【2025年の選挙】注目の参院選!今更聞けない選挙の仕組みは?静岡選挙区の情勢は?論説委員長が教えます!
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「2025年の選挙」。先生役は静岡新聞の橋本和之論説委員長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2025年1月14日放送)
(山田)今回は橋本さんに今年の選挙の話をしていただきます。昨年も1月の段階で橋本さんが、「2024年は選挙イヤーだよ」という話をしてくださいました。今年はどうですか?
(橋本)昨年は日本だけではなく、世界的に大型選挙が集中していました。特に大きかったのはアメリカの大統領選ですが、加えて日本では、予定されていなかった衆院解散があり総選挙が行われました。県内でいうと、知事が突然辞職したので1年早く前倒しで、予定外の知事選が行われましたね。
(山田)まさに2024年は選挙イヤーでしたね。
(橋本)今年は昨年ほどは多くないですが、国内に限れば参院選がありますし、県内では4月に市町の市長選と議会の選挙が集中します。よく統一地方選と言いますよね。直近だと2023年にありましたが、今年は「ミニ統一地方選」と言われています。
2005年に市町村合併で4月に一気にいくつか新しい市町ができて、それに伴って4年ごとに選挙が行われていて、今年また選挙があります。
(山田)そういうことですね。1月1日の静岡新聞にも2025年も選挙ラッシュだという記事が出ておりました。参院選について話しましょうかね。
(橋本)そうですね。参院選はやっぱり今年の最大の注目すべき選挙です。与党が昨年の衆院選で敗れて少数与党になってますからね。この参院選の結果次第で、例えば石破内閣が退陣したり、その後の政界再編に繋がったりということがないとも言えない選挙になるので、大変注目しています。
(山田)参議院選挙について、参議院のことからちょっと教えていただけますか?
(橋本)二院制ということで衆議院と参議院があり、現在の衆議院の定数は465なのに対し、参議院はその半分と少しの248です。なので、参議院の過半数というと125以上ということになります。
投開票が終わった後に、自公で125以上の議席を確保しているかどうかが、7月に行われると言われている参院選の最大の焦点になるということです。
さらに基本的なことになりますが、衆議院議員と参議院の任期の長さが違うというのはご存知だと思います。
(山田)はい、これは勉強しました。
(橋本)衆院が4年で参院が6年です。衆院は昨年のように突然解散して総選挙を行うことがありますが、参院には解散がありませんので、議員は基本的に6年間の任期を務めるということですね。
参議院では、衆院のように全ての議席について一度に選挙して決めるのではなく、半分ずつ3年ごとに改選していきます。半分は非改選なので選挙が終わった後もそのまま残るわけですよね。そうすると、過半数かどうかは、非改選の現有議席とそれから今度の夏の選挙で獲得した議席を足した数で決まるということになります。
(山田)結構、この非改選の方の数字も重要になってきますよね。
(橋本)そうですね。前回の2022年の選挙では、自民党が大勝しました。自公は今回選でどれだけ議席を取れば良いかというと、125の半数だと66ですが、2022年の結果があるので、今回選では50議席確保すれば全体で過半数を維持できるということになります。野党は77議席取らないと、過半数割れに追い込めないということになります。
(山田)自民党、公明党としては、50議席は届きそうな感覚でいるんですか?
(橋本)衆院選であれだけ負けましたので、必ず議席が取れるとはなかなか言い難いんじゃないかなと思います。
静岡選挙区はどうなる?
