ラミン・カリムルーが城田優・新妻聖子ら豪華な仲間たちとプレミアムコンサート『The Reunion』を開催【公演レポート】
世界的な人気を誇る俳優のラミン・カリムルーが、親交のあるスターたちと共に贈るプレミアムコンサート『The Reunion』を、2024年8月13日(火)から14日(水)にかけて、東京・サントリーホール 大ホールで開催した。以下、その模様をレポート形式でお届けする。
■ラミンが仲間たちとの再会を祝したプレミアムショー
2007年に『オペラ座の怪人』のファントム役を史上最年少の28歳で射止めて以来、続編『ラブ・ネバー・ダイ』や『オペラ座の怪人25周年記念公演』さらには2023年、イタリア初演の『オペラ座の怪人』でもファントム役を演じて話題を呼んだラミン・カリムルー。彼はまた、2010年の『レ・ミゼラブル25周年記念公演』でのアンジョルラス役を経て、『レ・ミゼラブル』のウエストエンド公演(2011年~12年)およびブロードウェイ公演(2014年~2015年)におけるジャン・バルジャン役を演じるなど著名ミュージカル作品に数多く出演してきた。日本でも『エビータ』(2018年)のチェ役、『ジーザス・クライスト=スーパースター in コンサート』(2019年、2021年)のユダ役などで人気を博してきた。近年は、映画やテレビドラマにも出演するなど幅広い活躍ぶりでステージ以外でも注目を浴び続けている。そんなラミンが3年ぶりに来日し、『The Reunion』(再結集)と称して親交のあるミュージカル・スターたちとの再会を祝したプレミアムショーを開催した。この公演のために集結したのが、日本から城田優/新妻聖子、イギリスからアール・カーペンター/ブラッドリー・ジェイデン、アメリカからアメリア・マイロという豪華な顔ぶれだ。
■第一部
アダム・ホスキンスの指揮するオーケストラによる「THE REUNION OVERTURE」の演奏に続き、最初に披露されたのが、ミュージカル『ラ・マンチャの男』の表題曲“Man of La Mancha” 。ドン・キホーテのパートをラミン・カリムルー、サンチョのパートをブラッドリー・ジェイデンが勇壮に歌い上げる。
続いてミュージカル『オペラ座の怪人』から“Think Of Me”。クリスティーヌのパートを、昨年のイタリア公演でも同役を演じた若手のアメリア・マイロが、持ち前の鈴を転がすようなソプラノを披露。アンドレア・ボチェッリとの共演経験もある彼女、さすがクラシカルな唱法も卒なくこなし、サントリーホールにもマッチする。一方、ラウルのパートはブラッドリー・ジェイデン。ブラッドリーはファントム役のラミンと共にイタリア版『オペラ座の怪人』でラウル役を務め注目を集めた新進気鋭のミュージカル・スターである。二人の歌声が実に瑞々しいかぎりだ。
次に『シュレック・ザ・ミュージカル』の“Who I’d Be”を、ブラッドリー・ジェイデン(シュレック)、アール・カーペンター(ドンキー)、アメリア・マイロ(フィオナ)の三人で優雅に歌った。かと思えばブラッドリーはミュージカル『レ・ミゼラブル』から“Stars”を悠然と歌い上げる。
日本勢のふたり、城田優と新妻聖子が登場すると、城田の作詞・作曲による“Love&Peace” を力強くデュエット。なんと愛に溢れる素敵なナンバーだろう。城田のクリエイティヴな才能に脱帽。
今度はラミンと城田のふたりが、「ハックルベリーフィンの冒険」を原作とするミュージカル『ビッグ・リヴァー』から、奴隷のジムとハックによるカントリーナンバー“Muddy Water”を、楽しく歌う。互いを「兄弟(ブラザー)」と呼び合うほどの、ラミン&城田の親密な間柄は、このパフォーマンスからも垣間見えるようだった。
今度は新妻がソロでディズニーアニメ『ポカホンタス』よりステファン・シュワルツ作詞&アラン・メンケン作曲の名曲“Colours Of The Wind”を披露。
その後、オーケストラによるミュージカル『キャッツ』の序曲の演奏を間に挟み、ミュージカル『ミス・サイゴン』から“Last Night Of The World”(世界が終わる夜のように)を、ラミン(米兵クリスのパート)と新妻(ヴェトナム少女キムのパート)が情感たっぷりにデュエット。かつて新妻が帝劇で演じたキムの姿が懐かしく思い出される。
