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【倉敷市】なんば農園 ~ ふるさと玉島八島地区の原風景を未来へ。若き三代目園主の挑戦

倉敷とことこ

なんば農園 ~ ふるさと玉島八島地区の原風景を未来へ。若き三代目園主の挑戦

倉敷市玉島エリアは、フルーツ王国岡山でも特に果樹栽培が盛んな地域のひとつです。

新倉敷駅の北西部に位置する八島(やしま)地区は、古くからの桃の産地で、春になると山の斜面を桃の花が一面ピンク色に染めます。

銀行員から脱サラして飛び込んだ家業に奮闘する「なんば農園」代表の、若手生産者ならではの新しい取り組みを取材しました。

なんば農園の紹介

なんば農園の歴史は今から60年以上前に、現園主のおじいさんが倉敷市玉島八島地区にて始めた桃栽培から始まりました。以来、糖度にこだわった桃作りを続けています。

そして2019年に家業を引き継いだのが、創業者の孫で三代目園主の難波頌治(なんば しょうじ)さん。

大学卒業後、6年間銀行員として勤めたのちに脱サラし、農業の世界に飛び込みました

家業を引き継いで以降は、桃の栽培だけではなくレモンなどの栽培にも取り組み、通信販売による直販、各地で開催されるマルシェへの出店・販売も精力的におこなっています。

2024年にアリオ倉敷で開催された「がんばれ!未来の老舗展」販売風景

現在は難波さんとご両親の3人で、約1ヘクタール(約100m四方)の桃畑に6品種、約20アール(約45m四方)のレモン畑に3品種を栽培しています。

栽培している果樹について

なんば農園では以下の果樹および品種を栽培しています。

白桃(画像提供:なんば農園)

桃は極早生(ごくわせ)から晩生(おくて)までの5品種と、年末にかけて出荷される冬桃の計6品種を作っています。

極早生(ごくわせ)
開花から収穫までの期間がとても短い品種

早生(わせ)
開花から収穫までの期間が短い品種

晩生(おくて)
開花から収穫までの期間が長い品種

桃の収穫は(冬桃を除き)6月から8月にかけて続きます。

レモン

収穫したばかりのレモン(画像提供:なんば農園)

レモンは3品種を栽培しています。

レモンの収穫は秋から翌春までの長期間にわたり続きます。

果樹加工品の紹介

左から、レモネード、白桃ネクター、白桃のあまざけ

桃やレモンを栽培していると、そのままでは商品として販売できない規格外品が発生します。

なんば農園ではそれらを有効活用するためにも、白桃のあまざけをはじめとした加工品の商品開発にも力を入れています。

なんば農園 三代目園主の難波頌治さんに、果樹栽培へのこだわりや商品開発、今後新たにやってみたいことなどを聞きました。

代々の家業に新しい風を 〜 三代目園主 難波頌治さんインタビュー

なんば農園代表 難波頌治(なんば しょうじ)さん

なんば農園 三代目園主の難波頌治(なんば しょうじ)さんに、家業を引き継いだ経緯から今までのあゆみ、これから挑戦していきたいことについてインタビューしました。

──家業を引き継いだ経緯について教えてください

難波(敬称略)──

銀行員時代に、業務を通じて融資先の経営者と仕事(営業やコンサルティング)をしていくなかで、経営者に対して漠然とした憧れを抱くようになりました。

いつか起業して自分で商売をしたいなと思っていたところ、ふと頭に浮かんだのが実家で作っている桃でした。

その後、試験的に桃のネット販売を始めたら想像よりも大きい反響をいただき、これなら商売としてやっていけると感じ、思い切って脱サラしました。

──元々家業を継いでいくつもりはありましたか

難波──

小さい頃、農園の手伝いはよくしていたんですけど、元々継ぐことは考えていなかったです。父親も会社員の傍ら、兼業で桃農家をやっていたので、専業でするほどの規模ではないと思っていました。

──栽培するうえでのこだわりについて教えてください

難波──

桃に関していえば、糖度(甘さ)にこだわった栽培をしています。

たとえば水やりについても、当農園ではあえて水やりを控えることで味を凝縮させるようにしています。
しかし、水やりを控えると小玉になってしまうのが難点です。

小玉の桃は、農協に出荷すると値段が下がってしまうこと、見た目や形や大きさよりも味で勝負するためにも当園では直販をしています。

また、直販をしているとお客さんの声を直接聞けるのもメリットです。

作業のようす(画像提供:なんば農園)

肥料に関しては、有機質堆肥系を中心に、最近では環境への配慮と肥料代の節約を考慮して、家庭で出る生ごみを堆肥化して利用することにも取り組んでいます。
また、化学肥料も使用するものの、当農園で使用する量は農協の定める基準量に比べてかなり少ないです。

農薬についても、体に優しく安心して食べていただけるように配慮して減農薬(農協の定める基準値の半分以下)で栽培しています。
その理由のひとつとして、畑自体が斜面にある段々畑なので、農薬や除草剤を散布するのが物理的に難しいためです。

