目指すは五輪金メダル!モーグル界の新星・田口友麻が抱く世界一への想い
「オリンピックで金メダルを獲りたい」と力強く語るモーグル・田口友麻さん(以下、田口)。全日本選手権では2023年にシングルモーグルで優勝、2024年にはデンタルモーグルで優勝し、若くして2年連続でワールドカップに参戦している大学生スキーヤーです。
小さな頃に両親の影響で始め、滑ること、エアを飛ぶことが大好きで続けてきたスキーは、19歳の今、田口さんにとってどのようなものになっているのか?ヨーロッパでの経験、壁を乗り越え続けて見えてきた目標への道筋など、等身大の彼女に迫ります。
モーグル 田口友麻選手
両親の影響でスキー場へ
ーースキーを始めたきっかけを教えてください。
田口)両親の趣味がスキーだったこともあって、3歳からスキー場に通っていました。そこで知り合った同世代の女の子にチームがあることを聞いて、小学1年生でチームに入り競技としてのスキーを始めました。チームに入ったばかりの頃は、朝から夜までずっとスキーをしていましたね。
地元は東京都ですが、チームの拠点は新潟県でしたので、毎週金曜日の夜に新潟に移動し練習して、日曜日の夜に東京へ戻り、月曜日から学校に行く生活でした。
小さい頃の田口さん
ーーすごくハードな小学生生活ですね!それだけ大好きなスキーですが、はじめはどんなところを魅力に感じていましたか?
田口)いまでもそうなのですが、ジャンプをして飛んだときに空中でふわっと浮く感覚がとても好きですし、コブと呼ばれる起伏のある斜面で、自分が速く滑れたと感じられることがとても楽しいです。
ーーいまでは全日本チャンピオンの田口さんですが、小さい頃からやはりよい成績を残されていたのでしょうか?
田口)そんなことは全然ないです。モーグルの国内大会は、『A級』と『B級』でわかれています。同世代の選手たちが小学5年生あたりからA級に上がっていく中、1人だけまったく成績がでない時期がありました。中学1年生の頃やっとA級に上がり、中学3年生の頃にA級でも結果が出るようになったのですが、高校1年生で初めて海外遠征をしたときには、参加した大会では最下位に近い成績で「自分はこんなに戦えないんだ」というのを知りました。
それでも、その大会では難易度の高い技に挑戦し、まわりから「チャレンジできたことが良かった」って言ってもらったことが印象に残っていますね。そこで自分の力を知る経験、チャレンジできた経験があったからこそ、その後の成長に繋がったのではないかと思っています。
誰が見ても「きれい」な滑りを目指す『モーグル』の魅力
ーー現在の田口さんはモーグルのどのようなところに魅力を感じていますか?
田口)モーグルは採点競技なので、スピードだけではない、誰が見ても「きれいな滑りだな」と思えることが魅力です。ずっと足を開いて滑っている人よりも、閉じて滑っている人の方がきれいに見え、タイムが遅くても順位が上になることがよくあります。
2人で同時に滑るデュアルモーグルではよりスピードが重視され、迫力のある滑りが楽しめます。その迫力の中で「こんなに速いのに安定して滑れるんだ」と感じられると、モーグルの魅力にも皆さんハマっていただけるのではないかと思います。
ーーその日によって滑るときの感じ方も変わりますか?
田口)コースによっての変化が大きいです。特にワールドカップは毎週試合があり、コースが変わるので、「得意そうだな」と思うコースもあれば、「絶対無理!」思ってしまうようなコースもあります。斜度、雪質がそれぞれ違いますし、ジャンプ台の大きさは見た目ではあまりわかりませんが微妙な違いがあり、落差が大きいときは怖さも感じます。
見た目では怖くても滑ったら意外と平気なコースもありますし、逆もありますが(笑)。
ーーこれまで滑った中で、好きなコースはありますか?
田口)スウェーデンのイドレです。氷のような雪質ですが、硬くてコブが小さいので、身体が小さい私でも滑りやすくて好きです。
世界での経験を通して生まれた自信
ーー昨シーズンからワールドカップに参戦している田口さん。世界での経験を通して感じていることはありますか?
田口)日本の大会では、予選で小さなミスをしても決勝に進むことができ、決勝でベストの滑りができたらよい成績が出ていましたが、ワールドカップでは予選で少しでも失敗したら決勝に行くことができません。
予選からノーミスで攻めた滑りをしないといけない、ということが難しく、昨年はまわりのレベルの高さに圧倒されてしまったり、自分の滑りがわからなくなったりすることが多くありました。
ーー壁にぶつかったとき、自分の気持ちを前向きにする秘訣はありますか?
田口)試合が終わるたびに両親に電話して、大号泣して悔しい気持ちや嫌な気持ちを全部話していました。単純で忘れっぽいところがあるので、悔しさは残りますが、話して、すっきりして、忘れるということを毎試合していましたね。
今年は自分のレベルも上がった自信があるので、「ちゃんと滑れば大丈夫」と思えています。まだ納得のいく結果は出ておらず悔しい気持ちもありますが、減点のポイントもわかり、自分が戦えるようになっていることを感じながら前向きな気持ちで戦えています。
「オリンピックで金メダルを取る」本気で言えるようになったきっかけ
ーー将来こんな選手・アスリートになりたいという想いはありますか?
田口)“応援される選手”になりたいです。成績が出て応援されるというのはもちろんですが、人としても応援される選手になりたいと思っています。
それは当たり前のことを当たり前にすること、挨拶、練習態度、スキーに向き合う姿勢など、日常生活の1つ1つの行動をしっかりとすることで、誰が見ても「この人は真剣にスキー頑張ってるんだな」と思ってもらえるような人になりたいです。常に自分を客観視して、どう見られてるかというのを意識しながら行動するようにしています。
子どもたちにスポーツの楽しさを伝えることにも今後取り組んでいきたいと思っているので、そうした意味でも“応援される選手”というのは1つの大きな目標です。
ーー19歳の今、目標にしてることは?
田口)モーグル始めたばかりの頃は、「オリンピックで金メダル」と、口先だけで言っていました。それを本気で実現したいと思ったのは、平昌オリンピックで原大智選手(2018年/スキー・フリースタイル)が銅メダルを獲得した瞬間です。滑り終わったあと、結果が出るまでのわくわく感がテレビ越しに見てもすごく楽しそうで、「自分がもし金メダルだったら、すごく嬉しいんだろうな」ということを感じ、本気の目標に変わりました。
日本からオリンピックに出れる人数は4人で、世界選手権も同じ出場人数です。まずは今シーズンのワールドカップで日本人4位以内に入って世界選手権に出場し、自信を付けた状態で2026年ミラノ・コルティナダンペッツォオリンピックのシーズンに向かえたらと思っています。
ーー国民全体がわくわくと期待しながら金メダルの瞬間を待つ、そんなシーンを田口さんが実現することを期待しています!ありがとうございました!
鍼のメーカー『セイリン』がスポンサーに
ーー鍼治療や鍼灸はされていますか?
田口)病院で鍼治療をしたことないのですが、セイリンさんから貼るタイプのものをいただいて、今回の遠征はほぼ毎日貼っていました。
遠征先でもセイリンのグッズを使っています。
田口)昨シーズンからワールドカップでの転戦が始まり、飛行機移動が長くて足がむくんでしまったりしていました。チームのトレーナーにツボの場所を教えてもらい、何回もの移動で貼る場所を少しずつずらしながら自分に合うところを探し、いまではすごく楽になっています。
ーー自分でケアできるのは移動や転戦の多いアスリートにとってすごくポジティブですよね。
オリエンタルマート by セイリン