釣れるか釣れないかは海次第!?船釣りアングラーが挑戦!「初めて」のオカッパリ
私のような釣り人は少ないのでしょうか? 実は船釣りの経験はわりと多く、おそらく50回以上は船に乗って釣りをしてきましたが、いわゆる「オカッパリ」といわれる陸からの釣りをやった経験がありません。
一般的には、手軽に始められる「オカッパリ」からステップアップして「船釣り」に移行する人が多いと聞きますが、私にとってはその逆! 今回は、船釣りばかりやってきた私が海釣り施設で「陸(おか)デビュー」をしてきたお話です。
船釣りと違って「何が釣れるか分からない釣りってどんな感じなんだろう?」と思ったり、「釣れなくても海辺でぼぉ~っとすることでリフレッシュするのもいいな」と思ったり…。そんな理由で「オカッパリ」に挑戦してみたわけですが、「船じゃないと釣れないでしょ?」という先入観を抱きつつも、結果的に「オカッパリ」ならではの魅力や、船釣りとは異なる楽しみ方、意外な発見がたくさんありましたよ。
千葉県市原市にある釣り公園で「陸デビュー」
記念すべき(?)「陸(おか)デビュー」に選んだのは、千葉県市原市にある「オリジナルメーカー海づり公園」です。もともとは「朝マヅメ」といわれる、魚がよく釣れる早朝からやりたかったのですが、あいにくの雨予報。天気が落ち着いた8時ごろからスタートすることにしました。
オリジナルメーカー海づり公園
住所:〒290-0045 千葉県市原市五井南海岸1-12
TEL:0436-21-0419
HP:https://ichihara-umizuri.com/
到着したらまずは券売機で利用券を購入。スタッフの方から「利用者証」の札を受け取り、それを首にぶら下げていざ釣り場へ!
陸(おか)といっても、実際には海に突き出した長い桟橋からの釣りで、足下はすでに海。これも「オカッパリ」って呼んでいいのでしょうか…? 平日ということもあって、釣り場は人がまばら。広々としていて、好きな場所を選び放題というのは、ちょっとした特権みたいで嬉しいものです。
ちなみにレンタル品も充実しており、タックルはもちろんライフジャケットなども借りることができるので、手ぶらで釣りデビューなんてことも可能です。実際にオールレンタルで釣りを楽しんでいるグループもいました。
スタッフが「今日はサビキでコノシロかな?」とか、「ジグでスズキとか!」と、その日のねらい目を教えてくれたりしていました。そうか! 何が釣れるか分からないと思っていたけど、その日の海況や釣果を把握しているスタッフさんに聞けばそういった点は解消されるってわけですね。
レンタルタックルがあるので手ぶらでも安心
小学生以下は、ライフジャケットを無料でレンタルできる
桟橋の先から見渡す景色は新鮮そのもの。あいにくの曇り空でしたが、潮風が気持ちいい! そして当たり前ですが揺れない! 船は常に揺れていますし、ときにはバランスを崩しそうになることも…。そのため、しっかりした体幹を求められますが、オカッパリの場合は体幹の強さは問われません(笑)。
準備したアイテム
今回の釣行に向けて用意した仕掛は、まずはなんといっても「サビキ」。釣り施設の定番スタイルということで、「オカッパリデビューならまずこれからでしょ!」と。5本バリのサビキにコマセカゴをセットし、足下に群れてくる小魚をねらいました。
左:小アジ専科 上カゴサビキセット リアルアミエビ(ハヤブサ)、右:コンパクトロッド カンタンぶっこみサビキセット(ハヤブサ)
当施設では釣り竿は1人2本まで使用可能なので、置き竿でまったりねらう用にテンビン仕掛にイソメを付けたものも用意しました。
タックルは船釣りで使っていたライトなキス竿(オモリ負荷10~20号)と、長めの磯竿の2本。両方使ってみましたが、船釣りと違って堤防や桟橋では水面までの距離があるので、やっぱり長さがあるほうが取り込みやすいと痛感しました。とくに足下サビキでは、竿の長さがそのまま「届く範囲の広さ」になりますからね。
(釣れた魚を何度オートリリースしたことか(笑))
いざ実釣!
いろんなシチュエーションで多魚種がねらえるオモシロさ!
海釣り施設に来たからには、まずは「サビキ釣り」に挑戦! 船釣りではやったことがなかったんですが、手軽にいろんな魚がねらえるということでトライ! 「なにが釣れるか分からない」ってやつですね。
まず、カゴに「コマセ」と呼ばれるマキエを詰めて、仕掛ごと海へ投入。しばらく様子を見ながら、竿を軽く上下に動かして、カゴの中のコマセを海中にフワ~っと拡散させます。拡散したコマセに集まった魚が、カゴの下(もしくは上)に付いているサビキバリに食いつくと釣れるという仕組みらしいです。
「なるほど、うまくできてるなぁ」と感心しつつ、あとは魚がきてくれるのを待つだけ。普段の船釣りでは「ポイント」まで連れて行ってもらう感じですが、こうやって自分の真下に魚を寄せて釣るっていうのも、ちょっと新鮮でした。
カゴにマキエを絞り出すが、カゴが不安定で上手く入らない
柵に引っ掛けた状態にすればカゴが安定することを納竿直前に知りました
幸先よくスタート
まずは一投。海に仕掛を落とし、糸フケを取って「えーっと、タナはどこなんだ? 1m? 2m?」っと迷っていたら、チョンチョンチョン…というかすかな振動。「え?」と思った次の瞬間には、クンクンクンッ! と竿先がわずかに引き込まれました。「まさかね」と思いつつ、そっと巻いてみると…おお、釣れてる!