レモンについても桃と同様の栽培方法で、味にこだわった栽培をしています。

──一押しの商品について教えてください

難波──

やはり桃が旬の季節(夏)には、獲れたてのフレッシュな桃を楽しんでいただきたいです。

収穫したての桃(画像提供:なんば農園)

そのなかでも、7月下旬に出荷される最高級品種の清水白桃は当園の自信作なので、ぜひ多くのかたに味わっていただきたいですね。

白桃のあまざけ(画像提供:なんば農園)

あと、6次産業化のひとつとして作っている白桃のあまざけですね。あまざけはスポーツドリンク同様に飲む点滴といわれていて、暑い季節にとても人気があります。

6次産業化

生産者が生産(1次産業)だけでなく、加工(2次産業)や販売(3次産業)までを一体的におこなうこと。地域資源を活用し新たな付加価値を生み出す取り組み。1次産業×2次産業×3次産業=6次産業、とかけあわせた言葉

甘さ控えめでとても飲みやすい、すっきりした味わいのあまざけなので、夏に旬を迎える桃と一緒に楽しんでいただきたいですね。

また、2025年3月4日(火)に放送の日本テレビ系情報番組「ヒルナンデス!」にて白桃のあまざけが紹介され、ありがたいことに爆発的な反響がありました。在庫も残り少なくなってきていますが、多くのかたに味わっていただければと思います。

──果樹栽培をするうえで大変なことは

難波──

桃の収穫は暑い夏の時季におこなうので、毎年暑さとの戦いですね。

作業のようす(画像提供:なんば農園)

どのくらい過酷かというと、シーズンの前後で体重が5~6キロぐらい痩せるほど。そういう過酷な状況で、当園に限らずすべての桃農家は頑張っています。

私は元々野球をやっていたので暑さには自信がありますが、最近の猛暑は尋常(じんじょう)でないので、その暑さに慣れて耐え抜くことはとても忍耐が必要です。

あと、果樹栽培に限らすどの作物にも共通しているのは、頑張ったからといっていいものができるわけではないということですね。その年の天気や天候によって果樹の出来も変わってきますので。

それでも、お客さんから「おいしかった」と喜んでもらえるとすごくうれしいです。その一言で今までの苦労が全部吹っ飛びますよね。

──商品開発に際してヒントにしていることは

難波──

加工品の商品開発について、はじめは正直難しかったです。

農園で収穫したレモンを使ったレモネード(画像提供:なんば農園)

なんとなく飲み物系の商品を作ろうと思っていたのですけど、どんな飲み物を作れば良いのかを考えるのが難しかったですね。

たとえば白桃のあまざけを作り始めたのも、妊娠中にあまざけが飲みたいといった妻の一言がきっかけでした。桃が入ったあまざけとか面白いなって。

そういう何気ない日常に思わぬヒントが転がっているので、そういったものを大事にしながらお客さんのニーズに合った商品を開発できればと思っています。

──今後挑戦していきたいことは、ありますか

難波──

近年、さまざまな理由で離農していく桃農家さんも多いので、ふるさとの桃畑を守るという意味でも、少しずつ耕作放棄地を引き受けながら桃の栽培面積を増やしていこうと思っています。

新しく植えられた桃の若木

また、レモンをはじめとした柑橘(かんきつ)類は、まだまだ将来性があると思っています。
レモン以外にもみかん、香酸柑橘(こうさんかんきつ)と呼ばれるゆずすだちを新たに栽培しています。

ゆずに関しては今年初めてシロップを作り、ゆずスカッシュにしてマルシェに出品したところ、良い反響をいただきました。
すだちも同様に、果汁からシロップを作り、すだちスカッシュにしてマルシェに出品することを考えています。

柑橘類は桃に比べて管理もしやすく、収穫期間も長いこともあり、これからの柱のひとつにしていきたいです。

イベントではレモンの詰め放題も

レモンは広島、すだちは徳島、ゆずは高知と近県に主要な産地があるなかで、当園では桃栽培で得たノウハウを応用し、プライドを持ってより品質の良い果樹を作っていきたいと思っています。

おわりに

難波さんのお話を聞いていると、偶然のような必然で今のお仕事にありついているように感じました。

その原点となっているのは、離農していく桃畑を引き継ぎ、ふるさとの風景を守りたいという強い思い。

そして、桃以外にもレモンをはじめとする柑橘類栽培へのチャレンジ、6次産業化をねらった商品開発、どのエピソードも取ってもそこにはさまざまなドラマがありました。

特に「頑張ったからといっていいものができるわけではない」という言葉からは、常に挑戦していく必要があると感じました。

また、なんば農園ではそれらの挑戦を継続していくためにクラウドファンディングにも積極的に挑戦しています。

革靴を長靴に履き替え、銀行員時代の経験を生かした経営の視点を持ち、若手生産者ならではの柔軟な発想による次なる一手を、これからも楽しみにしています。

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