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【高齢者の食中毒】症状と予防・対応の基本とは?在宅介護で気をつけたい3つの対策

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【高齢者の食中毒】症状と予防・対応の基本とは?在宅介護で気をつけたい3つの対策

高齢者の食中毒は、若い世代と比べて重症化しやすく、命にかかわる危険性もある深刻な問題です。年齢を重ねると体の機能が変化し、食中毒にかかりやすくなるだけでなく、症状が重くなって入院が必要になることも珍しくありません。

この記事では、高齢者の食中毒リスクを正しく理解し、効果的な予防方法をお伝えします。毎日の食事や衛生管理に役立つ実践的な情報をまとめました。

高齢者の食中毒リスクとは?年齢による影響と注意点

高齢者が食中毒にかかりやすい理由

年齢とともに体の機能が変化するため、高齢者は食中毒にかかりやすくなります。

大きな要因のひとつとして、免疫力の低下が挙げられます。年をとると体内の免疫細胞の働きが弱くなり、細菌やウイルスに対する抵抗力が大幅に下がります。

農林水産省の2022年の調査によると、高齢者は健康な成人と比べて、1,000分の1という非常に少ない菌でも食中毒を起こす可能性があることが分かっています。

また、消化機能の変化も重症化につながる原因のひとつです。胃酸は食べ物と一緒に入ってきた殺菌する大切な役割を果たしていますが、年をとると胃酸の分泌量が減ってしまいます。その結果、胃酸で殺菌されなかった菌が腸まで届き、食中毒を引き起こしやすくなります。

なお、胃酸の分泌を抑える薬を飲んでいる場合、食中毒のリスクがさらに高まります。

食中毒が重症化するケースとその症状

高齢者は食中毒によって症状が重症化しやすく、若い人なら軽い下痢や腹痛で済むような場合でも、高齢者は命にかかわる状況になってしまうことがあります。

脱水症状 高齢者は体内の水分を保つ力が弱くなっているため、軽い下痢でも短時間で深刻な脱水状態になる可能性があります。脱水が進むと、意識がぼんやりしたり腎臓の働きが悪くなったりして、場合によっては生命に危険が及びます。 電解質バランスの異常 ナトリウムやカリウムなどが大量に失われると、心臓の働きに影響して、不整脈や心停止のリスクが高まります。特に心臓病や腎臓病を患っている方は、より深刻な状態になる可能性があります。 栄養失調 食事の量が減ったり消化吸収がうまくいかなくなったりして、短期間で栄養状態が悪化することがあります。特にもともと栄養状態が良くない方の場合、食中毒をきっかけに急激に体力が落ちて、寝たきりになってしまうケースも報告されています。

一人暮らしの高齢者は特に注意が必要

独居高齢者の食中毒リスクは、同居家族がいる場合と比較して格段に高くなります。

厚生労働省の調査では、在宅高齢者の手洗い習慣について懸念が示されており、特に独居高齢者では基本的な衛生管理が不徹底になりやすいことが指摘されています。

一人暮らしの高齢者が直面する問題として、食品の管理が難しいことがあげられます。冷蔵庫の整理が難しく、賞味期限を過ぎた食品を食べてしまったり、適切な温度で保存できていなかったりするケースがよく見られます。

また、認知機能が低下している場合、食品をいつ買ったか、いつ作ったかを忘れてしまったり、食べ物が傷んでいるかどうかを適切に判断できなくなったりします。

加えて、家族や友人との接触が少ない一人暮らしの高齢者は体調の変化に気づいてもらえず、食中毒の初期症状を見逃してしまう可能性があります。

高齢者の食中毒を防ぐ!予防のための3つの基本原則

清潔な環境の作り方

食中毒予防の第一歩は、清潔な環境を保つことです。高齢者の場合、体の機能が落ちて掃除が大変になりがちですが、以下の重要なポイントを押さえることで、効率よく衛生的な環境を整えることができます。

