TrySail ベストアルバム『BestSail』で振り返る10年の軌跡――3人が選ぶ忘れられない瞬間【インタビュー】
麻倉ももさん、雨宮天さん、夏川椎菜さんによる声優ユニット「TrySail」が、デビュー10周年を記念した初のベストアルバム「BestSail」を2025年8月27日(水)にリリースされました。
通常盤はCD2枚組、初回生産限定盤(A、B)はCD3枚組でリリースされる本アルバム。これまでにリリースされたすべてのシングル表題曲を収録した「ALL SINGLES BEST」(2枚組/各10曲、計20曲)に加え、初回限定盤にはメンバー3人がそれぞれ思いを込めて選曲した「MEMBER’S SELECT BEST」を収録。3枚合わせると30曲におよぶ内容で、TrySailの歴史と魅力をすべて詰め込んだ集大成アルバムとなっています。
アニメイトタイムズでは、ベストアルバムのリリースを記念してTrySailの3人にインタビュー。10年の歴史を詰め込んだアルバムということで、今回は収録曲で特に印象的な楽曲や当時の思い出などを語りつつ、歩んできた10年を振り返っていただきました!
【写真】TrySail ベストアルバム『BestSail』で振り返る10年の軌跡【インタビュー】
TrySailの3人にとって“◯◯の10年”
──10周年おめでとうございます! 20代のほぼすべてをTrySailとともに過ごしてきたわけですが、この10年はどんな10年でしたか?
夏川椎菜さん(以下、夏川):最初の頃は特にそうでしたが、TrySailが始まって、ドタドタといろんなことが目まぐるしく変わっていって、それに食らいついていって……みたいな感じで。“なんとか走り続けてきた10年”だったなと思います。
麻倉ももさん(以下、麻倉):“人格形成の10年”ですね。20代って世間的にもそうですし、自分の人生の中でも価値観とか考え方とか、いろんなことが変わる年代だと思うんです。その20代をTrySailとしてほぼすべて過ごして、ライブもレコーディングも取材も撮影も、初めての経験をたくさんしてきました。チームで動いているので、チームの一員としての動き方や社会性も培われましたし、それだけ自分の人格を作り上げる大きな要素になっていたんじゃないかと思います。
雨宮天さん(以下、雨宮):私は“とにかく考えた10年”でした。そもそもユニット活動は私がやりたいことではなかったから、「やりたくない」ところから「やってよかったと思える」ところまで持っていかなきゃいけなくて。少しでもストレスを減らしてやっていかなきゃと思っていましたので、自分の中での折り合いの付け方や、自分の機嫌の取り方、モチベーションの上げ方などを10年間でいっぱいいっぱい考えました。
──そんな皆さんは、2011年にミュージックレインのスーパー声優オーディションに合格し、翌年から声優活動を開始。2014年末にTrySailを結成します。ユニットをやることは、早い段階で言われていたのですか?
麻倉:いえ、かなり急だったと思います。「(ユニットを)やります」と言われてから、すぐに楽曲の制作が始まりましたから。
夏川:ユニットをやると言われて「来月レコーディングです」ぐらいだった気がしますね。
麻倉:なんなら、先輩たちがやっていたこともあって(寿美菜子さん、高垣彩陽さん、戸松遥さん、豊崎愛生さんによるユニット「sphere」)、ユニット活動を「3人はやりません」と最初言われていたので、やらないものだと認識していたんです。そこに突然降ってきた、本当にそんな感じでした。
夏川:急に会社に呼ばれて、会議室に入ったら当時の社長もいて。3人で並んで座って「ユニットを組むことになりました」と、重苦しい雰囲気で結成を伝えられたんです。
──そうなのですね。先ほどの話からすると、雨宮さんはかなり反対だったのでは?
