「法隆寺」が世界遺産に登録された4つの理由
法隆寺は文化財の宝庫
法隆寺、通称「斑鳩寺(いかるがでら)」は、奈良県生駒郡斑鳩町に位置している。
現存する世界最古の木造建築群を誇り、歴史的に非常に重要な史跡である。1993年には「法隆寺地域の仏教建造物」の一部として、日本で最初の世界文化遺産に登録された。
法隆寺は、聖徳宗の総本山の寺院である。
第二次世界大戦終戦頃までは、法相宗の大本山の一つであったが、終戦後の1950年に法相宗から離脱し、法隆寺といくつかの寺院で聖徳宗を創設した。1952年には正式に宗派として認可を受け、現在に至る。
聖徳宗は現在、門跡寺院中宮寺、本山法輪寺、法起寺など、聖徳太子ゆかりの大小約30の寺院で構成されている。
今回は、聖徳太子にゆかりの深い法隆寺がどのような文化財を有しているのか、そしてなぜ世界遺産に登録されたのかについて詳しく探ってみたい。
法隆寺概要
法隆寺の境内は東京ドームにして約4つ分、約18万7千平方メートルの広さを持つ。
「法隆寺式伽藍配置」と呼ばれる法隆寺の伽藍(がらん)は、東大門を境として西院と東院にわかれている特徴がある。
伽藍とは、僧侶が集まって修行したりしていた場所を意味し、寺院や寺院を構成する主要な建物をいう。
法隆寺の西院は、聖徳太子が建立した当初(607年)の伽藍で構成されている。(※ただし『日本書紀』には670年に一度焼失し再建されたと見られる記述があり、長く論争となっている)
一方、東院の場所は、法隆寺建立前に聖徳太子が造営して移り住んだ「斑鳩宮」があった地であり、聖徳太子が亡くなった後、彼の供養のために建立された伽藍群が存在する。
このように、伽藍の建立目的の違いなどから、法隆寺の寺機能としての中枢は西院の伽藍が担っているといえる。
西院には、国宝に指定されている金堂と五重塔が並び立ち、その北側には国宝の大講堂、南側には国宝の中門が配置されている。これらの建物は国宝の回廊に囲まれ、まさに「国宝の宝庫」と呼ぶにふさわしい配置となっている。
法隆寺に現存する国宝や重要文化財はこれだけに留まらず、建物だけでも55棟が国宝として指定されている。
さらに多数の仏像や美術品が保管されており、国宝だけでも150点、重要文化財も合わせると、3104点に及ぶのだ。
法隆寺が世界遺産に登録された理由
日本が世界遺産条約に批准した後、国内で最初に世界遺産に登録されたものの一つが法隆寺である。
世界遺産に登録されるためには、まず国がユネスコに推薦状を提出し、その後、ユネスコが「世界遺産条約履行のための作業指針」で定められた10項目の基準に照らして現地調査を実施する。この調査結果を基に、専門機関が審議を行い、最終的に世界遺産委員会で審議・決議が行われたうえで登録が決定されるのだ。
全部で10項目ある基準のうち、「文化遺産」に適する基準は6つある。
法隆寺はその基準のうち、4つの項目を満たしていると判断され、登録に至ったのである。
1つ目は、法隆寺の建築物としての価値である。
法隆寺の伽藍は、各々の建物だけでなく、金堂と五重塔との配置バランスが取れるように回廊が絶妙に計算されて配置されていることなど、卓越した寺院設計とその美しさが評価された。
2つ目は、日本における初期仏教の建造物としての価値である。
法隆寺は、飛鳥時代以降の日本仏教建築に多大な影響を与えた寺院であり、その建築様式は後に続く多くの古刹の手本となった。
3つ目は、法隆寺が隋時代の文化を現在に伝える唯一の建物であるという点である。
法隆寺が建立された推古天皇の時代は、中国の隋王朝が存在していた時期であり、遣隋使を通じて隋からもたらされた技術や知識が日本の文化発展に寄与した。しかし、隋の時代は短かったこともあり、次の唐の文化が遣唐使により入ってきたことで、現存する飛鳥時代以降の建物には、唐の文化が見られるようになる。
これにより現存する古刹で、唯一唐の文化の影響を受けていない法隆寺の評価が高まったのである。
4つ目は、日本における仏教奨励の政策との関連である。
仏教が日本に伝来した当初、神道を中心としたヤマト王権内で仏教受容の是非を巡り、豪族間で激しい対立があった。
蘇我氏がこの争いに勝利し、仏教が国策として推奨されるようになった結果、法隆寺を含む多くの寺院が建立され、日本における仏教の普及が促進された。この歴史的背景も、法隆寺の世界遺産登録に大きく寄与した。
最後に
法隆寺はその歴史的、建築的価値だけでなく、日本仏教の発展における中心的な役割を果たしてきたことから、世界遺産としての認定を受けるに至った。
法隆寺の文化遺産としての重要性は、今後も大切に保護され、未来へと伝えられていくべきものである。法隆寺を訪れることで、日本の歴史と文化の深遠な一端を感じ取ることができるだろう。
参考文献
・ビジュアル百科写真と図解でわかる!天皇〈125代〉の歴史 西東社
・いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編 東洋経済新報社
文 / 草の実堂編集部
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