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飼育下と野生下では<魚の表情>が違う? 自宅アクアリウム・水族館・磯・水中で比較してみた

サカナト

サクラダイ(提供:みのり)

水族館や自宅のアクアリウムで魚を観察したとき、彼らはどのような反応をするのでしょうか。驚いて逃げてしまう魚、餌を貰えると思い近づいてくる魚、いろんな魚がいると思います。

飼育下における魚たちでも様々な反応を楽しめますが、野生下における魚たちもまた一段と違った反応を見せてきます。野生下における魚の顔は、飼育下のそれとは全く異なるのです。

筆者の水族館体験・フィールド体験に基づいた、飼育下・野生下におけるそれぞれの魚の「顔」について記していきます。

自宅飼育下の魚は“人慣れ”する

自宅でアクアリウムをやっている人は分かると思いますが、魚は種類や個体によって人に慣れます。水槽搬入直後は人影に驚いていても、人が餌を与えてくれる存在だと理解すると、魚の方から近寄ってきます。

筆者のかつての自宅水槽(提供:みのり)

人工池で、コイなどが口をパクパクさせながら近づいてくる光景を見たことある方もいると思います。もちろんこの反応は“人を好きになったから”ではなく“人が餌を与えてくれると学習したから”見せるものです。

飼育下の魚はどこか落ち着いているようにも見える(提供:みのり)

他にも、水槽掃除を何度か繰り返すうちに水槽に手を入れても反応が鈍くなった魚、別の容器に移すために網で捕まえようとしても逃げるのが遅い魚もいました。

「この人は襲ってくるわけではない」と学習すると、途端に反応が鈍くなるようです。

自宅飼育とは違う表情をみせる水族館の魚たち

水族館の大きい水槽では、自宅のアクアリウムとは違う魚の反応が見られます。

まず彼らはアクリル越しの人にあまり過剰な反応は見せません。魚の方から「人だ!(餌をくれる!)」と思って近づいてくることはなく、人がアクリルへ近づくとゆっくり遠ざかっていきます。

アクリル越しの熱帯魚水槽(提供:みのり)

魚たちは人を認識していますが、必要以上に反応することもないのです。

水槽が大きい故の余裕なのか、それとも自宅飼育の魚とはまた違った認識の仕方をしているのか……同じ飼育下でも、魚の見せる表情は違うのです。

水族館の巨大水槽(提供:みのり)

水族館の魚は飼育員を認識している?

水族館の魚は飼育員目線で見ると、さらにその表情を変えます。

筆者が以前勤めていた水族館では、大きな水槽であってもバックヤード側から水槽の上に立つと、彼らは自宅飼育の魚と同じように「餌だ!」と認識して近づいてきました。アクリル越しでは人に見向きもしなかったメガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)も、バックヤードでは水面越しにこちらを見つめてきます。

また、筆者がかつて実習をさせていただいた水族館では、大水槽の上に立っただけでマグロカツオが興奮して泳ぐスピードが速くなり、水面付近に集まりだしたこともありました。大型の水族館では、ジンベエザメナンヨウマンタなどに餌を与える際、飼育員さんが水面をバシャバシャ叩いて餌の時間を知らせることもあります。

普段は小さな人間など認識していないかのように振る舞う彼らも、バックヤードではしっかり人を認識していることがわかります。

野生下の魚たち

それでは、野生下の魚はどのような反応を見せるのでしょうか。

とにかく人を恐れる反応をするのだろうと思われがちですが、実際には少し違ってきます。人を恐れる魚ももちろんいますが、全ての魚がそういった反応を見せるわけでもないのです。

一体どういうことでしょうか。

磯遊びで出会う魚にはすぐに逃げられる!

磯遊びをしたことがある人は、「磯の魚たちは人影でびっくりして逃げて行く」と感じると思います。

確かに磯で上から魚を見下ろした際、彼らは凄いスピードで岩陰や穴の中に隠れますし、なんの魚なのかすら認識もできない速度で人前から姿を消します。磯で魚を捕まえようとしても、中々苦戦する理由でもあります。

磯で手軽に魚と触れあえる(提供:みのり)

とにかく上から見える影に恐れをなしていることがわかります。恐らくですが、彼らは地上にいる捕食者が自分たちを狙っていると認識しているのでしょう。

それが飼育下だと徐々に学習することで人を驚異の対象と見なさなくなり、反応が鈍くなったり、逆に人を見て餌の時間だと認識できるのかもしれません。

それでは、上からではなく横から、すなわちダイビングで水中から魚を見た場合、彼らはどんな反応を見せるのでしょうか?

水中では「余裕」を湛えた魚たちが観察できる

ダイビング経験者に聞くと、大体の方が「水中で見る魚は水族館で見る魚とは全く違う」と言います。

あいまいな表現ですが、まず雰囲気からして磯の魚とは様子が違います。どんなに広い水槽であろうと、飼育下の魚が必ず持っている“人が管理している魚”というステータスが一切ないため、人に対する「余裕」を感じるほどです。

水中世界の営み、彼らはこちらに見向きもしない(提供:みのり)

もちろん種類や個体にも寄りますし、近づきすぎると逃げていく魚もいますが、多くの魚はそこに人がいないかのように振る舞います。特にベラの仲間などは人が巻き起こした砂埃などに餌が紛れ込んでいないか群がってきます。

クリーナーフィッシュとして有名なホンソメワケベラは、人を大きな魚と勘違いして掃除してきます(たまらなくかわいいです)。人を含めて、そこで行われているのは水中世界の当たり前の営みです。

ホンソメワケベラ(提供:みのり)

水中では、彼らの生活や営みを肌で感じることができます。それは同じように横から見るアクリル越しの魚とも違う顔です。そこで見られるのは「普通」に生きているだけの魚たちの顔なのです。

これは筆者の考察ですが、ダイビングスポット周辺は魚が観光資源となることから、釣りや漁が禁止されている場所もあります。そのため、魚たちに「人を恐れる」という概念がないのかもしれません。

同じ魚でも顔が変わる

魚の種類によっては、ここまで説明した内容とは全く異なる反応を見せる魚もいます。また、同じ種でも、個体によって行動が異なる場合もあります。これは飼育下でも野生下でも同じです。

言い換えれば、この世の魚の数だけ様々な表情が観察できるということになります。飼育下でも野生下でも魚の楽しみ方は無限大なのです。

図鑑などには魚たちの様々な生態行動が記してあり、それらを期待して魚を観察に行くのも楽しみ方のひとつ。しかし逆にそれらを一切参照せず、観察者が自分の視点で魚たちの「顔」を観察していくのもまたひとつの楽しみ方です。

そこで見られるのは、魚たち一尾一尾の「顔」の違いです。それは魚を「種」として紹介する図鑑などでは、なかなか得られない情報です。また、そうして得た魚たちの「顔」を集めていけば、あなただけが知っている特別な“魚図鑑”ができあがります。

魚を観察するときに彼らを詳しく知らなくても大丈夫。あなただけの体験が、魚たちを知るキッカケとなるのです。

(サカナトライター:みのり)

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