まだコマセもろくに撒いていないというのに、まさかの1発目でヒット! 小さなカタクチイワシでしたが、これでまずはボウズ回避です。これは船釣りのときも同じですが、最初の1尾を手にすると、一気に心が軽くなりますね。
さらに、置き竿で落としていたテンビン仕掛にもキスが付いていました! 開始10分で2本の竿に釣果ありで、上出来ではないでしょうか?
喜んでいるのも束の間、「群れがきているのかも?」と思い、休む間もなくコマセを詰めては投入し、イワシ(たまにアジ)を次々に取り込む作業を繰り返しました。船釣りのように、魚群探知機、いわゆる「魚探」で群れの位置を把握できるわけではないので、オカッパリでは群れが去ってしまう前に、できるだけ多く釣り上げるのが勝負どころ。まさに、短期決戦といったところです。
根魚をねらうも不発
小さいながらも魚の反応がそこそこ続き、生かしバケツの中も少しずつ賑やかに。せっかくなので、もう少し違う釣りも試してみようと、次は根魚ねらいにシフトしてみることにしました。
堤防カサゴ・ガシラセット 3セット入(ハヤブサ)
当施設で、この日はまだカサゴなどの根魚が釣れたという話は耳にしていなかったのですが、平日ということもあって人も少なめ。釣り座は自由に移動できる状況だったので、場所を変えながら底を「トントン」と探ってみることに。
私のほかにも、クロダイねらいの釣り人たちが何人かいて、みなさん同じように場所を移動しながら仕掛を落としていました。結果としては残念ながらアタリすらなく、完全なるノーヒット。でも、「ここはどうかな?」「この柱のそばはどや?」なんて考えながらポイントを探していく時間そのものが、意外と楽しいものでした。釣れなくてもこれはこれでアリ。そんな気持ちになれるのも、オカッパリの魅力かもしれません。
最後に裏本命「コノシロ」
「何が釣れるかはその日の海次第」なんて思いながら始めた今回の釣り。正直、ボウズも覚悟していたんですが、実は密かに「これが釣れたら嬉しいなぁ」と思っていた魚がいました。それが「コノシロ」。
当施設の釣果情報を事前にチェックしていたとき、ほぼ毎日のようにコノシロの名前が載っていて、「釣れたら酢締めに挑戦してみようかな」と考えていた魚です。
コノシロは出世魚で幼魚は「シンコ」、そこから「コハダ」、そして15cmを超えると「コノシロ」と呼ばれるようになります。なかでも「コハダ」は江戸前寿司では人気の高いネタ。となれば、「コノシロを釣って、自分で酢締めにして一杯やってみたい」そんな妄想を膨らませながら竿を振っていたというワケです。
釣り方はもちろん、引き続きサビキ釣り。周りの釣り人たちが続々とコノシロを上げているのを見て「そろそろ私の番じゃないの~?」なんてワクワクしていたそのとき…、竿先に「ぐんぐんっ!」と、今までの小さな魚たちとは明らかに違う力強い引きが! 「おっと! これはもしや!」と慎重に巻き上げると、銀色に輝くナイスサイズの魚体が姿を現しました、やったね! コノシロ!!
というわけで、今回釣れたのはカタクチイワシ、キス、豆アジ、そしてコノシロでした。初めてにしてはなかなかの成果だったのではないでしょうか?
初めてオカッパリをしてみて
「船じゃないと釣れないでしょ?」という先入観を抱きつつ挑戦したオカッパリ。いつもは予約をして、時間通りに船宿へ行って、乗船して…と段取りの多い船釣りに慣れている身としては、「もっとラフに釣りできないかな…」と思っていたタイミングでの「陸デビュー」でした。しかも、実際にやってみたらこれが想像以上に楽しかった!
