肉刺し、焼肉、すき焼きまで圧巻のコースに唸る!肉師監修の肉割烹が誕生【福岡市・桜坂】
職人の所作や調理中の音、香りまでも余すことなく楽しめる場所といえば、やっぱりカウンター席。寿司、天ぷら、焼肉など、美食を堪能できる魅惑のカウンターは数あれど、今回ご紹介するのは、すき焼きを主役にしたカウンター肉割烹です。
「カウンターでかしこまりすぎないのがいいし、すき焼きにしてはお値段も手頃」「すき焼きだけじゃなくて焼肉やしゃぶしゃぶもあるよ。何より肉の質がいい!」そんな噂を聞きつけてやって来たのは、地下鉄七隈線桜坂駅の側にある黒い建物「VITA桜坂」。ここは「欧風料理 典」や日本料理店「桜坂 凡事 つく田」など、飲食店が数軒入居するテナントビルで、お目当ての肉割烹「すき焼き ほほほ」は2階にあります。
2024年2月29日にオープンした真新しい空間は、会食やデートにも似合うシックで高級感のある雰囲気。店内の中心には、火元が埋め込まれたカウンターが鎮座しています。
肉の仕入れや手当て(※)、調理に関するまで、肉割烹全体の監修を行うのは“肉師”である仁田篤志さん(写真左)。仁田さんは、九州中の食肉が集まる「福岡市食肉市場」の子会社「福岡食肉販売」をはじめとした食肉業界で15年のキャリアを持ち、肉の目利きや加工、卸売販売といった仕事に携わってきたベテランです。また、肉を焼いたり、割下を入れたりといった給仕は、女将の本田優子さん(右)をはじめとした専任のスタッフが担当。ソムリエの本村正則さん(中央)も在籍しているのでお酒の提案もお任せでき、至れり尽くせりの一軒となっています。
※手当て=水分調整や熟成など、肉の個性や状態に合わせて下処理を施すこと
メニューはコース料理(10000円〜)が主体ですが、すき焼き・焼肉・しゃぶしゃぶを気軽に味わえるセット(各7000円)やコース料理に追加して楽しめるアラカルト料理も多数用意。今回は自慢の逸品をしっかりと味わうべく、肉刺し、焼肉にすき焼きまで付いた全12品の「ほほほ 肉割烹コース」(13000円)をいただきました。最初に本日の突き出しとして「牛ヒレ肉のおでん」が供され、続いて前菜の肉刺しが登場。部位は仕入れによって変わりますが、この日はきめ細かく柔らかい鹿児島黒牛のサーロインとタン、丁寧に下処理を施した白センマイ刺しで、質の良さが目からも伝わります。
前菜は肉刺しだけで十分満足……と思いきや、なんともう一品「和牛ユッケのブルスケッタ」が登場しました。「すき焼き ほほほ」は、厳しい基準をクリアした生食用食肉の提供許可店なので、こちらは正真正銘の生ユッケ。カウンター上のロースターでバゲットを網焼きにし、そこへサッと混ぜ合わせた和牛ユッケをのせて味わいます。和牛のねっとりとした旨味に甘辛いタレ、佐賀県「上田養鶏場」の濃厚な卵黄が絡み、有明海苔の佃煮もいいアクセントに。これは最高すぎる〜!
前菜が終わったらお次は焼肉。肉師厳選の部位3種が1人1枚ずつ提供されます。この日は、脂がのった牛タンの最高部位「タン元」、牛タンの一番喉に近い部位「タンカルビ」、赤身とサシのバランスが良い「ヒレ」をいただきました。例えばヒレはステーキのように厚くカットするなど、その部位が最もおいしく味わえるよう切り出し方も計算されています。女将が1枚ずつ丁寧に焼いてくれるので、ベストな状態を逃すこともありません。
7品目に糸島産を中心とした「旬菜のサラダ」、8品目には本日の温物として「雲丹と牛ほほ肉の茶碗蒸し」が登場し、いよいよお待ちかねのすき焼きパートへ突入! すき焼きでは2つの部位を食べ比べることができ、この日の特選和牛は唐津市「佐賀牛宮崎牧場」のサーロインと畜産家の深見さんが育てているという壱岐牛のリブロースでした。肉は状態や質を目利きして塊で仕入れ、余分な脂や筋を取り除く“磨き”の作業を行い、部位によっては熟成加減も調整。それを客席へ運んでプレゼンテーションし、目の前で提供分をスライスしていきます。
すき焼きのセットがすべて揃うとご覧の通り(写真の肉と野菜は2人前)。特選和牛は1人につきサーロイン1枚、リブロース3枚が提供されるのですが、随分と盤が大きく迫力があります。「A5ではなく、あえて脂がくどすぎないA4ランクの雌牛に限定して仕入れを行っています。雌牛は融点が低いので脂が溶けやすく、肉質がきめ細やかなので舌触りが本当に滑らかなんですよ」と仁田さん。さぁ早速、女将にすき焼きを作っていただきましょう。
まずはサーロインを鍋で焼き、糸島「北伊醤油」の濃口醤油と熊本の赤酒をベースに作った割下をサッと回しかけたら溶き卵の中へ。仁田さんのいう通り舌触りが本当に柔らかく滑らかで、甘くジューシーな肉汁が口いっぱいに溢れ出します。さらに割下を足して野菜や豆腐を煮込んだら、今度はリブロースを投入。こちらも肉の旨味が濃く脂は甘く、割下のコクも相まって堪えられないおいしさです。味が染みた肉厚な椎茸や長ネギといった野菜も格別で、途中で出されたご飯と共に夢中で食べ尽くしてしまいました。また、お肉をたくさん食べたいという方は、1枚単位で追加もできるそうですよ。
コースはこの後、シメに冷たい阿波半田手延べそうめんとデザートが出て終了。これほど質の良い肉三昧を堪能できて13000円とは、いやはや恐れ入りました。
「九州各地の生産者さんから市場を通じて託された黒毛和牛を、お客様に届ける架け橋でありたいと思っています。美しい味わい“美味しさ”を追求していきます」と仁田さんは笑顔で話します。おいしいお肉をとことん味わいたい! そんな時は、ぜひ出かけてみてください。
すき焼き ほほほ
福岡市中央区桜坂3丁目8−40
092-600-2909