雨宮:私は会議室で言われた瞬間のことを覚えていないんです。たぶん、それより前に聞かされていたんだと思います。
夏川:そうだ。天さん(雨宮さん)はなんかもう口をつぐんでいたというか、なにも話す気がないって感じだった記憶がある(笑)。
雨宮:思い出せる光景として残っているのは、電車の中で当時のマネージャーから「ユニットを組む」と言われて、「嫌です」と言ったのに「仕事だから」と。それはすごく記憶にあるんですけど、会議室でのことは記憶になくて……。
夏川:先に聞いていたから、会議室ではそういう反応だったんだね。私、天さんがなにも言わなかったのが意外だったんです。そのときは聞けなかったけど、そういうことだったのかもしれないね。
麻倉:確かに。
──では、ユニット結成前のそもそもの話にはなりますが、当時のお互いの第一印象はいかがでしたか?
夏川:第一印象といいますか、しばらく一緒にやっている中で感じたことですが、2人とも私の周りにはいなかったタイプの人間だなと思いました。私の学校にはいなかったといいますか。切磋琢磨していく仲間ができて嬉しい気持ちと同時に、2人のモノの見方や考え方がすごく新鮮で刺激になるなと感じました。
麻倉:周りにいなかったという意味ではそうかもしれないです。年代が少し違うのもあると思いますが、レッスン後などにファミレスで何時間も深い話やくだらない話をいっぱいする中で、「そういう風に考えるんだ」とお互いの考え方を知っていきました。そうやって関係性を作っていったんです。
雨宮:私は……「目がデカいな」って思いました(笑)。
麻倉・夏川:(笑)。
雨宮:最初に会ったときに、顔がかわいいのはもちろんですが、「目がデカい!」「声がかわいい!」と思ったのをよく覚えています。こんなに目が大きい人は、あまり見たことがなかったです。
夏川:周りにいなかった?
雨宮:うん。なんかその印象がすごく強かった。
「コバルト」のような曲を歌えたのは救いでした
──今回のベストアルバムはまさにTrySailの10年の歴史を感じられる収録内容ですので、印象的な楽曲や出来事を挙げつつ、10年を振り返っていただければと思います。まずはなんといってもデビュー曲「Youthful Dreamer」。
夏川:初めて聴いたときは難しすぎてビックリしました。元気な曲がくることはなんとなく想像していたけど、結構早口な感じの曲で、「大丈夫かな?歌いこなせるかな?」と心配になったのを覚えています。
麻倉:最初から難しい曲だな、って思った記憶は私もありますね。
雨宮:私は難しさに関する記憶よりも、当時はとにかく「舐められちゃいけない」と思っていて。「明るい曲だけど、かわいくなりすぎないようにしよう」とすごく思いながらレコーディングしました。
──過去のインタビューでも、雨宮さんは「舐められちゃいけない」といった発言を結構していましたね。
雨宮:そうですね。当時の私の目標といいますか、「舐められたくない」と常に思っていたので。
夏川:常に顔の横に「舐められたくない」って吹き出しが出ていたからね(笑)。
──そうすると、2曲目の「コバルト」が格好よく切ない系の楽曲だったのは、本人的に良かったのでは?
雨宮:安心しました。なんといいますか、もっと舐められにいかなくちゃいけないのかと思っていましたから。
──声優ユニットとして、さらにかわいらしい路線をやらされると心配していた?
雨宮:そうなんです。なので、「コバルト」は私にとって結構救いだったかもしれないです。
──確かに、2曲目にこういう曲調がきたことでTrySailはかわいいだけのユニットじゃないと感じました。
麻倉:もともと格好いい曲はやってみたいと思っていましたけど、2曲目でくるのは私も意外でした。周りの方にも「TrySailは(かわいいだけじゃなく)いろんな曲をやっていくのね」と認識していただけたので、2曲目でガラッと変わって格好いいテイストの曲を歌えたのは、TrySailとして良かったんじゃないかなと思います。
──初期の頃で、ほかに印象的な楽曲を挙げるならいかがですか?
