介護職で入浴介助ばかり担当するのはなぜ?入浴介助を避けたい場合の職場選びのポイントも合わせて解説!
介護職で入浴介助ばかりになるのはなぜ?
介護職として働いている方の中には、「なぜ入浴介助ばかり担当することになるのか」と疑問に感じている方も多いでしょう。入浴介助は体力的にも精神的にも負担が大きく、疲労が溜まりやすい業務でもあります。
入浴介助の担当が特定の職員に集中してしまう背景には、施設の特徴や人員配置、研修制度などいくつかの要因が関係している場合があります。
施設の特徴による影響
入浴介助が特定の時間帯に集中する理由のひとつとして、デイサービスや特別養護老人ホームなどが「午前中の入浴」を標準的なサービスとして組み込んでいることがあげられます。
送迎や食事提供との兼ね合いから、午前中に入浴を組み込む施設が多く見られます。午前の時間帯であれば他業務と重ならず、効率的なサービス提供が可能であるためです。結果として、早番スタッフが浴槽の準備を担当し、日勤帯の職員が入浴介助のピーク時間をカバーするというローテーションが定着してしまいます。
また、夜勤帯は入浴設備が停止しているため、必然的に日中に入浴業務が集中します。このような施設運営の構造上、「早番=浴室担当」という図式が生まれやすく、同じ職員が継続して入浴介助を担当することになるのです。
人手不足のため
介護業界の深刻な人手不足も、入浴介助の担当が固定化される大きな要因です。2023年度の介護労働実態調査によると、事業所全体で人員を「不足」と感じる割合が64.7%に達し、個別の悩みでも「人手が足りない」が49.9%で最多となっています。
入浴介助は本来であれば、安全性を考慮して二人体制で行うことが望ましい業務です。 しかし、常時フロアの人員配置がギリギリの状況では、「浴室は最低1人で回す」という運用にならざるを得ません。
結果として、同じ職員が連続して入浴担当となるなど、業務の偏りが生じやすくなっています。人手不足が慢性化することで、入浴介助の担当者固定化と負担の集中が深刻化しているのが現状です。
新人研修のため
介護施設によっては新人研修の一環として、新人職員に入浴介助を重点的に任せる場合もあります。これは入浴介助を通じて、利用者ごとに「できること・介助が必要なこと」をそれぞれ把握してもらう事を目的としている場合が多いです。
利用者さん一人ひとりの特徴を理解し、入浴介助だけでなく食事介助やトイレ介助など他の業務にも学びを活かして欲しいという意図から、新人介護職員に入浴介助の経験を多く積ませる施設があるのです。
こうした影響で、新人職員が入浴介助を多く担当する傾向があり、結果として特定の人に業務が集中する場合が多くなることがあります。
きつい入浴介助の負担を軽減する工夫と対策
入浴介助は、介護業務の中でも特に体力を消耗し、腰痛などの負担が大きくなりがちです。 ただし、適切な対策を講じれば、その負担をかなり軽減できます。ここでは、入浴介助の負担を減らすための具体的な工夫と対策について詳しく解説していきます。
定期的な着替え・水分補給でセルフケア
入浴介助中は高温多湿の環境で長時間作業を行うため、熱中症や脱水症状のリスクが高まります。
厚生労働省の熱中症対策リーフレットでは、1日にコップ6杯(約1.2リットル)を目安としたこまめな補水を推奨しています。
また、汗で濡れたユニフォームを長時間着用し続けると、体温調節がうまくいかず、体調不良の原因になります。午前・午後での着替えを習慣化することで、体のコンディションを保ちやすくなります。
可能な範囲で、すぐ飲める位置に水分補給用のペットボトルを置く、水分補給の時間を決めるなど対策を行っていきましょう。
ボディメカニクスを実践する
入浴介助による身体への負担を軽減するためには、正しいボディメカニクスの実践が不可欠です。 ボディメカニクスとは、身体の構造や力のかけ方を理解し、腰や関節に負担をかけずに介助動作を行うための基本姿勢や動作のことです。
