多摩には「国立天文台」がある!~「多摩の星空」特集
東京の多摩地域にお住まいの方、出身の方もそれ以外の方にも多摩を楽しんでいただきたいという番組。
MCは土屋礼央さん(国分寺市出身)&林家つる子さん(八王子市の大学出身)。
今週の放送は、「多摩の星空特集」!日本の天文分野の中心である「国立天文台」が実は多摩の「三鷹市」にあった!「国立天文台」とは?から、多摩の星空でも見える星座について「国立天文台」の縣秀彦さんに伺いました!
多摩には「国立天文台」がある!~「多摩の星空」特集
つる子「プラネタリウムで星空を見ながら落語をやったことあります」
土屋:今週のゲストのご紹介です、「国立天文台」の縣秀彦さんです!お願いします!
国立天文台・縣さん:どうぞよろしくお願いします。
土屋:私は「たまむすび」「こねくと」でお世話になって。
国立天文台・縣さん:お世話になりました。
土屋:「国立天文台」の観望会というのがあって、いつも家族で応募しているんですけど落選していて。
国立天文台・縣さん:すごく人気なんですよ。
土屋:ずっと落選していたんですけど・・・
国立天文台・縣さん:事前申込とは別枠で、VIP扱いで招待させていただいて。
土屋:30分前くらいに行かせていただいて。ほんとに素敵だった!つる子さん、落語と星ってどうなんですか?
つる子:柳家小ゑん師匠という方がほんとに星に詳しくて。プラネタリウムで寄席をやられていて。
国立天文台・縣さん:小ゑんさんはほんとにお世話になっておりまして。コロナ前にはちょくちょくお越し頂いて。いろんなアイディアやアドバイスを頂いて感謝しております。
つる子:私は小ゑん師匠と、群馬県高崎市にあるプラネタリウムで星を見ながら落語をやったことがあります。
「たまむすび」「こねくと」でもお馴染み「国立天文台」縣さんご登場!
土屋:もうね、「国立天文台」の縣さんの星の情報や知識がほんとに楽しくて。招待して頂いた時に解説もほんとに楽しくて!子供も楽しめながら大人も楽しめるという。そんな縣さんのプロフィールの紹介を、つる子さん、お願いします。
つる子:縣秀彦さんは1961年生まれ、長野県のご出身。中学校と高校の先生を経て、1999年から「国立天文台」に勤務されています。
土屋:学校の先生から天文台勤務というのは、けっこうあるルートなんですか?
国立天文台・縣さん:その時だけだったと思います(笑)。普通、天文台に入る方は天文学の勉強を大学院までずっとされて、苦労されながら入るという。なかなか職が無いものですから。私の場合は、たまたま運が良かったと思います。
つる子:はい。
国立天文台・縣さん:25年前、「国立天文台」で“すばる望遠鏡”というものを作るんです。“スバル望遠鏡”はハワイ島の4200mの、富士山よりも高い山の上に、8年ぐらい年月をかけて作ったんですね。鏡の大きさが8.2mあるんですよ。
つる子:おお!
国立天文台・縣さん:このラジオのスタジに入りきらないですね。
土屋:全然ムリですね!
国立天文台・縣さん:すごい立派な望遠鏡が出来たので、日本の天文学者の皆さんが大喜びで。でも、その素晴らしい宇宙の様々な発見を研究者だけという少数の人で楽しんでいてはいけないなということを私たちの先輩が思って。天文台は研究のために入るのに、<研究はしなくていい>って。
つる子:へえ。
国立天文台・縣さん:僕はコメット=彗星の研究をしていたんですね。研究はもうするなと言われて。<その代わり、他の人たちがものすごい面白い研究をしているから、それを世の中の人たちに、特に若い子供たちに伝える仕事をしなさい>と言われて。
土屋:はい。
国立天文台・縣さん:僕は中学校と高校で理科の教員をしていたので、そういう伝える仕事が適任だと思ってもらえたんだと思います。
土屋:なるほど。だから広報として色んなところで伝える、と。
国立天文台・縣さん:そうなんです。
土屋:私もハワイ島に家族で行ったときに、子供がまだ小学生で上まで行けなかったんですよ。
国立天文台・縣さん:そうそう。空気が薄いんですよ。4200mの高さになりますと、海抜0mの空気の6割しかないので、体にすごく負担がかかるんですよ。特に脳が心配ですよね。
つる子:ええ。
国立天文台・縣さん:だからそういう状況になると危険なので、上がる際にも年齢制限や、体をしっかり流して途中でゆっくり休憩して上がるなど色んな条件があるんですよ。
土屋:なぜ、ハワイ島に世界から望遠鏡が集まるんですか?
