災害看護伝え続ける 野口教員が県表彰 港南区 専門学生に
港南区の横浜市病院協会看護専門学校で専任教員を務める野口理恵子さん(65)がこのほど、今年度の神奈川県看護教員表彰受賞者に決まった。野口さんは日本赤十字社スタッフとして複数の災害看護を経験。現在はそれを学生に伝えていることなどが評価された。
看護教育の発展、向上に功績のあった看護教員を表彰するもの。野口さんは横浜赤十字病院の看護師を経て同校に教員として赴任。途中、日赤神奈川県支部へ転職するも、6年前に復職し、通算20年にわたり教壇に立っている。
専門は基礎看護学。しかし、日赤時代も含め多くの災害看護を経験し、被災地の実情や必要な看護について伝える授業も同校を含め県内3校で行っている。
関連死を防ぐ
野口さんの災害看護経験は1982年の日航機羽田沖墜落事故に始まり、NZ地震、東日本大震災、熱海市伊豆山土石流、直近では能登半島地震と約40年に及ぶ。その中で培ってきたのは「話を聞いて、そばにいることの重要性」だ。
災害看護と聞くと、傷病者の手当をイメージするが、野口さんは「それは災害看護のごく一部分」と語る。災害時の負傷から亡くなる人よりも、その後の避難生活によって亡くなる災害関連死の方が多いためだ。被災地での看護師の仕事は被災者や家族を亡くした人の心身のケアが大半を占める。「災害関連死はストレスの影響が大きいです。そばにいて、話を聞きながら必要な支援につなげるのが役割となります」と野口さん。被災地に行くたびに看護師や医療者への期待を強く感じるという。
後進に求める「覚悟」
赴く現場はいずれも未曾有の災害。不測の事態にも直面する。また、被災地から戻った後に「未だ苦しんでいる人がいるのに、自分は平和に暮らしてよいのだろうか」と自責の念に駆られ、仕事が続けられなくなる看護師も多いという。そこで現在、後進となる学生に説くのは「覚悟」だ。
「被災者から理不尽なことを言われることもある。しかし、災害時に気が立つのは当然。苛立ちが家族などに向くくらいであれば、看護師に向けてもらって構わない。それを受け止める覚悟が必要」と力をこめる。また、「事前に災害時の状況を想像し準備することも重要」という。自身の経験を伝えることで、学生の想像の一助となる。
今回の受賞については「学生の成長を見るのが楽しくてやってきたことが評価されて嬉しい。次の災害がいつ起きるか分からないので、その時に活躍できる看護師を育成するために、今後も経験を伝えていきたい」と話した。