厚生労働省の労働災害発生状況分析によると、社会福祉施設での死傷災害のうち約34%が「動作の反動・無理な動作」、約31%が「転倒」となっています。これらの事故は、人的要因・環境要因などが重なって起こります。
こうした介助中の怪我を避けるためにも、入浴介助の際には無理な動きをせず、高齢者の様子を確認しながら安全で確実な動きを行うことを心がけましょう。
入浴介助における正しいボディメカニクスの基本として、広いスタンスで重心を落とし、安定した姿勢を保つことが重要です。利用者を移乗する際はきちんと自分の身体や介助機器で支え、体重を利用して滑らせる・回すを意識した動作を徹底し、決して「持ち上げない」ことが大事になってきます。
こうした正しいボディメカニクスを実践することによって自分自身の身体的な負担を軽減しながら安全な介助を実現することができるようになります。
また、入浴介助の前には周りの環境を事前にチェックすることも大切です。水中では浮力が働く一方で、足元が滑りやすくなるため、より慎重な動作が求められます。
浴室内では滑り止めマットの設置や手すりの活用を心がけることで、転倒や無理な動作による反動による怪我や事故を大幅に減らすことができるでしょう。
介護用品・介助機器を活用する
近年、介護現場でのロボット技術や介助機器の導入が進んでおり、入浴介助の負担軽減にも大きく貢献しています。 2024年度の調査では、施設系(入所型)の80.7%が電子ケア記録ソフトを日常利用し、ベッドセンサーは67.4%、Wi-Fi環境は65.4%が整備済みと報告されています。
入浴介助専用の機器としては、チェアー浴リフトやストレッチャー浴装置が特に効果的です。これらの機器を適切に組み合わせることで、職員の持ち上げ動作を最小限に抑えられ、腰痛のリスクを大幅に低減することが期待できます。
また、最近では見守りセンサーや体位変換支援機器なども普及しており、これらは入浴前後の準備や移乗作業の負担軽減に役立っています。こうした機器は単独で使用するよりも、複数を組み合わせて導入することで、より大きな効果を発揮します。
国や自治体による介護ロボット導入支援も年々拡充されており、初期投資の負担を軽減する制度が整備されています。入浴介助だけでなく介助全体の負担軽減に力を入れている職場かどうかを見極めたい場合には、求人票や施設のWebサイトやSNS等を確認し、介護ロボットやICTの導入実績などの記載を事前に確認してみましょう。
入浴介助を避けたい場合の職場の選び方
入浴介助の負担を避けたい、または軽減したいと考える介護職の方にとって、職場選びは非常に重要な要素です。介護保険制度では様々なサービス形態が設けられており、それぞれで入浴介助の頻度や負担の程度が大きく異なります。ここでは、入浴介助を避けたい場合の具体的な職場選びのポイントについて詳しく解説します。
入浴介助サービスがない・介護度が低い職場を選ぶ
介護保険制度では、サービス内容によって入浴介助の有無が明確に区分されています。入浴介助を避けたい場合は、まずこの制度上の区分を理解することが重要です。
介護報酬では「訪問介護(生活援助中心型)」や「夜間対応型訪問介護」など、入浴介助を含まないサービス区分が設けられています。 一方、入浴介助が必要な場合は「訪問入浴介護」として別建てで算定される仕組みになっています。
入浴介助を避けたい場合は、要支援レベルが低く、自分で日常生活を問題なくこなせる利用者が中心となる職場を選ぶのが適しています。住宅型有料老人ホームなど、自立度の高い利用者が多い施設では、入浴はセルフケアが原則となっており、介護度が高い利用者が多い施設と比較すると介助の負担が減ります。このような職場では、介護職の主な役割は安全確認と環境整備が中心となり、直接的な入浴介助の頻度は比較的少なくなります。