シンクとまな板の管理 シンクは細菌が繁殖しやすい場所なので、使った後は必ず洗剤で洗い、除菌剤で拭き取りましょう。まな板は、肉や魚を扱った後は必ず熱湯をかけて消毒し、できれば肉魚用と野菜用を分けて使うのが理想的です。 手洗いの徹底 料理前、食事前、トイレの後、外出から帰ったときには必ず手を洗います。高齢者の場合、関節が動かしにくくて十分な手洗いが難しいこともあるので、手洗い補助具を使ったり、アルコール系の手指消毒剤を併用したりするのも効果的です。 ふきんやタオルの管理 濡れたふきんには細菌が繁殖しやすいため、使った後はよく洗って、できるだけ早く乾かします。できれば、料理用、食器用、掃除用に分けて使い、定期的に新しいものに交換することをおすすめします。 冷蔵庫内の清掃 月に一度は冷蔵庫の中を空にして、薄めた漂白剤で拭き掃除をします。特に野菜室や肉魚を保存する部分は、細菌が繁殖しやすいので、こまめな清掃が必要です。 食器洗浄後の完全乾燥 水分が残っていると細菌が繁殖する原因になるため、自然乾燥だけでなく、きれいな布巾で水分を拭き取ることが効果的です。食器乾燥機がある場合は積極的に使って、高温で乾燥させることで除菌効果も期待できます。

保存と温度管理の工夫

高齢者は記憶力や身体機能の低下により食品管理が難しくなることがありますが、管理方法をシステム化することで安全性を高めることができます。

冷蔵保存の基本としては、購入した食品を帰宅後すぐに冷蔵庫へ入れることを意識しましょう。特に夏場は、車内や室内の高温により細菌が急速に繁殖するため、買い物から帰宅までの時間を短縮し、保冷バッグの使用を心がけます。

特に50〜60℃の温度帯では細菌が増えやすいため、食品をそのまま放置しないよう注意が必要です。

この温度帯では細菌が急速に繁殖するため、調理後の食品は2時間以内に冷蔵庫に入れるか、保温機能のある調理器具で60℃以上を維持します。

高齢者の場合、調理後に食べきれずに残す場合が多いため、小分けして冷蔵保存し、再加熱時は中心温度が75℃以上になるまで十分に加熱します。

なお、一度解凍した食品は細菌が繁殖しやすいため、再冷凍は避けましょう。

購入した食品は購入日や開封日をラベルに記入し、冷蔵庫内の見やすい場所に配置します。高齢者には小さな文字が見えにくいため、大きく分かりやすい表示を心がけましょう。

加熱・消毒の徹底

適切な加熱は、食中毒を防ぐうえで効果的な方法のひとつです。

加熱の基本は、食品の中心温度を75℃以上で1分間以上維持することです。特に肉類や卵料理では、中心部まで完全に火を通すことが必要です。

高齢者向けのやわらかい肉料理では、細かく刻んだり、長時間煮込んだりすることで、しっかり火を通しながら食べやすく仕上げることができます。

また、生食を避けることも重要です。高齢者は免疫力が低下していることが多く、生卵や生魚、生肉などの生食はできるだけ控えるのが安心です。

電子レンジを使用した加熱では、加熱ムラに注意が必要です。食品をかき混ぜながら段階的に加熱し、全体が均等に温まるよう工夫します。特に冷凍食品や作り置きの再加熱では、通常よりも少し長めに加熱し、全体がしっかり温まるようにしましょう。

ノロウイルスには塩素系漂白剤による除菌が有効であり、調理器具や作業台の消毒には、薄めた漂白剤を使用することが推奨されます。

ただし、漂白剤使用後は必ず水拭きを行い、残留塩素を除去することが重要です。

調理器具の加熱消毒も効果的な予防策です。まな板や包丁は使用後に熱湯をかけることで、細菌を確実に死滅させることができます。

食器についても、食器洗浄機の高温コースを使用したり、熱湯消毒を行ったりすることで、より高い安全性を確保できます。


高齢者が食中毒にかかったときの対応と受診の判断

食中毒が疑われるときの対応

高齢者に食中毒の症状が見られたら、迅速で適切な対応が回復の鍵になります。高齢者の食中毒症状は、一般的な急性胃腸炎の症状とは違う場合があるため、わずかな変化も見逃さないよう、注意深く様子を見ることが大切です。