夏川:私はやっぱり「High Free Spirits」が印象に残っています。いま話があったように「Youthful Dreamer」があって「コバルト」が来たんですけど、その次が「whiz」だったので、ベースはやっぱりかわいい楽曲になるのかなと思っていたんです。そこで来たのが「High Free Spirits」でしたから。定期的に格好いい曲を出せるんだと。
──連続して聴くとわかりますが、4曲目まではかわいい爽やか系と格好いい系の楽曲が交互にきましたからね。ベストアルバムだと改めてそういう発見もあって面白いです。
夏川:お客さんたちも受け入れてくださいましたし、私個人としても「コバルト」のときほど「かっこいい曲ってどうやって歌うんだろう?」と悩むことがなくて。格好いい曲をちゃんと自分たちの武器にしていける確信を持てたのが、「High Free Spirits」だったなと思います。
雨宮:楽曲自体の話ではないのですが、私は「whiz」のMV撮影が印象的でした。10年やってきた中で、たぶん一番夜遅くまでかかったのが「whiz」だったんじゃないかな。現場にはCG合成して仕上げるためのグリーンバックもあって、細かな指示を受けて想像しながら撮影していたのですが、場面のチェンジも多かったんです。
夏川:チェンジするのにめちゃくちゃ時間がかかったんですよね。撮影自体の時間は普通ぐらいだったと思いますけど、チェンジがとにかく長くて。
雨宮:それで深夜までかかったんです。私は次の日の朝から別現場があったので、すごく大変だったな、こんなにかかることあるんだ、といった印象が強く残っています。当たり前の話ですが、「撮り終わらないと終わらないんだ」って(笑)。
夏川:それは私も思いました。時間になったら「今日はここまで」じゃなくて、全部撮り終わらないと終わらないんだ……って。
麻倉:あれは大変だったよね。
──そこから次の段階のTrySailとしては、外せないのは「adrenaline!!!」でしょうか。
麻倉:そうですね。「adrenaline!!!」は外せないというか、「認められた」と感じた曲です。私たちのことをあまり知らなかった方にも、「あの『adrenaline!!!』を歌っている人たち」と認識していただけて、本当にTrySailの代表曲のひとつになりました。この曲でTrySailのことを知ってくださった方がガッと増えた手応えを感じましたし、やっぱりこの曲の存在は大きいかなと思います。
──「adrenaline!!!」はフェス系のライブでもイントロの段階で歓声がものすごいですからね。これをきっかけに楽曲の方向性が変わっていったと感じることもありますか?
夏川:「adrenaline!!!」以降はアップテンポな曲が増えてきたなって感じはありますね。
雨宮:シングルの表題曲に関しては、タイアップ曲ですから(こちらの希望で)大きく変化することはないと思いますが、アルバム楽曲やカップリングはそういう傾向があるかもです。
──ちなみに、最初の頃は曲の出だしを誰が歌うか考慮していたのでしょうか?というのも、「Youthful Dreamer」が全員で歌い出すのを除くと、「adrenaline!!!」までは3人が2曲ずつ歌い出しを担当していて、バランスがいいなと思いまして。
麻倉:もしかすると考えていたかもしれないです。最初の頃は歌い分けの量が平等になるようにしていたと聞いたことがありますから。いまはそういうのはなく、アルバムでは誰かが主役になる曲を作ることもありますが、表題曲に関してはそういうこともありました。
20公演におよぶライブツアーは楽曲制作にも影響
──続いて、10年間の中盤あたりで特に印象的だったことを教えて下さい。
夏川:このあたりになると、MVも美し目のショットが増えた気がします。最初の頃のMVは元気感やフレッシュ感を出していたイメージがあるんですけど、「WANTED GIRL」や「Truth.」「azure」あたりからは、MVの中での衣装が格好いい系になったり、撮り方がアーティスティックになったりといった変化を感じました。
麻倉:「Truth.」はダンスを押し出したMVで、すごい挑戦だなと思ったのを覚えています。それまでも格好いい曲はありましたけど、こういう系統のダンスをやるのはトライだなって。そういえば、撮影のときは天さんが体調悪かったよね?