(山田)静岡県内についてもちょっと教えてください。
(橋本)静岡選挙区は改選される議席が二つです。現職は自民党の牧野京夫さんと国民民主党の榛葉賀津也さんで、お2人とも出馬予定です。そのほかに、参院選は補選を含めて5回目の挑戦という共産党の鈴木千佳さん、参政党の新人・松下友樹さんが参戦する予定になっていて、今のところ4人ということです。
(山田)4人でこの2議席を争うと。
(橋本)あと最大野党の立憲民主党はどうかということになります。牧野さんと榛葉さんが当選した2019年の参院選では、立憲民主党も候補者を立てました。榛葉さんとも競合したわけですよね。今回選についてはまだはっきりしておらず「年明けに結論を出す」と幹部が言っているようですが、もし立民の候補が立つと、非自民・反自民の受け皿、しかも旧民主党の流れを引き継いでいるということで、再び榛葉さんと競合することになるかと思います。
ただ、榛葉さんは、衆院選で躍進した国民民主党の幹事長を務めていますね。国民民主が与党側につくのか野党側につくのかによって国会の勢力図がガラリと変わるということで、いわゆるキャスティングボードを握っていると言われています。「103万円の壁」の問題でも注目されました。
ここで立民があえて静岡に候補者を立てて、国民民主と敵対することで与党側に追いやるようなことをするかどうかを考えると、19年参院選よりもそうしにくい状況にあると言えると思います。
(山田)そうか、候補者立てにくい状況なわけですか。
(橋本)国政の状況を考えるとそう言えるのかなと思います。ただ、今後の焼成変化でどうなるかはわかりませんけどね。
(山田)今のところ、立憲民主がどうするかわからないので、静岡選挙区は議席二つで、一応この4人で争うことが予想されているわけですね。
(橋本)もう一つ、頭に置いておかないといけないことがあります。1月12日付の静岡新聞の一面でも紹介しましたが、日本世論調査会による世論調査で「自民党の派閥裏金事件について今度の参院選の投票で考慮しますか」ということを聞いたところ、「ある程度」を含めると、75%が「考慮する」と回答しているんです。
今の日本の政治に「満足していない」という回答も8割を占めていて、このあたりの有権者の意識が、実際に参議院の投票にどう影響するのか。もう一方の議席を持っている自民党の牧野さんの得票にどう影響するのかという点が、自民と旧民主系で議席を分け合ってきた最近の参議院の選挙とはちょっと状況が異なるのかなと思いますね。
衆参同日選挙もあり得る!?
(山田)衆院選があるかもという話も、ちょっと出てるようです。
(橋本)昨年末からニュースでも取り上げられるようになりましたね。衆参同日選挙。
これは、年末に石破首相がテレビで、「衆議院選と参議院選を同時にやってはいけない決まりはない」と発言して、同日選を否定しなかったということで波紋を広げました。野党側も、石破さんが同日選を考えてるんじゃないかと警戒を強めていると言われています。
少数与党なので、24日に通常国会が開会するものの、野党の協力がなくては一番重要な新年度予算も通らないという状況ですよね。石破首相は丁寧に野党に説明して、野党側が筋の通った要求をしてきた場合には予算の修正にも応じるという構えなので、できるだけ野党側に配慮して、一部でも賛成をもらって予算を何としても通そうと考えているのだと思います。同日選に触れたのは、野党側の反対で予算が通らないというような非常事態になった場合は「解散して国民に判断してもらうのが筋だ」ということを言いたかったのだと思いますね。
ただ先ほどの世論調査にもあったように、まだまだ裏金事件への国民の批判は強いと思われるため、仮にそうした非常事態になって解散したとしても、議席を前回の衆院選よりも増やせるのかどうなのか。逆に減ることもあり得るような状況ですので、解散を打つのはちょっと難しいんじゃないかなと思います。
(山田)しかもこれ逆だった場合、石破さんの首相という立場も…。
(橋本)そうですね。今は野党がまとまっていませんが、参院選でも与党がダメだと判断したとなれば、野党がまとまって政権交代ということもあり得ます。なかなか環境的には難しいんじゃないでしょうか。
過去には2回、1980年と86年に衆参同時選があったんですが、それは両方とも与党が大勝してるんですよ。
80年の解散は「ハプニング解散」と言われています。大平正芳首相の時だったんですが、その前の年に総裁選があり、総裁選のしこりがずっと残っていて与党内が割れていたんですね。それで、野党から大平内閣の内閣不信任案が出された時に反大平派の議員が欠席しちゃったんです。そうすると可決のハードルが下がりますから、野党側も不信任案が通るとは思ってなかったんですが、通ってしまって解散になりました。
(山田)それが、ハプニング解散ですね。
(橋本)その後、選挙中に大平さんは亡くなったんですよ。そこで一気に与党はまとまって、「弔い合戦だ」となり、圧勝したという選挙でした。
その次の1986年は中曽根康弘さんのときで、当時は「死んだふり解散」と言われました。解散しないようなふりをしてたんですが、元々人気が高かった人なので、解散した時に中曽根人気で圧勝しました。
当時は、与党に票が集まる要素があったんですよね。今回はここで打っても、これだけ国民批判が強い時に圧勝できるとはちょっと思えないなという感じですよね。
(山田)今日、橋本さんに解説していただいて、今後いろいろ構造が変わる可能性があるんだなと分かりました。今日の勉強はこれでおしまい!