夜勤専従や介護助手など入浴介助がないポジションを選ぶ
夜勤専従という働き方は、入浴介助をある程度避けながら介護の仕事を続けたい方におすすめです。 日本医労連の2024年夜勤実態調査によると、介護施設の多くが日勤と夜勤を二部に分けて交代する二交替夜勤を導入していますが、そのうちで勤務をしている割合が6割以上を占めています。
つまりこれは二交替夜勤制度を導入しているものの、6割の企業で人手が足りておらず1人が夜勤と日勤にまたがって勤務をしている状態を指します。ですが逆に、夜勤専従を希望する人にとってはチャンスが多く、施設側のニーズが高い状態を意味しています。
夜勤帯の業務内容は日中とは大きく異なります。利用者が就寝している時間帯のため、清潔ケアや入浴介助は一切行いません。夜勤専従者の主な業務は、起床支援、排泄介助、定期的な巡視、緊急時対応などです。
人手不足が深刻化している現在、夜勤専従の求人は好条件で募集されることが多く、日勤と比較して時給や月給が高く設定されている場合も少なくありません。これにより、入浴介助による負担を避けながら介護職を続けるという働き方が可能になります。
また、介護助手というポジションも選択肢のひとつとしてあげられます。介護助手は原則として身体介護を行わず、環境整備や配膳、洗濯などの周辺業務を担当します。そのため直接入浴介助に関わることは少なく、介護現場で働きながら身体的負担を大幅に軽減できるでしょう。
入浴専任スタッフがいる職場を選んで負担を軽減する
入浴介助の負担を軽減する最も効果的な方法のひとつは、入浴専任スタッフが配置されている職場を選ぶことです。近年、介護現場では業務の専門化と効率化が進んでおり、入浴介助を専門に担当するスタッフを配置する施設が増加しています。
訪問入浴介護では、看護師1名と介護職2名の3人チームが専用浴槽を携行し、フロア職員とは完全に分業する仕組みが確立されています。 このサービス形態では、通常の介護職員が入浴介助に関わることは基本的にありません。
また、特別養護老人ホームなどの入所系施設でも、「バスヘルパー」をパート職員として配置し、常勤介護職の腰痛リスクを減らす取り組みが広がりつつあります。このような職場では、入浴介助の専門性を持つスタッフが集中的に業務を担当するため、他の職員への負担分散が図られています。
求人票を確認する際は、「入浴専任スタッフ在籍」「業務分担制導入」などの記載に注目しましょう。これらの働き方を導入している職場では、入浴介助への過度なローテーションを避けながら、介護の専門性を磨くことができる可能性が高いです。
さらに、入浴専任スタッフがいる職場では、入浴介助に関する研修や技術向上の機会も充実している傾向があります。将来的に入浴介助のスキルを身につけたい場合でも、段階的に学習できる環境が整っているため、無理のないキャリア形成が可能になるでしょう。
まとめ
介護職で入浴介助ばかりになる背景には、施設の運営体制、深刻な人手不足、新人研修制度という3つ理由が考えられます。特に午前中の入浴スケジュール、人員配置の運用の関係、研修を目的としてスタッフを固定することなどの複数の要員が重なって、特定の職員への負担集中を生み出しています。
しかし、適切な対策により負担軽減が可能です。 定期的な水分補給と着替え、正しいボディメカニクスの実践、チェアー浴リフトなどの介護機器活用により、身体的負担と事故リスクを同時に減らせます。
もし介護職に応募する際や転職の際に、入浴介助を避けた業務を希望する場合は求人表の情報を事前によく確認しましょう。要支援中心の施設、夜勤専従ポジション、入浴専任スタッフがいる職場を選択するなど、その施設の特徴を理解することで入浴介助の頻度を大幅に減らしながら介護の仕事を続けられます。自分に適した働き方を見つけることが、長期的なキャリア形成につながるでしょう。