい)を知っていますか?」
と問いかけると「何???」と答える方が、ペット飼育の有無に関わらず、思いのほか多いのです。しかし、「犬との10の約束は?」との問いには「ああ、アレ、映画の!?」と、少なからず合点がいく人も、なかにはいます。
そう、2008年3月に公開された映画『犬と私の10の約束』がモチーフにしているのが、「犬の十戒」です。
これは、いつ、誰が、どこで作ったものなのか不明な短編詩として、広く世界に伝わったもので、原文は英語で書かれています。
作者不詳とされてはいますが、原典とされているものがあって、ノルウェーのブリーダーが犬の買い手に渡していた「犬からご主人への11のお願い」というものが元になっているともいわれています。
犬の十戒は、ペットとして飼われることになった犬が、主人である人間と良好な関係を築くために守ってほしい10項目の願いを、犬が人間に語りかけるという形式で書かれています。
心に刻んでおきたいペット飼育の “心得”
犬の十戒の和訳には、直訳に近いものからアレンジされたものまで、さまざまなものがあります。今回、ここでは、子どもたちにも伝わりやすい言葉でアレンジされたものを参考に、ご紹介したいと思います。
以下、10項目の願いを『ウチの子との10の約束』とし、ペットとの暮らしにおける “心得” ととらえて、心に刻んでいただけたら嬉しい限りです。
①あのね、わたしはあなたが望むような “いい子” になりたいんだ。
だから、すこし時間はかかるけれど
わたしができるようになるまで、待っていてほしいんだ。
それでね、できたときは、いっぱい、いっぱい、ほめてほしいな。
[原文]
Give me time to understand what you want of me.
②あなたに信じてもらえたら、それだけで、わたしは幸せ。
それだけで、ずっと、がんばれる。
「マテ!」って言われたら、大好きなごはんもガマンするよ。
あなたが嫌がることもしない。
どうしてかって?
だって、あなたに信じてほしいから
[原文]
Place your trust in me. It’s crucial to my well-being.
③あなたがしてくれたこと、あなたとの思い出を
わたしはぜんぶおぼえているよ。わたしには心があるのだから。
あなたは、忘れてしまっているかもしれない。だから、ときどきでいい。
わたしにイジワルしていないかどうか、ちゃんと考えてみてね。
[原文]
Be aware that however you treat me I’ll never forget it.
④いつもと違うのには、かならず理由があるんだ。
痛かったり、苦しかったり…。
だから、あなたには、いつも見守っていてほしいんだ。
だって、わたしのことをちゃんと考えてくれるのは、あなただけだから。
[原文]
Before you scold me for being lazy, ask yourself if something might be bothering me.
⑤あなたの言葉はわからないけど
あなたの気持ちは、ちゃんと届いているよ。
声を聞いただけで、あなたが喜んでいるのも、悲しんでいるのも
ぜんぶわかるんだ。あなたの気持ち、ちゃんと伝わってるから。
だから、わたしにいっぱい話しかけてね。
[原文]
Talk to me sometimes. Even if I don’t understand your words, I do understand your voice when it’s speaking to me.
⑥わたしには、あなたがすべて。
だから、わたしは、ぜったいに、あなたを傷つけたりしないよ。
でも、知っておいてほしいんだ。
本当は、わたしはあなたよりもチカラが強いかもしれないってことを。
[原文]
Remember before you hit me, I have teeth that could hurt you, but that I choose not to bite you.
⑦わたしは、あなたよりも早く年をとって
だんだん元気がなくなってしまうかもしれない。
でも、わたしがどんなに年をとっても、ぜったいに見捨てないで。
お願いだから、わたしが「虹の橋」に行ってしまうまでは、ずっと世話をしてね。
[原文]
Take care of me when I get old.
⑧大きさも重さもおなじなのに
わたしの “いのち” は、あなたよりもずっとずっと短いんだ。
わたしにとって一番つらいのは、あなたと離れること。
ひとりぼっちにはなりたくない。
だから、どうか、お願い…
1分でも1秒でも長く、わたしと一緒にいてね。
[原文]
My life is likely to last 10 to 15 years. Any separation from you will be painful for me.
⑨あなたには楽しいことがあるし、お友だちもいるけど
わたしには、あなたしかいないんだ。
だから、あなたに怒られたり、無視されるのは、すごく悲しいし
朝から夜までお留守番したり、狭いところで待ってるのは
泣いちゃうほどつらいんだ。
[原文]
You have your work, your entertainment, and your friends. I have only you.
⑩最後の約束だよ。
お別れのときは、わたしをギュッと抱きしめて。
そして、わたしのこと、忘れないでね。
わたしは、あなたを、ぜったい、ぜったい忘れない。
だって、いつまでも、生まれかわっても
あなたのことが、大好きだから。
……………ありがとう。
[原文]
Go with me on difficult journeys. Everything is easier for me if you are there. Remember I love you …
虹の橋のおはなし
「虹の橋」は、作者不詳の散文詩として知られ、多くの動物好きの人々の間で語り継がれているおはなしです。詩作の時期については、今なお不明で、1980年代にアメリカで流布されていたものが世界中に広がり、日本にも伝わったとされており、現在、多くのバリエーションが広がっています。
『虹の橋』
大切な人とお別れした動物たちは、天国の少し手前にあるとされる「虹の橋」のたもとにやってきます。そして、彼らはそこで若さと健康を取り戻して元気に暮らします。
ただ、大切な人がそこにはいないという“さびしさ”だけは無くならないのです。
彼らは、周りにいる仲間たちとともにいつまでもずっと待っています。さびしさを抱えながら。いつか、大切な人が自分に会いにやってくるそのときを。
そして、あるとき、彼らは大切な人と再会し、全力で駆けて大好きな人に飛びついて顔じゅうにキスをします。すると、みるみるうちにさびしさが幸せへとかわり、大切な人と一緒に虹の橋を渡って天国へと旅立つのです。
まとめ
「犬の十戒」も「虹の橋」も、どちらも動物の視点から書かれたものです。動物たちは、人間の心をごく自然に理解して、自らの内部に取り込むことができますが、人間にはそれができないようです。そのため、動物の視点に立って書かれた文章を読んで、彼らの気持ちを少しでも理解しようとするのかもしれませんね。
皆さん、「犬の十戒」に書かれている10の約束をペットと暮らす際の“心得”として心に刻み、常にペットの気持ちを汲み取りながら、ともに幸せに暮らしてくださいね。
そして、これからペットと一緒に暮らそうとしている人や子どもたちに、この“心得”を伝えてあげてほしいと思います。
◎参考:ボクからあなたへ 10のねがい ~Hope~ 『ボクは、ここに、いるよ。』
◎写真:ほりまさゆき(風の犬たち)
記事の監修
獣医師徳本一義一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会委員長一般社団法人ペット栄養学会 理事有限会社ハーモニー 代表取締役日本獣医生命科学大学、帝京科学大学、ヤマザキ動物看護専門職短期大学非常勤講師