ゴールデンウィークの新定番「高槻ジャズストリート」。市民が支える街ぐるみの音楽イベントの魅力をご紹介
大阪と京都のまん中という好立地にあって、JRと阪急電鉄が通り、車利用者には名神高速道路インターチェンジも近い交通アクセスの便利な街、大阪府高槻市。都市近郊にありながら、住民同士のつながりが強い庶民的な気質も残っているとも言われています。そんな街の性格が、通勤・通学がしやすいなどの便利さだけでは語れない住み心地の良さにもつながり、過去には「これまでに住んでよかった街ランキング」で第2位にランクインしたこともあります。(LIFULL調べ)
そんな高槻市では、毎年ゴールデンウィークに、市内外から多くの人が集まるイベントが開催されています。それが、2025年で27回目を迎えた「高槻ジャズストリート」。いまでは高槻市の名物として定着しているこのイベントの魅力を実際に行ってきた私が紹介します。
高槻ジャズストリートの特徴とは? 街中で、だれもが無料で楽しめる音楽イベントを、ボランティアで。
高槻ジャズストリートの歴史は1999年にはじまります。以来、コロナ禍で中止になった2年間をのぞき、毎年ゴールデンウィークの2日間に開催をつづけ、2025年で27回目を迎えました。高槻ジャズストリートが生まれた経緯を実行委員会チェアマンの大田大地さんに聞いてみました。
「かつては、特にゴールデンウィーク期になると、駅前は閑散としていました。多くの住民が休みの日には、京都や大阪方面に出かけるので、高槻駅周辺の商店や商業施設には人が来ない。こんな現状を見て、これでは街の発展はないと感じた最初の仲間が、それでは私たちの手で、人を集めてみよう、にぎわいを取り戻してみようと動き始めたのがはじまりでした。つまり、まちづくりが原点です」(大田さん)
そんな思いを持った仲間のなかに、ジャズベーシストもおり、イベントの中身はジャズをはじめとする音楽イベントとすることに決まったといいます。「高槻ににぎわいを取り戻したい」。そんな少数の市民の願いが人と人を結び、やがて大きな力となって実現した高槻ジャズストリート。職業も年齢もさまざまな実行委員会やボランティアによって、高槻が好きで街を盛り上げたいという願いで現在まで続けられています。
ジャズを中心にさまざまなジャンルの音楽を楽しむことができる高槻ジャズストリートには、どんな特徴があるのでしょうか?
「高槻ジャズの特徴は3つあります。ひとつめは、ボランティアによる企画、運営であることです。次に、誰もが自由に音楽を楽しめる場でありたいという理念のもと、来場者から入場料を取らない無料イベントであること。3つめが、街全体をステージとしていることです。今年は50ヶ所の会場を設けました」(大田さん)
かつては10万人を超える来場者を集め、今年も公式には7万人の来場者を迎えた。関西だけでなく全国的に知られた高槻ジャズストリートは、市民や大学のサークルなどを中心とする1,000人以上のボランティアによって企画から運営まで行われています。地元高槻を愛するわずか数人の発想で、街を盛り上げようと始まってから、その精神は受け継がれ続けています。
会場は、JR高槻駅や阪急高槻市駅の駅前広場や高架下だけでなく、飲食店、公園や川沿いの野外ステージ、小学校や中学校のグラウンド、あるいはホール会場もあり、これらすべての会場で、訪れる誰もが音楽を無料で楽しめるのが魅力。
また阪急高槻市駅から南に徒歩10分強にある高槻城公園では、音楽ステージに加えてフリーマーケットが開催され、音楽以外のイベントを楽しみに来場する人も多いのだとか。
会場間の道中には、商店街やキリシタン大名高山右近が城主をつとめた高槻城跡、高山右近記念聖堂があるカトリック高槻教会もあります。来場者は目当ての会場を探しながら街を歩いて回るため、音楽を楽しむだけではなく、高槻の街や歴史とも自然に触れ合うことができます。JR高槻駅前も阪急高槻市駅前もフラットな立地で、子どもや高齢の方にも歩きやすく、音楽をはしごしながら休日の街歩きにうってつけでしょう。
高槻ジャズストリートに行ってみた
高槻ジャズストリートの魅力(1)多くの人が足を運ぶ、ゴールデンウィークの名物
