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「よく考えるとおかしい」コロナ禍の“奇妙な道徳”を人類学者が振り返る

文化放送

お笑い芸人の大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜13:00~15:30)が8月16日に放送され、柏書房から発売中の『コロナ禍と出会い直す 不要不急の人類学ノート』を著した、文化人類学・医療人類学が専門の磯野真穂氏が登場。金曜パートナーの壇蜜とともに本の内容について伺った。

大竹「一連のコロナ騒動で日本は、上を下への大騒ぎになっていました」

壇蜜「すごかったですね。パニックでした」

大竹「磯野さんは、もう一回コロナと出会い直してみようという御本をお書きになりました。まず、文化人類学と医療人類学についてちょっとお話してくださいますか?」

磯野「文化人類学は、人類学という学問の中の1分野です。医療人類学は、その文化人類学の中で、医療の問題を扱う領域です。おそらく皆さんは病気というと、ウイルスの構造がどうなっているとか、あるいはこういうものを食べると、こういう病気になる、というような理解があると思うんですけれども、医療人類学は病気と社会の関係を、観察とかインタビューを通じて明らかにしていく学問です。例えばコロナについて、さっき壇蜜さんが「パニック」とおっしゃいましたけれども、たくさん病気がある中で、なぜ私たちは新型コロナという病気でここまでのパニックになったのか、ということを分析していく学問になります」

壇蜜「新型インフルとか、炭疽菌とか、ノロウイルスとかが騒がれたのとは全く違うテンションでした」

磯野「小学生は学校に行っても喋っちゃいけないとか、そのぐらいの大パニックになりました。それをフィールドワークというものを通じて明らかにしていこうと。アンケートとかで数字にするのではなく、実際にお話を聞いたり現地に行ったりして、その場を観察し明らかにしていくという手法をとっています」

大竹「コロナで世界は、日本は、パニック状態になりました。日本の対策は長期にわたってずっと続いて、今は5類に移行してるわけですけど、病院でお金を負担するぐらいになっただけで、それ以外のことはまだ続いています。しかも今また増えてる!」

磯野「そうですね。7月あたりは11波とも言われていました」

大竹「国は当初、緊急事態宣言をしましたが、磯野さんはこれにとても驚いているそうですね」

磯野「もちろん未知の病気でワクチンもないので、行動制限しか防ぐ方法はなく、その意味では仕方なかったと思うんですけど、何に驚いたかというと、国民が政府に緊急事態宣言を出せと怒りの声を上げたんですね。私はこれが一番怖かったんですよね。特に当時の安倍首相に非常に批判的な方まで緊急事態宣言を出せと言ったんですよ。緊急事態宣言というのは基本的に、政府が国民の自由を制限する宣言ですよね」

大竹「それを国民が、私の自由を奪ってください!と」

磯野「という怒りの声を上げる。しかも安倍政権をすごく支持しているなら、信頼してるから分かるんですけれども、ものすごく反対してる人までが、反対してる政権に向かって、自分たちの自由を制限しないことに怒ることが怖かったんですよね」

大竹「その制限で、お葬式もうまくできない。病院では面会もダメ。地方に来るなとまで言っていました」

壇蜜「御本にもありますが、県外ナンバーの車に危害を加えるという事件が多発してました」

磯野「でも、よくよく考えると県外ナンバーを批判するっておかしいんです。全国でコロナが出ていたら、別に県外も県内も違いがあるはずないんですよね。ところが県内と県外の境界を明確に作って、そして県外から恐ろしいものがやってくるから、それを排除しよう。県の外に出たら危ないという、奇妙な道徳が立ち上がった。でもよく考えると変ですよね。例えば、長野県から岐阜県に行ったら突然リスクが上がるって、おかしいじゃないですか。でも、そういうような道徳が立ち上がったわけですよね」

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