雨宮:あのときは、めちゃくちゃ忙しくて寝る時間を削って夜中に泣きながら振りの練習をしていたので、MV撮影の朝に熱が出ちゃって……。ナンちゃん(夏川さん)に肩を貸してもらって、熱が出たままやりました。しかも、楽屋から撮影場所にいくまで、階段を降りてしばらく歩いていかなきゃいけなかったんです。
夏川:その日は雨も降っていたよね。水の反射も使うからといって床はびちょびちょだったし。
麻倉:そうそう。ちょっと地下っぽいジメジメした、環境的にあまりいい場所ではなくて。そこで何回も同じところを踊って撮って、みたいな。
夏川:元気な私たちでもつらいのに、天さん大変だろうなって思いながらやっていました。
──TrySailって何気に過酷ですよね。
夏川:何気に、でもなく毎回過酷です(笑)。
麻倉:海のそばで撮ることも多いので、寒さと風はつきものですし。
雨宮:どうして海と一緒に撮りたいんだろうね。
──やっぱりTrySailのイメージがそうなんでしょうね。楽曲的にいえば、「Truth.」はGARNiDELiAのおふたりが制作したこともあって、それまでとの印象の違いも感じました。
雨宮:確かに、EDM的な曲はそれまでやっていなかったので、そう感じていただけたと思います。
──そして、この頃といえば、2018年2月〜5月に「LAWSON presents TrySail Second Live Tour “The Travels of TrySail”」(9会場13公演)、2019年2月〜8月に「LAWSON presents TrySail Live Tour 2019 "The TrySail Odyssey”」(13会場20公演)と、大型のライブツアーを毎年していました。傍からみていても、毎週どこかに行っているなと。
夏川:そうですね。最近はあまり行けていない新潟とかも行きましたし、関東近郊をいろいろ回って、栃木にも行ったし。
麻倉:うん。餃子を食べた(笑)。
夏川:ツアーだからその土地を絡めた盛り上げポイントを作ろう!となって、「ホントだよ」の中で「よくできました!」をいろんな方言で言ったよね。
麻倉:その土地の言葉でなにか言おう、となって。
夏川:「栃木出身の人いませんか?イントネーション教えて下さい!」みたいに、毎回みんなで頭を悩ませていたのを覚えています。
──ライブでどう盛り上げるかも意識して曲作りをするようになったのは、この頃からでしょうか?
夏川:3rdライブツアー(The TrySail Odyssey)は20公演と長かったのもあるし、アルバムを引っ提げてのツアーだったこともあって、中盤から「何回も来てくれるお客さんを満足させるにはどうしたらいいんだろうね?」とスタッフと一緒に話し合いをしていました。その中で、「アルバムを作る段階からライブを意識して、ライブでこういう風に盛り上がれる曲が欲しいよね」といった話にもなって。明確にライブを意識して曲を作り始めたのはもう少しあとになりますが、作るきっかけになったのは3rdライブツアーかなと思います。
あの壮絶なMV撮影はいまでも夢に見ます
──2020年からはコロナ禍の影響でライブが思うようにできない時期もありました。ライブに限らずで大丈夫ですので、この頃に関してはいかがですか?
雨宮:どんな思い出でもいいのであれば、「誰が為に愛は鳴る」の“虫事件”はめちゃくちゃ思い出深いですね。私、初めて人の蕁麻疹(じんましん)を見ました(笑)。
夏川:「アニサマ」(Animelo Summer Live 2021 -COLORS-)の日だよね。
麻倉:「誰が為に愛は鳴る」を1曲目に歌うことになっていたんだよね。
夏川:そうそう。そうしたらMV撮影を思い出しちゃって。
雨宮:「誰が為に愛は鳴る」のMVは、周りが自然に囲まれた廃墟というか倉庫みたいなところを使って撮ったんですね。夜に照明を暗くして、ドアも全部開いている暗い倉庫で、私たちのところだけに光を焚いていたので、森じゅうの虫が全部集まってきたんです。だから、私たちは虫の大群の中で撮影しなきゃいけなくて。もう虫の数が半端ないし、それを処理しなくちゃいけないし、しかも雨で天井も抜けていて雨漏りもしているから、水たまりの中に虫の死骸がいっぱいだし。ナンちゃんは綺麗好きなんですけど、そういう極限状態で心が限界を迎え、目が虚ろになり、涙を流し……みたいな感じでした。
夏川:地獄でした……。
雨宮:それで、「アニサマ」で披露するとなったときに蕁麻疹が。
麻倉:忘れられないよね。
夏川:あの光景はいまでも夢に見ます……。あと、撮影が全部終わったあとにやっと開放されたと思ってトイレに行ったんです。場所が場所だから仮設トイレみたいなところだったんですけど、ちょうどドアノブにカエルがいて悲鳴をあげちゃいました。私、普段だったらカエルは平気なんですけど、そのときは気が立っていたみたいで。マネージャーについてきてもらいました。
──聞くだけで大変だったのが伝わってきます。麻倉さんはどんな曲や出来事が印象深かったですか?