下痢、嘔吐、腹痛、発熱などの一般的な症状に加えて、高齢者では食欲がない、全身がだるい、意識がぼんやりするといった症状から始まることが多くあります。

普段と比べて元気がない、ぼーっとしている、食事を摂りたがらないといった変化も、食中毒の初期症状である可能性があります。

脱水症状の早期発見 高齢者の脱水症状のサインには、口の中の乾燥、皮膚の弾力性の低下、尿の量が減る、意識状態の変化などがあります。皮膚を軽くつまんで離したときにすぐに戻らなければ、脱水が進んでいる可能性があります。 水分補給の方法 嘔吐がある場合は、一度に大量の水分を取ると嘔吐を誘発する可能性があるため、少量ずつ頻繁に摂取することが基本です。

経口補水液や、薄めたスポーツドリンクが理想的です。もし手に入らない場合は、水1リットルに塩3グラム、砂糖40グラムを溶かした手作りの経口補水液も役立ちます。

食事 症状が強い間は無理に食べさせず、胃腸を休ませましょう。症状が軽くなってきたら、おかゆやうどん、バナナ、すりおろしたリンゴなど、消化の良い食品から始めて、少しずつ普通の食事に戻していきます。 薬の使用 市販薬は自己判断で使わず、必ず医師に相談しましょう。特に下痢止めは、体内の毒素を出しにくくする恐れがあるため、医師の指示がない限り使用は控えましょう。解熱剤についても、高齢者では副作用のリスクが高いため、医師に相談が必要です。

医療機関に伝えるべき情報

医師が適切な診断や治療を行うためには、受診時に正確で詳しい情報を得ることが欠かせません。高齢者の場合、本人がうまく説明できないこともあるため、家族や介護者が情報を整理して代わりに伝えることが大切です。

症状については、いつ・どのように始まったかなど、時系列をはっきり伝えることがポイントです。例えば、「昨日の夕方から食欲がなく、今朝から水っぽい便が3回、微熱が37.5度」といった具体的な情報が診断に有用です。

食事内容の詳細な記録も重要な情報です。発症前72時間以内に摂取した食品を可能な限り詳しく記録し、特に生ものや加熱が不十分だった食品、外食の有無、保存状態に不安があった食材については詳しく伝えましょう。

既往歴と現在服用中の薬がある場合や、同居家族の症状の有無、最近の旅行歴、介護サービスの利用状況、集団生活の有無などについても伝えておくと治療方針の決定や感染経路の特定に役立ちます。

家庭での再発防止と見守りの工夫

食中毒が治った後は、再発を防いで健康を保つための継続的な管理が大切です。特に以下のような対策が効果的です。

食事管理の見直し 冷蔵庫内の食品をすべて点検し、賞味期限切れや保存状態に問題のある食品は捨てます。調理器具や食器類も徹底的に洗浄・消毒し、清潔な環境を整えましょう。 栄養状態の回復 食中毒で失われた栄養素を補うため、バランスの取れた食事を心がけます。消化にやさしい食品を中心に、無理のない食事計画を立てましょう。 健康チェック体制を整える 体温、血圧、体重の定期的な測定に加えて、食欲、お通じの状況、活動レベルなどの変化を記録し、早めの異常発見に努めます。特に一人暮らしの高齢者には、定期的な見守りや健康チェックの仕組みを整えましょう。 緊急時の準備 万が一の時にすぐ連絡・対応できるよう、緊急連絡体制をあらかじめ整えておきましょう。また、定期的な受診により、医師による継続的な健康管理を受けることも大切です。 介護サービスの検討 自宅での食事管理に不安を感じる場合は、ショートステイや施設への入居を検討するのも一つの方法です。これらの施設では栄養士による食事管理や、厳格な衛生基準に基づいた調理が行われているため、食中毒のリスクを大幅に減らすことができます。

まとめ

高齢者の食中毒は、年齢による免疫力の低下や消化機能の変化により、重症化しやすい特徴があります。

予防の基本は、清潔な環境の維持、適切な温度管理、十分な加熱処理の徹底の3つです。症状が現れた場合は、脱水症状に注意しながら適切な水分補給を行い、必要に応じて医療機関に相談しましょう。

家族による継続的な見守りと、日常的な衛生管理の実践により、安全で安心な食生活を実現できます。

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