数々の映画賞に輝きながら政府の検閲の下、イラン国内では上映禁止の『聖なるイチジクの種』が日本で解禁!モハマド・ラスロフ監督の叫びを聞く!
第82回ゴールデングローブ賞【⾮英語作品賞】ノミネート! さらには、第97回アカデミー賞国際⻑編映画賞ドイツ代表選出、第77回カンヌ国際映画祭【審査員特別賞】受賞という輝かしい賞賛を浴びた本作が、2月14日(金)日本において解禁される。
国家公務に従事する⼀家の幸せそうな家族の物語のように始まる。主のイマンは20年間にわたる勤勉さと愛国⼼を買われ、夢にまで見た予審判事に昇進する。しかし業務は、反政府デモ逮捕者に不当な刑罰を課すための国家の下働きだった。反政府主義者からの報復の危険が付きまとうため、国から家族を守る護⾝⽤の銃が⽀給される。しかしある⽇、家庭内から銃が消える。
最初はイマンの不始末による紛失だと思われたが、次第に疑いの⽬は、妻・ナジメ、姉のレズワン、妹・サナの3⼈に向けられる。誰が? 何のために? 捜索が進むにつれ互いの疑⼼暗⻤が家庭を⽀配する。そして家族さえ知らないそれぞれの疑惑が交錯するとき、物語は予想不能、壮絶に狂いだす。 サスペンススリラーの趣のまま、モハマド・ラスロフ監督は本作でギリギリの抗議の姿勢を崩さない。国を優先するのか、家族を選択するのか、二者択一ほど単純ではないが、やがて家族は?
監督は、これまで名だたる国際映画祭でも高く評価されてきた。だが、ラスロフの映画は「国家安全保障を危険にさらす」と⽬を付けられ、いずれも検閲のためイラン国内では上映されておらず、監督⾃⾝は何度も投獄の憂き目に遭う。そして本作『The seed of the sacred fig(英題)』も2022 年の投獄中に、ヒジャブの着⽤をめぐり警察に拘束された⼥性の死をきっかけに起きた「⼥性、命、⾃由」を掲げた抗議運動で、社会的な変化を⽬の当たりにしたことがきっかけで製作を決意したという。
治安部隊との激化する衝突など実際の映像もとりいれ、テヘランに住む⼆⼈の娘と両親というひとつの家族の姿を描き出した本作。しかし、本作が第77回カンヌ国際映画祭コンペティションに選出されるや、イラン政府はラスロフ監督に有罪判決を⾔い渡し、出国を禁⽌。イラン政府は本作の上映⾒送りを求めて圧⼒をかけたが、ラスロフ監督は数名のスタッフとともにイランを脱出、28⽇間かけてカンヌの地へと辿り着いた。
そして声明⽂を発表。「イスラム共和国の諜報機関が私の映画製作について情報を得る前に、なんとかイランを脱出することができた俳優も多数います。けれども、今もイランには俳優や映画のエージェントがたくさん残っていて、諜報機関から圧⼒がかかっています」、「それでもなお私は、イスラム共和国政府の検閲による介⼊を受けない、より現実に近いストーリーを⽬指しました。表現の⾃由の制限や抑圧は、たとえそれが創造性を刺激するものであったとしても正当化されるべきではありません」、「道がなければ、作らなければなりません」と、今なおイランにいる俳優やスタッフ達の⾝を案じているという。
『聖なるイチジクの種』
2025年2月14(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
2024 年/フランス・ドイツ・イラン/167分
配給︓ギャガ (C)Films Boutique