憧れの離島・利尻島。漁師が作った高級ヴィラがすごい。獲れたて海の幸と自然との一体感
最果ての地、利尻島。日本百名山の筆頭を飾る利尻岳と澄み切った海。夜は空を覆う満天の星空。憧れの島利尻島には国内外からのツーリストが押し寄せるが、利尻にはホスピタリティホテルがない。そんな中、漁師が作った1棟貸の高級ヴィラがやばいと人気に。
「最果ての地」でしか体験できないホスピタリティ
利尻島でもっとも神聖な場所「神居岩(かむいいわ)」
千歳空港から50分。空の便はJALが2便、ANAが1便だけ。あとは稚内からのフェリーだけ。
利尻の夏は短く、6月から9月。ツーリストはここに集中することになる。利尻島にはホスピタリティホテルが少ない上に、「日本百名山」の1番目にリストされる利尻岳を有する。登山ファンには聖地でもある。
インバウンドも加わり、夏から秋にかけては宿泊費が高騰する。エリアによってはカプセルホテルのような布団一枚だけのスペースでも1万円以上することも。インバウンドにとっては円安で割高感はないのかもしれない。しかし国内のツーリストにとっては割高感は否めない宿が多い。
そんな利尻についに大人の旅人を満足させる高級ヴィラがオープン。
利尻島でも最も神聖な場所といわれる神居岩(かむいいわ)の横に佇むVILLA KAMUI。神居岩はアイヌの時代から、守神として崇められてきたという。利尻で20年、漁師を営む小坂善一さん(47歳)が作った一棟貸しの高級ヴィラを訪問してきました。
ここでしか食べれない利尻食−ウニ、アワビ、昆布
ウニにはオスとメスがあり濃いオレンジがオス
このヴィラの最大の魅力は「食」。漁師が作った宿だけあって、食材は漁師だから可能なメニューがウリ。
7月8月の利尻はウニの季節。利尻昆布もブランド昆布として有名ですが、その利尻昆布を食べて育ったエゾバフンウニが美味しくないわけがない。
利尻で取れるウニは2種類あり、エゾバフンウニとムラサキウニ。ここ利尻ではエゾバフンウニを“ガゼ”と呼び、長いトゲトゲを持つムラサキウニを“ノナ”と呼ぶ。
好みは分かれるところですが、やはり濃厚な旨味と甘味が特徴のエゾバフンウニが人気。ちなみに島の人はさっぱりした味わいのノナを好む人も多い。
2メートルをゆうに超える利尻昆布を1枚ずつ天日干しする
小坂さんの本業は漁師。夏は利尻昆布漁とウニがメイン。小坂さんが獲った新鮮なウニが堪能できる。8月のウニ漁が終わればアワビ漁が始まりる。
つまり、VILLA KAMUIでは、漁師自ら水揚げした利尻の極上食材が堪能できる。
ウニ好きにはたまらない。流通している多くのウニは保存のためにミョウバンが使われている。たまにウニ特有の苦味が苦手という人がいますが、あれはミョウバンによるえぐみ。
小坂さんは自分で獲ったウニの一部を漁協から買い戻し、その日のうちに塩水パックにつけてミョウバンを使用せずに鮮度を保っている。新鮮なウニはまったくえぐみがなく、弾力があり、とろけるような濃厚さと甘さ。
それらの食材の旨みを最大限引き出してくれるのが、利尻昆布の出汁(だし)。京都の料亭ではかかせない昆布だが、高級料亭が好んで使う利尻昆布をたっぷり使った味噌汁が小坂さんの自慢。
「これでもかというくらいに昆布を使っているので、ほんとうに美味しいですよ」
本業は漁師。年間を通して利尻昆布、エゾバフンウニ、アワビなどの漁を行う。
特に夏の間は、昆布とウニ漁が重なる時期。朝3時から昆布を水揚げし、陽がのぼればウニ漁。午後は干した昆布の回収がある。漁師の仕事は自然相手なので過酷だ。
「自分で獲った海産物を食べてもらえる場所を作りたい。利尻の海の幸を最高の状態で知ってもらうためにはどうしたらいいか、その答えの一つがこのヴィラでした」
ここでしか体験できないオホーツク海との一体感
オホーツクを望むデッキの横にはサウナも設置
神居地区の海外沿いに位置するヴィラ。眼下には海、周囲は畑。朝夕はリビングから海鳥の往来を見ることができる。夜は打ち寄せる波の音と雲がなければ満天の星空。
「自然の中で生かされているんだな、と感じてもらえると思います」
都会の騒音とギラギラのネオンの中で生活を送る私たち。静寂と暗闇の中に存在する自然音や星あかりを体感できる貴重な時間かもしれません。
ここでしか過ごせない上質な時間
すべて北海道産の素材にこだわった建物
平屋建てのVilaはおおよそ130平米のゆったりとした作り。なにより、すべての部屋から海が見渡せる大きな窓。デッキにはオーシャンサウナ。眼下に広がるオホーツクの海を眺めながら「整う」ことは間違いない。
内装だけでなく建築資材も北海道産にこだわり、テーブルやチェアもすべて北海道の家具メーカーであつらえたもの。
アメニティは北海道発祥のコスメブランドとして今日本国内だけでなく世界で注目を浴びるShiro。痒いところに手が届く。
「僕はこの利尻と北海道が大好きなので、とてもこだわって作りました。宿で使う小物も北海道の中から集めたものばかりです」
控えめに言って、旅慣れた女性でさえも、満足させるホスピタリティだ。
なぜ漁師の小坂さんがここにヴィラを立てることになったのか。
「今後、利尻もこれから変化していくかもしれません。でもここ神居は利尻の中でも特に神聖な場所。だから、ここを守るためにもこのヴィラを作りました」
地権者と粘り強く交渉して手に入れたこの場所は、利尻に根を下す漁師としてこの地を守りたいという想いから。
1泊6万円は高いか、安いか?
家具も北海道ブランドにこだわった
気になる値段は、一人6万円ほど。
1泊2食付き、レンタカーもついてこの価格は、お値打ちといえる。
現在、利尻はインバウンドと国内の中高年ツーリストで賑わっているので、宿泊代は高騰している。素泊まりの民宿やゲストハウスでも2万円はくだらないことも。
円安で高嶺の花となった海外旅行いくことを思えば、たった数時間で非日常へとトリップできる利尻島はおすすめ。
写真/田部信子