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kobore 全21公演を巡ったツアーファイナル、傷ついてたどり着いた幸福と愛を返す場所「死にたいくらい、幸せにしてくれてありがとう」

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kobore

kobore『FLARE TOUR 2025』
2025.4.5 東京・渋谷 O-EAST

2025年4月5日(土)、koboreが東京・渋谷 O-EASTにて『FLARE TOUR 2025』のツアーファイナルを迎えた。2024年11月にドロップした5thアルバム『FLARE』を携え、対バン編12公演、ワンマン編9公演を展開してきた同ツアー。約3カ月に渡る旅のゴールテープを切ったこの日は、佐藤赳(Vo,Gt)がたびたび「ファイナルだからといって、1ミリも格好付けるつもりはございません」と語っていた通り、決してセンチメンタルに浸ることはなかった。しかし、それゆえに彼らが培ってきた筋力が、胸中に蓄えてきたオーディエンスへの愛が赤裸々に示される夜だったのである。

各地で相まみえてきたバンドたちの楽曲が彩る会場に姿を現した4人は「男も女も関係ない。いつも通りやろうぜ」と「熱狂」で開幕の号砲を鳴らし、「エール!」「リバイブレーション」「Don’t cry anymore」と鮮烈なオープニングを演出していく。元来淀みない応援歌を届けてきたkoboreがエールをタイトルに掲げた「エール!」も、田中そら(Ba)が先陣を切ってパワフルに弦を揺らした「Don’t cry anymore」も、4人による熱唱祭りと形容したくなるほどにシンガロングがあしらわれており、どデカい声を張り上げることで各々が自らの言葉を放とうとしている現在のスタイルを伺うことができる。

伊藤克起(Dr)の軽妙な16ビート上で佐藤のボーカルが導かれるままに泳いだ「夜を抜け出して」や「スーパーソニック」、目まぐるしく回転するリズムと甘さを帯びた歌声がシンボリックな安藤太一(Gt)作詞作曲の1曲「メリーゴーランド」を終えると、「もう会えなくなった人とか、自分の中にできた空白とかを何かで埋めなきゃいけないって思ってた。でも、俺にとってのその空白はそれでしか埋まらないんだって、音楽をやって気づかされたんだ。そこにいて、拳を上げて、笑って泣いて、励ましてくれて本当にありがとう。空白はないんじゃない。ないがそこにある」と「ドーナツ」を投下。シャボン玉を浮かべるみたいに大切な人から貰った記憶の一つひとつを振り返り、「俺にとっても、koboreにとっても、お前にとっても、本気で笑える場所がここでありますように」と「36.5」へ。学校のチャイムを彷彿とさせる2本のギターがそっと絡み合い、春の気配を連れてくる中、《このままもいい 明日もまたきっと 当たり前の大事さに 気付くだろう》としたためられた一節は、ここまで“もう少しだけ頑張ろうぜ”と背中を押し続けてきた彼らが歌うからこその優しさを備え、”十分頑張っているよ”とリスナーを抱擁。同時に、ステージが日常になったために見落としてしまった輝きを拾い直し、もう一度歩き始めようとする4人の背中を映し出す。

そのまま「koboreにもっと上を見ていいんだって思わせてくれてありがとう。死にたいくらい、幸せにしてくれてありがとう」と披露した「リボーン」は、「ドーナツ」や「36.5」を通じて見つめ直した日々の尊さを踏まえ、変わらぬままに飛躍しようとするナンバーだった。「どんな夜でも超えられる気がする。ただし、俺には条件がある。この4人で!」と叫び、繰り返された《私ここで生きてく》のラインはこれ以上ないほどの宣誓であり、ライブハウスで歌い続けたいという彼らの最も切な願いにほかならない。「リボーン」――再生や復活を指示するこの1曲は、何度でも生まれ変わり、幾度も立ち上がるkoboreの生き様だ。

