舞台裏を大公開「ジブリパークとジブリ展」(レポート)
2022年11月1日、愛知県長久手市の愛・地球博記念公園内に開園した「ジブリパーク」。スタジオジブリ作品の世界を表現したジブリパーク誕生の舞台裏や、その魅力を紹介する展覧会「ジブリパークとジブリ展」が、東京の寺田倉庫 B&C HALL / E HALLに巡回中です。
4章 ジブリパークのつくりかた © Studio Ghibli 🄫Museo d'Arte Ghibli
会場に入ると出迎えてくれるのは、トトロとネコバス。ふかふかな座り心地のネコバスは、年齢制限なく誰でも座ることことができます。
会場は、4つの章で構成。ジブリパーク誕生の舞台裏について、制作現場を指揮した宮崎吾朗監督のこれまでの仕事と作品に関する、膨大な資料から振り返ります。
ネコバスとトトロ
第1章は「はじまりは三鷹の森ジブリ美術館」。宮崎吾朗が初めてスタジオジブリの仕事に関わったのは、2001年に開館した「三鷹の森ジブリ美術館」の建設プロジェクトでした。
父・宮﨑駿が構想した美術館の総合デザインを手掛けることとなり、描いたイメージボードに対していくつものハードルを乗り越えながら、建物や内装、展示物として具現化していきました。
第1章「はじまりは三鷹の森ジブリ美術館」 © Museo d’Arte Ghibli
ジブリ美術館の初代館長を4年近く務めた宮崎吾朗は、アニメーション映画監督という新たな道を歩みはじめます。初監督作品は、2006年に公開された『ゲド戦記』。人間界に突如現れた竜により均衡が崩れはじめた世界で、大賢人・ゲドが災いの源を探るたびに出るファンタジー小説をアニメーションにしたものです。
第2章「アニメーションの世界をつくる」では、2011年に公開された『コクリコ坂から』をはじめ、映画のベースとなったイメージボードやデザイン画、背景美術などが並んでいます。
第2章「アニメーションの世界をつくる」
2021年には、スタジオジブリ初のフル3DCGアニメーション映画『劇場版 アーヤと魔女』が公開されます。その公開とあわせて、三鷹の森ジブリ美術館で開催されていた企画展示「アーヤと魔女展」が、会場2階に登場しています。
宮崎吾朗の制作スペースの再現に、膨大な資料や模型。セルアニメーションと3DCGアニメーションの両方の技法で作品を手掛けた宮崎吾朗ならではの内容になっています。
アーヤと魔女展
2005年に開催された愛・地球博(愛知万博)では、映画『となりのトトロ』に登場する「サツキとメイの家」の制作を担当。映画で描かれた部分だけでなく、人が住める本物の家として、屋根瓦などをひとつひとつつくり上げていきました。
万博閉幕後も保管され、現在もジブリパークの「どんどこ森」で公開されているサツキとメイの家。第3章「アニメーションの世界を本物に」では、宮崎吾朗が本物にこだわったことが分かる、模型や家の制作フロー、家の内観写真を紹介しています。
サツキとメイの家 実際に使用されたパーゴラ
いよいよ第4章は「ジブリパークのつくりかた」。ジブリパークは、2022年から2024年にかけて、5つのエリアがオープンしました。
「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」「もののけの里」「魔女の谷」の各エリアは、既存の公園と共生しながらスタジオジブリ作品の世界観を表現しています。展覧会ではジブリパークをつくる制作過程とその裏側に迫ります。
第4章「ジブリパークのつくりかた」
ジブリパークの「ジブリの大倉庫」では、作品のワンシーンに入り込むことができる企画展示「ジブリのなりきり名場面展」を開催しています。展覧会の会場では『千と千尋の神隠し』のワンシーンを再現。カオナシの横に座って主人公・千尋になった気分を味わえます。
また、館長として仕事に没頭している湯婆婆が登場する「にせの館長室」の展覧会特別バージョンでは、指輪や契約書など細かな部分まで楽しむことができます。
「にせの館長室 展覧会特別バージョン」
東京会場で初公開となったのが、ジブリパークの「魔女の谷」にある「メリーゴーランド」の再現展示です。『もののけ姫』に登場する「ヤックル」と「山犬」に乗って、記念撮影をすることもできます。
「メリーゴーランド 再現展示」
「まずはジブリパークにきてほしい。自分の足で歩いて、感じて欲しい」と語っている宮崎吾朗。ジブリパークに行ったことのある方も、まだ行っていない方も満喫できる展覧会になっていますが、会場を楽しんだ後はきっと、ジブリパークにも足を運びたくなるでしょう。
[ 取材・撮影・文:坂入 美彩子 2024年6月28日 ]