先日ブロードウェイでのリヴァイヴァルが好評を博しトニー賞で最優秀リヴァイヴァル作品賞など4冠に輝いた、スティーヴン・ソンドハイムの傑作ミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』から“Old Friends”をオケが演奏すると、再びミュージカル『レ・ミゼラブル』の世界が戻ってくる。ジャヴェールとヴァルジャンのナンバー“The Confrontation”(対決)だ。この激しく緊張度の高い争いの場面をアールとラミンの掛け合いで目の当たりにできるとは、なんという幸運であろうか。
ちなみにアールは、『オペラ座の怪人』のファントム役や『レ・ミゼラブル』のジャベール役で知られるイギリスを代表するミュージカルスターだが、同時にコンサートのディレクターやプロデューサーとしても精力的に活動しており、今回の『The Reunion』でもディレクターを務めた。
次いでラミンのソロでロイド-ウェバー作曲のミュージカル『サンセット大通り』から“Sunset Boulevard”を経て、第一部のラスト・ナンバーはワイルドホーン作曲のミュージカル『ジキルとハイド』から“This Is The Moment”をラミン、城田、アール、ブラッドリーという男性陣4人で感動的に締めるのだった。
■第二部
インターミッション後の第一曲目を飾るのはアメリアとカンパニーの面々。ディズニーアニメ『アナと雪の女王2』からの“Into The Unknown”は、会場外の酷暑もしばし忘れられるほどの冷気の世界に心地よく誘なってくれるのだった。
そして、またまたミュージカル『レ・ミゼラブル』から、有名な“On My Own”。歌うは新妻。21年前にエポニーヌ役の大抜擢を受けて本作でミュージカル・デビューを果たした、彼女の思いがこもった楽曲である。経験によって醸成された深みあるシアトリカルな表現が今改めて聴く者の心に沁みた。
この後は、ラミンの弾き語りで城田との味わい深いフォーク二重唱が続く。まずは英国フォークロックバンド、マムフォード・アンド・サンズの“Reminder”。次いで再びミュージカル『ビッグ・リヴァー』から“Worlds'Apart”。いずれも、過去に動画サイトでも披露された、デュエットだが、いま改めて生のステージで聴けるのは感慨ひとしおだ。
そして遂に、日本のミュージカル・クラスタを大いに喜ばせる極めつけのミュージカル、『エリザベート』から、ご存じ“Die Schatten WerdenLänger”(闇が広がる)。ラミンがトート、城田がルドルフ皇太子を歌う。城田のアルバム「a singer」にも収録されていた妖しいデュエット曲、改めてラミンの日本語の達者さにも感心させられた。
ソンドハイムのミュージカル『リトル・ナイト・ミュージック』から“Send In The Clowns”がオーケストラで演奏された後、今度は意外な選曲というべきか、モンティ・パイソンの爆笑ミュージカル『スパマロット』より“I'm All Alone”。アーサー王と円卓の騎士および馬(パッツィ)によるこのナンバーは、アール、ブラッドリー、ラミンが歌唱した。名曲であることは間違いない。
男性陣の三重唱に続いては、本日初の女性陣ふたりによるデュエット。ミュージカル『ウィキッド』より、エルファバとグリンダが歌う感動ナンバー“For Good”である。シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデが主演する映画版は、2025年春に第一部が日本公開されることが決まっているが、“For Good”を聴けるのはさらに一年後に公開予定の第二部となろう。そちらも何としても生き永らえて観たいものだが、今は新妻&アメリアという奇跡的組み合わせでこのナンバーを聴けることが至上の悦びといえるものだった。
プログラムも終盤へと突入し、ラミンにとって非常に縁深い的世界線へと舞い戻る。城田が過去に主演したミュージカル『ファントム』から“Home”を歌えば、アメリアとブラッドリーはミュージカル『オペラ座の怪人』から“All I Ask Of You”を、アールは“Music Of The Night”を、そしてラミンがミュージカル『ラヴ・ネヴァー・ダイズ』から“Til I Hear You Sing”を立て続けに披露して、会場大盛況の内に閉幕となった。
アンコールは全員登場し、映画『グレイテスト・ショーマン』から“From Now On”で締め括った。この公演、ハイ・クウォリティなパフォーマンスに加え、ラミンと城田のホストぶりも実に楽しかった。ミュージカル好きには堪らない、このような贅沢無比な催し、ぜひ今後もどんどん企画していただきたい。
文=SPICE編集部