建設現場の新たな熱中症対策 矢作建設工業、オリジナルのファン付きジャケット開発で就労環境改善
職場における熱中症の重篤化を防ぐため、厚生労働省は6月に改正労働安全衛生規則を施行。企業に対して罰則付きで熱中症対策が義務化された。熱中症は死亡災害に至る割合がほかの労働災害の約5、6倍で、死亡者の約7割が屋外作業とされている。
矢作建設工業(愛知県名古屋市)は7月17日、建設現場の負担軽減のため、オリジナルのファン付きジャケットを開発したことを発表した。同社によると首元の温度を低下させる効果が確認できたという。
現場の負担軽減と安全性・快適性の両立を実現
ユニフォーム制作会社と綿密な協議を重ねて、既製品ではない独自のファンジャケットを開発。現場職員の身体的な負担軽減とともに、快適性向上をはかった。
同社の計測では、新型ジャケット装着時の方が首元の温度が2、3度低い結果が出ている。背中の部分に入れた保冷剤からの冷たい空気や水蒸気を首元に送ることで、効果的に体温の上昇を抑えられるという。また、エアパッドを付けることで、良好な風通しを確保。高所作業時の着用が義務付けられているフルハーネスと肩の摩擦も軽減した。
フルハーネスはジャケット上からの着用に仕様変更し着脱簡素化
今回のリニューアルでは、着脱の簡素化にも取り組んだ。建設現場では、高所作業時の安全のため、フルハーネスの着用が義務付けられているが、重さがあり身体的負担が大きい。従来のハーネスは、ファン付きジャケットの中に着用する必要があるため、必要時以外は外すようにしていたが、着脱が煩雑だった。
新型では、ファンジャケットの上からフルハーネスが着用できる仕様に変更した。フルハーネス自体も約30%軽量化し、女性やシニア社員を含む現場職員の身体的負担を軽減。業務効率と働きやすさの向上をはかっている。
同社はこれまでも、現場職員の就労環境改善と熱中症対策の強化に積極的に取り組んできた。2021年には熱中症対策として、オリジナルのハーフパンツを導入。インナーパンツと組み合わせて使用することで、安全性と通気性を確保し、機能性も向上したとしている。2024年に導入したヘルメットでは約20%の軽量化を実現した。
ユニフォームで熱中症対策、ファン付きジャケット購入で補助金も
企業側が従業員の熱中症対策として、従業員のユニフォームや制服に工夫をこらすことで対応するケースが増えている。月刊総務オンラインでも、ヤマト運輸やイオンネクストデリバリーの取り組みを紹介している。総合建設業の荒木組は、従業員の熱中症対策としてウエアラブルデバイスを導入した。
また、ファン付きジャケットの導入で申請できる補助金として「エイジフレンドリー補助金」がある。60歳以上の労災防止を目的としており、「職場環境改善コース(熱中症予防対策プラン)」では上限100万円まで補助される。
発表の詳細は同社公式リリースにて確認でき、「エイジフレンドリー補助金」については厚生労働省のウェブサイトで確認できる。