麻倉:印象深かったのは「うつろい」ですね。いただいたときから大好きで、すごくいい曲だなと思っていたんですけど、この曲もライブで披露していく中でより“悲痛さ”が成長していったというか、そういう要素をいっぱい盛り込んでいくようになりました。CDで聴くのとライブで聴くのとで全然違うな、変わったなという意味でも印象に残っていて、ライブを経てより好きになった曲です。
──ライブで聴くと特にそうですが、この頃の楽曲は表現力や深みがさらに増してきたと感じます。
夏川:おそらく、ライブをたくさんやってきたこともあって、いい意味での慣れみたいなものが出てきたのかなと思います。ちょっと余裕が出てきたというか、歌うことや踊ることのほかに考える余裕が出てきたのが、このぐらいの時期なのかなと。
雨宮:同じようなセトリを20公演やる中で「じゃあ歌い方を変えたらどうか」「パフォーマンスで遊んだらどうか」といったことを考え、少しでもお客さんを飽きさせない工夫を探しました。公演数があるツアーをやったあとだから、(表現力も)身についたのかもしれません。ここで急成長したとは思わないですけど、ひとつ前の段階で得てきたもの、成長したものがしっかり固まっていった時期ではあったのかもしれないです。
「Lapis」のような曲があることで、TrySailの振り幅が大きくなりました
──そして、そこからどんどん現在のTrySailの形になっていくわけですが、最近はライブへの意識がより強くなったようにも感じます。
夏川:流れでいうと、「Sunset カンフー」(3rdアルバム収録)や「マイハートリバイバル」(4thアルバム収録)、それに「Ah! La Vie En Rose!!! -ア!ラ・ビ・アン・ローズ-」(5thアルバム収録)など、アップテンポでお客さんを巻き込んで煽って煽って、という楽曲がアルバムの中で増えていきました。そういった中でタイアップとして来たのが「華麗ワンターン」だったんです。
この曲が来たときに、スタッフ側も“こっち”に舵を切る覚悟が決まったんだな、だからいまこの曲を渡してきたんだなと思いました。本当にぶっ壊れ曲でしたからね(笑)。でも、「我々ならうまくやってくれるだろう」というスタッフさんからの信頼を感じましたし、いただいたからには、ライブでやりこなす人たちにならなきゃいけないと自分たちの覚悟も決まりました。
麻倉:私は「Lapis」も印象的でした。「Lapis」は逆に、TrySailの中でも“下の幅”を持たせてくれる楽曲だと思っていて。アップテンポで騒ぐ曲、盛り上げる曲は結構ありましたが、こういう下の内面をえぐるような楽曲はあまりなかったんです。「Lapis」のような闇深い曲があることによって、振り幅が大きくなったというか。いまは自分たちのことを「お祭りマッスルユニット」と言っているんですけど、「TrySailはこっちもできるし、こっちもできるんだよ」とみせられる形になったのは「Lapis」があったおかげですし、大事な曲のひとつになっています。
──確かに、振れ幅がどんどん大きくなっていますね。
麻倉:盛り上げるときは盛り上げて、世界観が強いものはしっかり聴かせる……その両方を見せていこうと方向性を話し合って決めたのも、「Lapis」が出てきてからなので。そういう意味でも、TrySailの方向性を決めるのにひと役買ってくれた曲なのかなと思っています。
雨宮:「SuperBlooooom」(ライブツアー「LAWSON presents TrySail Live Tour 2023 Special Edition "SuperBloom”」)の最終公演が終わったあとに、話し合ったんですよ。「これまでいろんな曲をやってきたけど、今後はどうしていこうか?」って。それまでは方向性をどうしようと話したことはあまりなかったんですね。
──ライブでどう楽しませるか、飽きさせないか、だけでなくユニットの方向性を話し合ったと。
