青魚のサバは?身が赤いサケは? 意外と間違えやすい「赤身魚」「白身魚」の分類
突然ですが、みなさんは「赤身魚」と「白身魚」の違いをご存知でしょうか? たとえばサケやサバがどちらに分類されるのか、いざ聞かれると自信を持って答えられないという人は多いと思います。マグロであれば赤身魚、タイなら白身魚といったように、切り身にしたときの色味で分類されているとつい考えがち。しかしルールはそんなに単純なものではなく、見た目と分類が逆の魚も存在しています。
サケやサバは赤身? それとも白身?
見た目だけでは分類できない!?
赤身魚と白身魚の違い
赤身魚と白身魚の分類は、「ヘモグロビン」および「ミオグロビン」という赤い色素タンパク質の量によって決められています。色素タンパク質が100g中10mg以上の魚は赤身魚、10mg未満のものは白身魚に分類されることを覚えておきましょう。
ヘモグロビンは赤血球に含まれており、身体中に酸素を供給するのが役割。一方のミオグロビンは筋肉に含まれており、運動時に筋肉細胞へ酸素を供給する働きを持っています。高速で長時間泳ぎ続けるタイプの回遊魚は、大量の酸素が必要。色素タンパク質の含有量が多く、よく赤身魚に分類されます。
たとえば、赤身魚の代表格ともいえるのがマグロ。寝ている間も酸素が欠乏することがないよう、「生まれた日から絶えず泳ぎ続けている」という話を聞いたことがある人も多いのでは? 長距離を移動し続ける必要があるマグロには酸素を運ぶ色素タンパク質が多く含まれており、刺身などで見るような赤い身をしています。
赤い身が特徴のマグロ
赤身魚と白身魚で異なる特徴
比較的狭い範囲に生息している魚や海底に生息している魚は、白身魚に分類されるものが多くみられます。岩場や海底などにじっと潜み、エサの捕獲時や敵から逃げる際に素早く泳ぐ瞬発力を発揮しますが、瞬発力にはそこまで大量の酸素を必要とはしません。色素タンパク質の量が少なくても済むため、白身魚の代表格・タイのように身が白く見えます。
白い身が特徴のタイ
ちなみに、赤身魚は熱をかけると硬くなりやすく、逆に白身魚は熱をかけると柔らかくなりやすいという特徴が。味にもそれぞれ違いがあり、赤身魚は濃厚で旨味が多く、白身魚は淡泊な味わいを楽しめます。赤身魚・白身魚の分類を覚えておけば、料理の食材選びにも役立つことでしょう。
サバやサンマなどの「青魚」について
分類が難しいのが、サバやサンマ、アジといったいわゆる「青魚」に分類されるタイプの魚たち。実は「青魚」という言葉には明確な定義がなく、背中が青くて回遊するタイプの魚を指す俗称です。
青魚という名前のイメージから、サバ・サンマ・アジはなんとなく白身魚を連想してしまいがち。しかし実際は、赤身魚に分類されています。青魚も回遊魚が多く、泳ぎ続けるためにはたくさんの酸素が必要。そのためヘモグロビンやミオグロビンの含有量が多く、「青魚」なのに「赤身魚」に分類されるため、ちょっと不思議な感覚になりますよね。
サケは実は白身魚!身が赤っぽいのになぜ?
回転寿司でも子どもたちに大人気のサケ。鮮やかなオレンジ色をしているので赤身魚かと思いきや、サケは白身魚の一種です。
産卵の時期になると自分が生まれた川に戻るという話は有名ですが、急流を登っていく際に必要となるのは、赤身魚のような持久力ではありません。白身魚たちのもつ瞬発力によって、サケはピチピチと跳ねながら川を遡上。川へ戻るときに長距離を泳ぐこともありますが、一生の内では同じ海域にとどまって生活する時期が多く、そこまで色素タンパク質を必要としないようです。
では、なぜサケの身がオレンジ色なのかというと、普段サケが食べているエサに秘密があります。エサとなるオキアミや甲殻類の殻には、「アスタキサンチン」という赤色の色素を含有しており、色素が身に移ることでサケの体が赤くなるという仕組み。アスタキサンチンには強い抗酸化作用があるため、肌のシミ・シワを防いでくれる効果が期待できます。
ひと言で「赤身魚」「白身魚」とは言うものの、なんとも奥深い世界があることが分かりました。魚は肉と同じで献立に欠かすことができず、身近な食材だからこそさまざまな知識を身に付けておいて損はありません。普段口にしている魚の名前や料理が赤身魚なのか白身魚なのか、一度じっくり考えてみるのも面白いのではないでしょうか。