国立天文台・縣さん:ほんとは東京・赤坂にあれば便利ですよね(笑)。
つる子:(笑)。
国立天文台・縣さん:天体観測が終わったら飲んだりとか、楽しそうですけど。でも、赤坂だと明るいから星がよく見えないじゃないですか。人里離れると、地上の人工の灯りが無いので、その分、星がよく見えるというのが一つですね。
土屋:ええ。
国立天文台・縣さん:それと、高い山に登ると空気が澄んで青空が綺麗なのと同じように、空気の量が減った方が星からの光がよく届くんです。
土屋:なるほど。
国立天文台・縣さん:星を見ていたら目がチラチラしてきますよね。これは地球の空気によって邪魔されているんです。
土屋:ああ、なるほど。
国立天文台・縣さん:4200mくらいまで行くと、瞬きが少なくなるので、その分、星を観測する・研究するのに適しているんですよ。
土屋:ハワイ島で見る星空は、やっぱり全然違うんですか?
国立天文台・縣さん:まったく違いますね~。
土屋:まったく違うんですか!?
つる子:降るように・・・!?
国立天文台・縣さん:降るように、また吸い込まれるように。
つる子:見てみたい!
「国立天文台」は多摩の「三鷹市」にある!
土屋:縣さんがお勤めの「国立天文台」は多摩にあるんですが、場所はどこですか?
国立天文台・縣さん:多摩の中の「三鷹市」になります。
土屋:「三鷹市」は多摩の中では都会の方ですよ?なぜ、「三鷹市」にあるんですか?
国立天文台・縣さん:私が「国立天文台」で勤務するのは25年前で、その時はすでに「三鷹」にあって。実は100年前、東京タワーの近くの麻布飯倉、いまだとロシア大使館の近く。あそこが坂になっていて、ちょっと高台になっていて。土地は狭いんですけど、昔はそこで天体観測をしてたんですよ。
つる子:へえ!
土屋:そこでも見れたということだ。
国立天文台・縣さん:大正時代の末までは。土地が狭いだけでなく、空が明るくなっちゃったから。大正3年から13年にかけて少しずつ移動し始めて。1923年に関東大震災が起こって建物や望遠鏡が壊れたので、1924年、当時の北多摩郡三鷹村に。昔の写真を見ると、まさに武蔵野ですよね、雑木林と畑。
土屋:はい。
国立天文台・縣さん:多摩に「国分寺崖線」があって、「国分寺」、「府中」、「調布」の方から下っていて丘になっていますよね。天文台の台は台地の台なので、ちょうど高台で、一番都心に近くて便利だということで。当時は農村地帯でほとんど人も住んでいなかったので。そこに移ってきたのが100年前。
土屋:「国分寺崖線」の高台に移ってきた、と。つる子さん、「国立天文台」はけっこう広いんですよ。いろんな施設があって、カミオカンデの施設とか。
国立天文台・縣さん:おっしゃるとおり。“TAMA300”というんです。300m x300mの真空の管が地下に、東西と南北の直角に走っていて。そこに、レーザー光線を飛ばすんですけど、捉えた時に何十回、何百回と往復させて、一緒に戻ってくるんですよ。
つる子:へえ。
国立天文台・縣さん:それが、ごくごくわずかにズレちゃう。それは地震みたいに地面が揺れたか、空間そのものが歪んだ、時空の歪み=重力波というんですが、これを捉える試験機なんです。それを今、岐阜県の神岡鉱山のカミオカンデがある所のすぐ近く、“KAGRA”という3kmx3kmの重力波望遠鏡が運営されていて。
土屋:はい。
国立天文台・縣さん:時空が歪むというのはどういうことかというと、特別のことが宇宙で起こるとブラックホール同士が合体するとか、超新星大爆発とか、宇宙の誕生のビッグバンみたいなのを重力波望遠鏡では捉えられるんですね。そういう新しいことが色々と発見できるんですよ。そういう最新の研究にもチャレンジしているんです。
土屋:“KAGRA”よりは規模は小さいけど、同じ研究が多摩でも行われているんだって興奮しましたよ!
国立天文台・縣さん:多摩で実験して、使える状態にして大きくして置いているので。日本の重力波の原点は多摩!しかも、名前も“TAMA300”!