雨宮:自分たちでも手応えがあったし、「アニサマ」のようなほかのアーティストさんがいる中でも、盛り上げるユニットとしての立ち位置がだいぶ確立してきた感じがありました。
「SuperBloom」も「華麗ワンターン」のようなスーパーハイテンションな曲もあれば、「Lapis」のような曲もある。それをひとつのライブの中でできるのが自分たちの強みだと、ツアーを通して確信していったんです。
マッスル曲から闇堕ち曲まで、相反する真逆のように見える両方の軸をどっちもできる。それを強みにしてやっていこうと。今後、マッスルの方向はマッスルでもっと積極的に増やしていって、闇堕ち曲も「Lapis」の後に続けていけたらいいよねと、TrySailの方向性が明確に決まったのは「SuperBlooooom」最終公演後の話し合いでした。なので、その後のインタビューで「お祭りマッスルユニット」と言い出したんだと思います。方向性が決まったからこそ、堂々と言えるようになりましたし、このあたりで自分たちの居場所を見つけたのかなと思います。でも、「お祭りマッスルユニット」がこんなに使われるとは思わなかったよね?(笑)
夏川:MCで冗談みたいに言っていたら。
麻倉:みんなに認識されるようになって。
夏川:知らない間に広まっていったよね。(最初の頃に言っていた)「トライアングルガールズユニット」は使わなくなるんじゃない?(笑)私たちももう「ガールズ」じゃないからこっぱずかしいし、「トライアングルガールズユニット」ってちょっと言いづらいし。
雨宮:意味わからないからね(笑)。「お祭りマッスルユニットTrySail」の方が、なにをやりたいのかわかりやすい。そうやってひとつの軸というか、自分たちはこういうユニットなんだと決まった方がいろいろ選択もしやすいですから、すごく良かったなと思っています。
筋肉を大きくしつつ、闇堕ち系の楽曲も増やしていきたい
──そして現在に至るわけですね。話の中にもたびたび出てきたライブに関して言えば、今年3月に「LAWSON presents TrySail 10周年出航ライブ "FlagShip" in 日本武道館」を開催しました。改めて感想をお聞かせください。
雨宮:武道館ライブのために作った新曲「声のシンフォニー」はありましたが、これまでの定番曲を中心したセトリでしたので、難しいことをなにかするよりもみんなでワイワイ楽しめたライブだったなと思います。初披露の曲が多かったり、歌い慣れていない曲がたくさん組み込まれていたり、花道があったりするとやっぱり考えることが増えるんですよ。でも、今回はそういう意味では難しくなく、武道館という会場の特性もあって、みんなをすごく近く感じながらやれました。
麻倉:本当に楽しかったです。ステージが4階建てのようになっていて、そもそも武道館はお客さんを近くに感じる作りをしているのに、上の方に立つとスタンドのお客さんがかなり近くて。体感として「遠い人がいない」と思ったので、歌っていても一体感がすごくありました。アルバムを引っ提げてのライブではなく何が来るかわからなかったので、1曲1曲にみんなが反応してくれたのも嬉しかったですね。
夏川:武道館の魔力というか効力もあって、久しぶりにTrySailのライブに来てくれた人もたくさんいました。北海道からとか、本当にいろんな人が来てくれることを知っていたからこそ、世間的に知られている楽曲を中心にやろうとセトリ会議で決めたんです。TrySailのいろんな顔を見せられましたし、TrySailってこういう活動してきたと思い出してもらえるようなライブになっていたんじゃないかなと思います。とにかく楽しかったです!
──本当にどこを切り取ってもクライマックスのようなライブだったと思います。それを受け、9月からは「LAWSON presents TrySail 10th Anniversary Tour 2025 “BestSail”」がスタートします。こちらはどのようなツアーになりそうですか?