2025年5月3日、ゴールデンウィークにふさわしい好天の下、高槻ジャズストリートに行ってみました。阪急高槻市駅についたのは午前11時ごろ。3階のホームから、改札がある2階へおりると、かすかに音楽が聞こえてきます。改札を出て1階におりたところで、高槻ジャズストリートのボランティアスタッフらが公式ガイドブックを配布していました。情報は公式サイトにも掲載されていますが、人の多さに吸い寄せられて立ち寄ってみた人にも、ガイドブックは便利な案内役になってくれます。
改札でかすかに聞こえていた音楽は、阪急高槻市駅 駅前広場会場からのようです。高槻ジャズストリートは街中で音楽が聴けるイベントですが、駅前の会場でも大音量が響く印象はありませんでした。また複数の会場の音が入り乱れているわけでもなく、快適に音楽を楽しむことができます。駅前広場は1組目が午前10時に演奏をスタートしており、私が着いた午前11時すぎには、すでに観客があふれていました。
高槻ジャズストリートの魅力(2) 街歩きもイベントの醍醐味
阪急高槻市駅からJR高槻駅は、北へ歩いて約10分程度の距離にあり、その間には複数の商店街が広がっています。また、阪急高槻市駅から南側にも商店街があります。こうして商店街を歩くことも高槻ジャズストリートを訪れる人たちの楽しみの一つにもなっているようです。
街中で高槻ジャズストリートのボランティアスタッフがTシャツ販売をしていたり、飲食店の店先では串カツなど食べ歩き用の軽食や、ビール、ソフトドリンクが売られていたりで、音楽とは関係なく街歩きだけでも楽しめます。商店街は多くの人でにぎわっていて、店先のスタッフも、練り歩く人たちも、このお祭りを楽しんでいました。
高槻ジャズストリートの魅力(3) 子どもから高齢者、市内外の人も、誰もが楽しみやすい
阪急高槻市駅から一度南下して、複数の会場に行き、また同駅に戻ったため、だいぶ歩きましたが、フラットな立地だったので歩きやすかったです。また、途中に会場が点在していて音楽を聴くために立ち止まる時間もあるため、歩きまわるといっても、子どもや高齢者にも負担は少ないでしょう。
阪急高槻市駅からJR高槻駅へ北上し歩く場合も同様にフラットで、こうした歩きやすい地勢に恵まれていることも、高槻ジャズストリートが幅広い年代に受け入れられ、長く続く一つの要因になっているかもしれません。
印象的だったのは、松坂屋高槻店 屋上のステージ。ステージ横には小さな屋上遊園があり、カートを楽しむ子どもの姿。ステージをはさんで反対隣りでは、小さなビアガーデン。昭和に見た懐かしい光景が残っており、大人も子どもも、音楽好きもそうでない人も、思い思いの時間を過ごす時空間に驚きました。
帰りの駅のホームや電車内では、高槻ジャズストリートの公式ガイドブックを手にした人が多く目にとまりました。電車で来た多くの人は、高槻市外からの来場者です。
そういえば、高槻の商店街に昼食をとりに入った店内で、こんな会話を耳にしました。
「高槻ジャズストリートって、大阪だけじゃなくて全国的に有名らしいよ」
会話の様子からは市内もしくは近隣から、高槻ジャズストリートに来た人たちのようでした。市民の手づくりではじまったイベントが長年多くの人を集客し、その継続力によって広く認知されていることがうかがえます。
自分たちでイベントを、街をつくる。高槻市の魅力
「高槻といえばジャズストリート」と連想する人もいるほど、広く知られるようになったこのイベント。五月晴れの空の下ではミュージシャン、観客、スタッフ、お店の人問わず、笑顔がいっぱいでした。
利便性も高く、人も集まりやすい立地にあり、ひとつになってまちづくりに携わる楽しさにあふれた高槻市。
新しい課題に直面しながらも、市民の結束によって解決を図りながら、高槻ジャズストリートは続けられてきました。他に類を見ない規模の手づくり音楽イベントは、市民によるこれからのまちづくりの姿を示していると感じました。
「人と人がつながりにぎわいを取り戻すという理念を大切に、この先もずっと続けていきたい。それが夢です」
最後にチェアマン大田さんは語ってくれました。
人を集め、にぎわいを創り、街に活力を生む。そこには、賛否もうまれ、資金面での課題に直面することもありうるでしょう。そういったことも含めて、人と人がつながり、対話を重ねる過程を味わえるまちづくりに参加してみるのも楽しいかもしれません。
この記事では画像に一部PIXTA提供画像を使用しています。