まず驚いたのはそのお手軽さ。堤防や海釣り施設なら、道具さえあればふらっと立ち寄ってすぐに釣りができる。船の出港時間に縛られることもなければ、酔い止め薬を飲む必要もない。しかも足下は安定しているし、座ってのんびりコーヒーを飲みながら釣りをする、なんて贅沢もできる。これはもう、ある意味「癒しの時間」ですね。
桟橋上にゴミ箱や洗い場があるのはありがたい! (魚の処理は禁止)
一方で船釣りに慣れていると、ちょっとだけ「う~ん」と感じるポイントも…。
たとえば、堤防からだとねらえる魚種がどうしても限られるし、潮の流れや水深の変化も小さい分、釣果にムラが出やすい印象。そしてなにより、水面まで距離があるため、魚を取り込むのに一苦労…。船ならそのままタモでスッとすくえるのに、堤防ではバラさないようにドキドキしながら巻き上げる緊張感がありました。
とはいえ、それもまた「オカッパリの味」。釣れる魚のサイズは控えめでも、自分の手で仕掛けて、自分のペースで待って、たまに隣の人と会話しながら…と、なんだかんだでこういう「のんびりスタイル」の釣りもいいなぁと思えたのが正直な感想です。
船釣りは「釣果重視! 本気モード!」、堤防釣りは「ゆるっと楽しむ、日常の延長」って感じでしょうか。次はもっと装備を工夫して、オカッパリでも「ねらって釣る」喜びを追求してみたい! なんて思っていたりします。
釣りのあとは展望レストランで一息
さて、釣りを満喫したあとは、施設の3階にある展望レストランでちょっと遅めのランチタイムを過ごしました。
思っていた以上に体力を使っていたのか、席に着いた瞬間、どっと疲れを感じた午後。そんなタイミングでいただいた、ほんのり甘めの醤油ラーメンは、優しい味が疲れた身体にじんわり沁みていくようでした。
レストランの窓からは、さっきまで自分が釣りをしていた桟橋が一望できます。ラーメンをすすりながら、「あそこでもう少し粘ればもう1尾いけたかもな~」なんて、1人反省会。でもそれすらも楽しいひとときです。
ちなみにレストランには広々としたテラス席もあって、潮風を感じながら食事ができるのも魅力の一つ。天気がよい日には、そちらでのんびりランチを楽しむのも気持ちよさそうでした。
釣果を美味しくいただきました!
今回釣れたのは、カタクチイワシ、キス、豆アジ、そしてコノシロ。せっかく自分で釣った魚たちなので、余すところなく美味しくいただくことにしました。というわけで、コノシロ以外は3種まとめて「唐揚げ」に決定!
小さい魚は唐揚げに
まずはカタクチイワシから。ウロコをさっとこすり落として、指先で腹を割き内臓を丁寧に取り除きます。豆アジとキスも、包丁の先でちまちまと内臓をかき出していく地味な作業…。でも、こういうのも釣りの楽しみの一部ですよね。
下処理を終えたら、すべての魚をビニール袋に入れて塩コショウを振りかけて、袋をフリフリして味付けします。最後に小麦粉をまぶして、高温の油でさっと1分ほど揚げれば完成!
カリッと揚がった魚たちは、頭から尾までまるごとパクッといけて、うまい! ただ、欲を言えばもうちょっと数が釣れていたらなぁ。気付けば一瞬で皿が空になっていました。次はもっとたくさん釣って、山盛り唐揚げにしたいものです。
初挑戦!コノシロの酢締め
今回の釣行で釣り上げた、たった1尾の貴重なコノシロ。せっかくならこの1尾を「酢締め」にして酒の肴に…、そう決めていました。
でも酢締めは、酢の塩梅や締め時間によって味がガラッと変わるらしく、仕上がりはまさに「やってみないと分からない」料理。しかも今回は1尾しかないので、失敗は絶対に避けたいものです。
気合十分、まずは丁寧に3枚におろし、塩をふって冷蔵庫で1時間ほど寝かせます。その後、酢で塩を洗い流して、ひたひたになるくらいの酢と白だしを少々加えた容器に移し、再び1時間ほど寝かせました。酢を切ったあとは、ボウルの内側に頭を上に並べて一晩じっくり寝かせて完成です。
小骨が多い魚と聞いていたので、食べやすいように細かく包丁を入れて盛り付けてみました。見た目はすっかり「酒の肴」そのもの! 見ているだけで日本酒が飲みたくなってくるやつです。
ひと口食べてみると、ちょっと酢が効きすぎた感はあったものの、九州の甘口醤油を少し垂らして食べるとこれが旨い! 身はしっとりとして柔らかく、小骨もまったく気にならない仕上がりに思わず「ほほぅ、けっこう上手いじゃん!」と自画自賛。まさに釣り人冥利に尽きる味でした。
もっと数が釣れていたら、お刺身でも味わってみたかったのですが、それはまた次回の楽しみに取っておこうと思います。
初めてのオカッパリは、釣果だけでいえば決して大漁ではありませんでしたが、自分のペースでのんびりと竿を出し、思い思いのスタイルで釣りを楽しむ人たちの姿に、「釣り」本来の魅力を改めてて感じられた1日でもありました。
船釣りには船釣りのダイナミックさがあり、オカッパリにはオカッパリの気軽さや自由さがある。それぞれのスタイルで、それぞれの楽しみがあるのだと、今回の「陸デビュー」で実感しました。
今回の釣り施設では魚の顔を見ることができたし、釣った魚を自分で調理して食べる楽しみも味わえました。となると次は、また違う堤防や別の施設にも足を運んでみたくなるのが釣り人の性(さが)ってもんです。次の釣り場では、どんな魚とどんな景色が待っているのか…。そんな期待を胸に、また近いうちに出掛けてみたいと思います。