「リボーン」で再起を告げたところで、掻き鳴らされるアンサンブルと共にステージは群青へ色づいていく。「助けにきたぞ! ヒーローだからな」と「パーフェクトブルー」でメラメラと燃え滾る情動を露わにすれば、「突然閃光少年少女」から「君にとって」「爆音の鳴る場所で」を束ねる。これぞ、どストレートに次ぐどストレート。ド直球に次ぐド直球。それでも耳が痛くならないのは、ステージに屹立する4人が私たちと同じように悩み、もがいていると知っているから。我々がイヤホンから漏れるkoboreの音楽を拠り所にしていることと同様に、メンバーも目の前で眼を輝かせるファンに救われているから。シャウトされた「愛してる」の一言も、《僕には泣いてくれる人がここにいたんだよ 君だよ》と気づく「君にとって」も、とことん“あなたが必要だ”と伝えている。「爆音の鳴る場所で」でギターを放り、飛び込んできた観客と拳を交わした佐藤の様子は、誰もと手を繋ごうとするkoboreの姿勢を象徴していた。

止まない愛のシャワーの中、「このツアーは確実に俺たちを強くした。格好良くした。糞みたいな罵声も何一つ聞こえねぇよ! しっかり2本足を地に着けて、お前に歌うkoboreを見にきたんだろ。なるよ。なるよ絶対。お前にとって間違いないバンドに」と届けたのは「STRAIGHT SONG」。バンドとリスナーへ送る讃美歌で完全に腹を括れば、「このツアーの全てに捧ぐ」と今とこの場所をこれからも生き抜く誓いを打ち立てる「幸せ」から「この夜を抱きしめて」へ雪崩れ込む。天まで届くように高らかに唸る安藤のリフや堪えきれないとばかりに爆発し続けるビートが、今宵を胸にしまって生きていこうとするこの場を分かち合った全ての人の思いを代弁していく。

「『FLARE』16曲詰め込んだよ。ただ、その曲の中にkoboreのことは想像しないでほしい。ずっと自分だけ。あの16曲の中に映してあげてください」とアルバムに込めた思いを語ると、スポットライトを浴びた佐藤がゆっくりとアルペジオを爪弾き始める。1人、また1人とアンサンブルに加わると共に、舞台へ姿が浮かびあがっていく。佐藤は直前、「ずっと終わる感出してるだろ」と冗談交じりに話していたが、これまでのkoboreであれば「この夜を抱きしめて」で幕を下ろしても全くおかしくなかっただろう。それでも「BABY」をエンディングに据えた理由とは、アルバムの中央に鎮座する楽曲でツアーを締めくくる意味とは、この1曲が何よりも伝えるための歌だからではないか。壮大な合唱に導かれ、どうしようもないほどに優しい声色で紡がれる《だれもいない新しい世界 その名は愛だ》の一行。抱えた膝を解いて、結成10年を迎えるkoboreは新たな1歩を踏み出したのだ。

アンコールでは「ヨルノカタスミ」とCDにのみ収録された「愛が足りない」をプレイし、朗らかなムードでステージを降りたkobore。ツアーファイナルを直前に控えたある日、SNSには、このツアーで最後になっても良いと考えていたこと、そしてまだまだ歌い足りないと思っていることが投稿されていた。確かに、この日の節々からは、彼らがこの先について苦しくなるほどに思考を巡らしてきた気配を垣間見ることができたように思う。だからこそ、「愛が足りない」の最後に叫ばれた「色んな優しさに触れた。そしたらこんな景色になった。これを愛と呼ばずに何と言うんだ」という言葉は、「リボーン」や「BABY」で歌ってきたように、知らず知らずのうちに与えられてきた愛情へ4人が気づいたことの表象だった。それはつまり、高い壁を課すあまり、認められなくなっていた自分たちを認め直すプロセスでもあるはず。誰かに愛されていると手のひらにあるものを知ったために、koboreは正真正銘の温かさを手渡せるバンドになっている。そんな彼らの次なる出発点は、枕詞にし続けてきた東京・府中のホールから。舞台上への一方的な羨望でも、客席への一方的な感謝でもない相思相愛の空間でkoboreの音楽よ、まだまだ鳴り続けてくれ。

取材・文=横堀つばさ 撮影=シンマチダ

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