そば粉の割合は血糖値に影響するのか。糖尿病専門ドクターが「十割そばVS二八そば」で検証
糖尿病内科医の山村 聡さんは、自身のYouTubeで血糖値に関する情報を発信し、多くの反響を呼んでいます。書籍『糖尿病専門ドクターが検証! 血糖値を下げる食事法について、実際に試してみた』(KADOKAWA)は、YouTubeで特に人気のあったテーマを厳選し、さらに動画では伝えきれなかった情報や、本書だけの新しい内容を盛り込んだ1冊です。「これを食べたら、血糖値はどれくらい上がる?」この切実な問いに答えるため、著者が実際に食べ、血糖値の変化を検証。具体的なデータと、血糖値を上げにくい食品の選び方、食事の工夫をわかりやすく解説しています。今回はこの本の中から、誤解している方が多い「血糖値を上げにくい食べ物」についての比較・検証をご紹介します。
※本記事は山村 聡(著)による書籍『糖尿病専門ドクターが検証! 血糖値を下げる食事法について、実際に試してみた』から一部抜粋・編集しました。
【十割そばVS.二八そば】そば粉が多くなれば、血糖値は上がりにくくなるって本当?
【初期値】
十割そば:94mg/dL
二八そば:102mg/dL
↓(十割そば:50分後 二八そば:60分後)
【最大値】
十割そば:202mg/dL
二八そば:218mg/dL
【上昇幅】
十割そば:108mg/dL
二八そば:116mg/dL
十割そば1杯(270g)当たり:エネルギー351kcal 炭水化物70.2g
二八そば1杯(270g)当たり:エネルギー371kcal 炭水化物71.6g
うどんとそばの検証動画をYouTubeにアップすると、大きな反響がありました。うどんよりそばのほうが血糖値の上昇の度合いが低いだろうとお考えになっていて、私の検証結果に驚いたかたがたくさんいらっしゃったのです。
ただ、中には、検証方法に疑問を持ったかたもいたようです。
そばの血糖値が上昇してしまったのは、そばの成分自体に問題があったのではないか。つまり、「そばに含まれるそば粉の比率が少なく、かわりに、つなぎとして小麦粉が多く含まれていたため、その小麦粉によって血糖値の急激な上昇が引き起こされてしまったのでは?」。そんなコメントが多数寄せられました。
ちなみに、前回の検証で使われたそばは、そば粉4割、つなぎ(小麦粉)6割という比率でした。「ほらほら、つなぎがいっぱい入っているじゃないか」と思ったみなさんのために、そば粉の比率を増やして検証してみました。
まず、十割そばの初期値が94mg/dL、その後、血糖値は急上昇し50分後にピークを記録。202mg/dLまで上昇しました。その上昇幅は108mg/dLです。
次に、二八そば。初期値が102mg/dLで、その後、血糖値は急上昇し、ピーク(60分後)では218mg/dLまで上昇。上昇幅は116mg/dLとなっています。
このように、そばに含まれるそば粉の割合が十割であれ、八割であれ、急激な血糖値上昇が引き起こされていることが示されました。そば粉が増えたからといって、血糖値の上昇度合いが低くなるということはありません。血糖値の上昇は、その食品に含まれる炭水化物(糖質)が消化・吸収された結果として引き起こされます。つなぎの小麦粉がたくさん使われていても、100%そば粉でも、それが炭水化物である限り、血糖値上昇を引き起こすということなのです。十割そばも、二八そばも、かなりの炭水化物量を含むため、急激な血糖値上昇が引き起こされています。この急激な上昇の度合いは血糖値スパイクと呼んでいいでしょう。
十割そばの血糖値の変動のグラフを見てください。
50分後でピークを迎えたのち、血糖値はいったん急降下します。その後、120分を過ぎると、再び血糖値が上昇し、小さな山を作ります。これが、「二峰性の変動」と呼ばれる反応です。
二峰性の変動は、摂取した炭水化物(糖質)の量が多すぎたときに起こる現象です。食事から摂取した糖質量が多すぎると、1つ目のピークを作る最初のインスリンの分泌量だけでは血糖値が下がりきれません。そうすると、もう一度インスリンが分泌されることになり、二度目の血糖値上昇の小さなピークが作られます。血糖値上昇の2つの山ができるとは、インスリンが二度分泌されるということ。その分、すい臓はよけいに働かなくてはならなくなり、すい臓の負担が増えるのです。
二峰性の変動が起きてしまう場合、明らかに炭水化物の摂取量が多すぎなのですね。すい臓の負担を減らすため、摂取する炭水化物量を減らす必要があります。
結論
・そば粉の割合に関係なく、十割そばも、二八そばも、その含有される炭水化物量に従って急激な血糖値上昇を引き起こす
・摂取する炭水化物量が多すぎると、二峰性の変動が起こる
・二峰性の変動が起こっている場合、炭水化物量を減らす必要あり