あの「東尋坊」が事前情報より、だいぶとんでもない場所だった / マジで何したらそうなるんだよ…!
北陸デスティネーションキャンペーンの実施にともなう福井県主催のプレスツアーで、私は初めて福井県に来ている。今いるのは、かの有名な東尋坊だ……!
さすがは日本一有名と言っても過言ではない断崖絶壁。事前情報では、世界でも屈指の規模の柱状節理を見られる貴重なスポット。良い眺めだなぁ。そんな感じで景色を楽しんでいたら、とんでもない話を聞いてしまった。
・東尋坊(崖)
来るのは初めてだが、様々なところで見るため、風景にはなじみがある。TVでこの場所がロケ地にされるシーンではだいたい平和的ではない状況ゆえか、画作りもそれに合わせて荒々しい雰囲気だが、実際にはのどかな景勝地だ。
駐車場周辺の土産物屋や飲食店の類からは、江ノ島に似た雰囲気を感じた。
目玉の岸壁周辺には観光客も多く、思い思いの場所で記念撮影などしている。
ほう、遊覧船もあるのか。船からの方が柱状節理をよく観察できそうに思う。次の機会にはぜひ乗ってみたいものだ。
遠景は普通に良い感じだが、険しい岩の上から真下を覗き込んだらけっこう怖い。
下の水深が深ければ落ちても平気だろうが、岸壁周辺は浅い所も多いように見える。これは助からんな。
・東尋坊(僧)
ひとしきり眺めを楽しんだところで、ふとガイドの解説が耳に入った。東尋坊の名前の由来は諸説あるようだが、その中に同名の僧侶に関連するものがあるらしい。
なんでも昔、勝山市の平泉寺白山神社に東尋坊という僧がいたという。彼は手の付けられない乱暴者で、他の僧たちから疎まれていたらしい。
そんな東尋坊を亡き者にせんと、一計を案じた僧たち。ある日、良い景色を見ながら酒を飲もうと、東尋坊を誘ってこの場所まで来たそう。
絶景を前に東尋坊は酒を飲みまくり、酔いつぶれてしまう。しかし全ては他の僧たちの計略。僧たちは泥酔した東尋坊を崖から海に投げ込み、始末したとか。
まあこんな感じの手ごろな断崖絶壁があるなら、起きそうな話である。で、その平泉寺白山神社ってのは何処にあるんです……? 酒飲みに来るくらいだから近いんですよね?
・平泉寺白山神社
ということでやってきました、平泉寺白山神社! 約1300年前に創建された、非常に長い歴史のある神社だ。
拝殿の周辺を覆う厚い苔のエリアが印象的。
ここの一の鳥居より少し手前に、かの東尋坊の屋敷跡と伝えられる遺跡がある。
周辺からは中世の石畳も発掘されているそうだ。ここは宗教都市だったらしい。それにしても……
ここ、東尋坊(崖)からだいぶ遠かったぞ? 酒持って宴会に来るくらいだから近所にあるのかと思っていたが、Google Mapによれば48㎞。徒歩だと11時間かかるもよう。
私は車で移動したが、平安時代の僧たちなら徒歩だろう。酒も土器だか陶器だか、何にせよ重く嵩張る容器で運んだに違いない。
いや、ここはかつての越前国。栄えていたので、もしかしたら酒は現場付近で入手できたかもしれない。しかしそれでも48㎞先まで……? いくら強いとはいえ1人の僧を始末するために……!? 確実に1泊2日か2泊3日の行程だろう。東尋坊に対する圧倒的な殺意を感じる……!
いったいどれほどやらかしまくったら、それほどのヘイトを集めるのか。東尋坊、そうとうな悪漢である。そして、そんな僧の名を景勝地につけてしまう攻めた平安センス。
ところで、東尋坊(崖)は平安時代にすでに約50キロ先の山の中の神社にも知れ渡っている映えスポットだったわけだ。決死の宴会場に選ばれるくらいだしな。
その時点でこの崖を指す何らかの名称があっても良さそうなもの。東尋坊(崖)は東尋坊(僧)が突き落とされるまで、どう呼ばれてたのだろうか。
実は少し調べてみたが、700年とか800年頃の周辺の地図を見つけられなかった。越前国ほどの大国で地図が出てこないとは思わなんだ。
何にせよ興味深い場所だ。皆さんも東尋坊に行ったら、その名にまつわる伝承を持つ平泉寺白山神社もマストだ!
参考リンク:北陸デスティネーション、福井県公式観光サイト、平泉寺白山神社
執筆・撮影:江川資具
Photo:福井県、平泉寺白山神社 / RocketNews24.
ScreenShot:GoogleMap
▼平泉寺白山神社の雰囲気はガチ。だいぶ広いので歩きやすい靴で来た方が良い。