雨宮:今度のライブツアーは、新参の人も楽しめるような曲を結構入れています。私的には武道館の“後夜祭”のような感じがあるんです。武道館ってちょっと緊張感のある場でもありましたが、ツアーは地方を回ってみんなとの距離感もより近くなりますし、気楽にお祭り騒ぎするようなライブになったらいいなと思っています。
麻倉:武道館は「表題曲を全部やる」と掲げて、知っている人の多い曲を全部やりました。なので、10周年ツアーはどうやって差別化しようと考えて、何年前に歌ったんだろう?みたいな久しぶりの曲を入れたり、TrySailの中ではマイナーで披露回数の少ない曲を入れたりしています。もちろん、最新の曲や聴き馴染みのある定番曲もありますので、新しく知ってくれた方も昔から応援してくれている方もきっと喜んでいただける幅広い内容になりそうです。ツアーですから毎会場でいろいろ試しつつ、みんなで楽しく回りたいと思います。
夏川:「出航ライブ」としてやった武道館があって、その武道館の記憶が新しい中でのBestSailツアーとなります。武道館を見ていただいた方はその思い出も持ってきて、1年を通して10周年をお祝いするぞ!って気持ちで来ていただけたら、より楽しめると思います。よろしくお願いします。
──ちなみに、今後ツアーで行ってみたい場所を挙げるならどこでしょうか?
麻倉:沖縄に行ったことがないので、沖縄に行きたいです!
夏川:沖縄は行きたいよね。逆に北の方も、北海道はあるけどほかはあまり行けていないので、青森とかも行ってみたいですね。
雨宮:私は四国に行きたいな。四国、美味しいだろうなぁ(笑)。
──ぜひ希望が叶い、美味しいものを食べられることを願っています。では最後に、11年目以降のTrySailがどういうユニットを目指していきたいかお聞かせください。
夏川:まずは継続ですね。「お祭りマッスルユニット」という冠ができたから、その名にふさわしい人間になろうと思います。
雨宮:「お祭りマッスルユニット」と言い出したのが2024年ですので、まだ固められてはいないと思うんです。言い出したばっかりの、「お祭りマッスルユニット」としては新人ですから。
夏川:まだ2年目、駆け出しの「お祭りマッスルユニット」だからね(笑)。
雨宮:そうだね。筋肉としてはまだ大きくないので、その筋肉を大きくしていきたいです。それでいて「Lapis」に続く闇堕ち系の楽曲も、上手く組み込んでいければなと思っています。「Lapis」だけのいまですら難しいので、どういう風に増やしてライブに組み込んでいくか頭を悩ませないといけないですが、そういったことにも挑んでいきたいです。
麻倉:まさにそうで、「幅を見せたい」って方向性は自分たちの中では固まっているんです。あとはどういう楽曲を持ってくるかだと思います。いまは「お祭りマッスル」の部分が注目されていますけど、「Lapis」に続く闇堕ち曲をもっと前面に出して、そのイメージも皆さんに知っていただけたらいいのかなと思っています。
──さまざまな魅力に溢れたTrySailを11年目以降も楽しみにしています! ありがとうございました。
[文・千葉研一]
CD情報
【発売日】2025年8月27日
【価格】
通常盤:4,400円(税込)
初回生産限定盤A:9,900円(税込)
初回生産限定盤B:6,600円(税込)
≪収録内容≫
【CD】
■DISC1「ALL SINGLES BEST1」
1.Youthful Dreamer
2.コバルト
3.whiz
4.High Free Spirits
5.センパイ。/HoneyWorks meets TrySail
6.オリジナル。
7.adrenaline!!!
8.WANTED GIRL
9.Truth.
10.azure
■DISC2「ALL SINGLES BEST2」
1.Free Turn
2.ごまかし
3.うつろい
4.誰が為に愛は鳴る
5.Lapis
6.はなれない距離
7.華麗ワンターン
8.Follow You!
9.マイクロレボリューション
10.そんな僕らの冒険譚!
■DISC3「MEMBER’S SELECT BEST」※初回生産限定盤A・Bのみ
1.Sail Out
2.Baby My Step
3.僕らのシンフォニー
4.Chip log
5.かかわり
6.バン!バン!!バンザイ!!!
7.Sunset カンフー
8.この幸せが夢じゃないなら
9.マイハートリバイバル
10.オルゴール (TrySail ver.)
【Blu-ray】※初回生産限定盤Aのみ
01.「BestSail」ジャケット撮影メイキング
02.特典映像