土屋:そういう施設もあるので、けっこう広いですよね。どれくらいの大きさなんですか?
国立天文台・縣さん:26万㎡という広さです。
つる子:すごい!
土屋:昔の天文台もあったりと、歴史的な所でもありますよね?
国立天文台・縣さん:そうですね。お正月の三が日は休みですけど、それ以外は施設を公開しています。緑に囲まれて自由に散策できるので楽しいですよ。古い大きな望遠鏡や可愛らしい望遠鏡など色々とあるので、ぜひ、遊びに来て欲しいですね。
つる子:天文台だけど、かなり広くて自然も豊かで。一日かけて遊べる感じなんですね。
土屋:で、施設を説明してくれる人がオタクで面白いの!1つ質問すると200返ってくる、いや多摩は“300”返ってくる!それくらい、どんな質問にもわかりやすく説明してくれて。面白い時間でしたねえ。
国立天文台・縣さん:佐藤さんですね(笑)。
土屋:そうそう!佐藤さんの話は面白かった!
国立天文台・縣さん:終わらないですよね(笑)。
多摩の星空でも「オリオン座」「北斗七星」が見える!
土屋:今日の放送を聴いて、私が住んでいる多摩地域でも星空が見えるのかと、みなさん思うと思うんですけど、全然見えますよね?
国立天文台・縣さん:実は・・・東京・多摩地域に住んでいるみなさん、<星が見えない、、、>とお嘆きの方も多いと思うんですよ。ご年配の方に聞くと、<昔は天の川が見えた>と言うんですね。50年暗い前の話ですね。今、もちろん、天の川を見るのは大変なんですけど、見るコツがあるんですよ。
土屋:はいはい。
国立天文台・縣さん:みなさんのお家や街中でも見る方法があって。地上の明るい光が入らないように工夫しましょう。街灯やネオンサイン、車のヘッドライトなどの光が目に入ってこないように、帽子を被るとか、そっちの方向を向かないなど避けて。
土屋:自分自身の目から見て光が無いようにする、と。
国立天文台・縣さん:そうです。暗い物を認識するのに、だいたい10分くらいかかるんです。夜、眠れない時に部屋の電気を消す時は真っ暗だけど、だんだん目が冴えてくると言いますよね。周りの様子が見えてきますよね?
つる子:はい、見えてきます!
国立天文台・縣さん:10分から15分かかるんですよ。明るい光を入れないようにしていると、目の瞳孔がだんだん大きくなってきて、暗い物も目でキャッチできるようになってくるんですよ。そうすると、東京で晴れていれば、一等星までは見えるんですよ。明るい方から一等星、二等星、三等星ですね。
土屋:金星とか・・・?
国立天文台・縣さん:金星はマイナス4.7等星くらいまで行くんですよ!
つる子:おお!
土屋:金星そんな明るいんですか!?
国立天文台・縣さん:例えば、オリオン座がありますね。あれは一等星の星があるからわかりやすいですね。オリオン座は一等星が2つに、あとは二等星だから東京でも見えるんですよ。
つる子:そうなんですね!
国立天文台・縣さん:他には、北斗七星。これもほぼ見えます。それが国立天文台のように緑に囲まれているとか、みなさんのお近くで夜でも入れる公園、川べりなど、とにかく周りの光が来ない所に行って空を見ると、最近は東京の空が澄んできているので、三等星まで見えるんです。
土屋:そうですか!
国立天文台・縣さん:頑張って四等星までいけば、多摩の星空に天の川が復活するですよ、もうひと頑張りなんですよね。・・・まあまあ、もうふた頑張りかな(笑)。
つる子:(笑)。
土屋:いきなり空を見上げるのではなく、まずは夜空に目を慣らすようにすることが重要なんですね。
国立天文台・縣さん:途中でもし、車のヘッドライトやスマホの光を見た場合はもうダメですよ。我慢して、10分から15分、空だけを見ている!そしたら星が次々と見えてきますよ。これでぜひ、見て欲しいですね。
土屋:まだ全然宇宙の話に届いていないので。来週は多摩地域で星や宇宙について学べる施設の話など伺えればと思います。今週のゲストは、「国立天文台」の縣秀彦さんでした!ありがとうございました、来週もお願いします!
国立天文台・縣さん:お願いします。
(TBSラジオ『東京042~多摩もりあげ宣言~』より抜粋)