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高齢者の水分必要量はどのくらい?1日の摂取目安と脱水予防のための水分補給法を紹介

「みんなの介護」ニュース

下田 由美

高齢者が1日に摂取すべき水分の必要量は、体重や活動量で変わる

高齢者の1日に必要な水分量は、若い人とは異なります。加齢に伴う体の変化や、活動量の減少などが影響するためです。

そもそも高齢者の体内水分量は、若いころと比べて減少しており、脱水のリスクが高くなります。また、体温調節機能の低下や、薬の副作用が出やすくなるなどの影響もあるため、こまめな水分補給が必要不可欠です。

ここでは、高齢者の体内水分量の特徴と、必要な水分量の計算方法について詳しく説明します。

高齢者の体内の水分量は若い頃より減少している

高齢者は、若い頃と比べて体内の水分量が減少しているため、脱水のリスクが高くなります。体重の約60%が水分で構成されていますが、加齢とともに筋肉量が低下し、体内水分量も減少していきます。

実際、体内の水分量は20歳代では体重の約60%を占めていますが、高齢者は約50%にまで減少します。つまり、体重50kgの高齢者の場合、体内の水分量は約25Lということになります。

この体内水分量の減少は、脱水のリスクを高めるだけでなく、体温調節機能の低下や、薬の副作用が出やすくなるなどの影響もあります。体内水分量の減少は避けられないですが、適切な水分補給によって、脱水のリスクを低減することができます。

高齢者本人だけでなく、介護者も体内水分量の重要性を理解し、積極的に水分補給を促すことが大切です。

1日の必要水分量は体重1kgあたり30mLを目安に計算

高齢者の1日に必要な水分量は、体重1kgあたり30mLが目安とされています。ただし、発汗量や尿量、便の量などで個人差があるため、この目安を参考に、個々の状態に合わせて調整しましょう。

例えば、体重50kgの高齢者の場合、1日の必要水分量は以下の計算式で求められます。

50(kg)×30(mL)=1500(mL)

つまり、1日1500mL(1.5L)が水分摂取量が目安となります。

また、水分摂取量の内訳は、食事からの摂取が約600mL、飲料からの摂取が約900mLと言われています。高齢者の場合、食事からの水分摂取量が少なくなる傾向があるため、飲料からの水分補給を意識的に行うようにしましょう。

ただし、この目安量はあくまで一般的な数値であり、高齢者の健康状態や生活環境によって必要な水分量は異なります。

例えば、発熱やおう吐、下痢などで水分を多く失った場合や、気温が高く発汗量が多い場合は、さらに水分補給が必要です。逆に、むくみがある場合や、心臓や腎臓に疾患がある場合は、医師の指示に従って水分量を調整しなければなりません。

高齢者の水分補給は、画一的に考えるのではなく、一人ひとりの状態に合わせて行うことが大切なのです。体重や健康状態、生活環境などを総合的に考慮し、適切な水分量を設定することが重要です。

寝たきりの高齢者は必要水分量が少なくなる

寝たきりの高齢者は、活動量が少ないため、必要とする水分量も減少します。ただし、発汗や不感蒸泄(呼吸や皮膚からの水分蒸発)などで水分が失われるため、適切な水分補給は欠かせません。

寝たきりの高齢者の必要水分量は、体重1kgあたり20~25mL程度とされています。例えば、体重40kgの寝たきりの高齢者の場合、1日の必要水分量は800~1000mLが目安です。

ただし、寝たきりの高齢者は、自力で水分を摂取することが難しいケースが多いため、介護する側が細やかな注意を払う必要があります。

定期的な水分補給を行うとともに、尿量や便の量、発汗の程度などをチェックし、脱水のサインを見逃さないようにしましょう。

また、経管栄養を行っている場合は、水分補給の方法が異なります。経管栄養では、一定の速度で水分を投与するため、必要量を確保しやすい反面、飲み込みの問題により誤嚥のリスクがあります。

経管栄養を行う際は、医師や看護師の指示に従い、適切な方法で水分補給を行うことが大切です。寝たきりの高齢者の水分管理は、介護者にとって大きな負担になることもありますが、高齢者の健康を維持するために欠かせません。

介護者同士で情報を共有し、効果的な水分補給の方法を見出すことも重要でしょう。

高齢者の脱水リスクと予防のための水分補給法

脱水状態になることは、高齢者の健康に重大な影響を与える可能性があり、入院リスクや認知機能の低下、転倒・骨折のリスクを高めます。

ここでは、高齢者が脱水になりやすい理由と、脱水の症状、予防のための水分補給法について説明します。日頃から脱水のサインに気を配り、適切な水分補給を心がけることで、高齢者の健康を守ることができます。

高齢者は脱水になりやすい理由と症状

高齢者が脱水になりやすい理由として、以下のようなことが挙げられます。

のどの渇きを感じにくくなる
加齢により、のどの渇きを感じる脳の機能が低下するため、水分不足に気づきにくくなります。
薬の副作用で口渇や多尿になる
高血圧や糖尿病の薬には、口渇や多尿の副作用があるものがあります。
認知機能の低下により、水分摂取を忘れてしまう
認知症が進行すると、水分を摂取することを忘れてしまうことがあります。
暑さや寒さを感じにくくなり、体温調節機能が低下する
体温調節機能の低下により、気温の変化に対応しにくくなります。

こうした要因が複合的に作用することで、高齢者は脱水のリスクが高くなるのです。

脱水の初期症状として、以下のようなものがあります。

口の渇き
水分不足により、口の中が乾燥し、渇きを感じます。
皮膚のツッパリ感
皮膚の弾力性が低下し、ツッパリ感が生じます。
尿量の減少
尿の量が減り、色が濃くなります。
立ちくらみ
脳への血流が減少し、立ちくらみやめまいを感じます。
倦怠感
体の水分不足により、全身の倦怠感が生じます。

このような症状があらわれたら、速やかに水分補給を行うようにしましょう。症状が進行すると、血圧の低下や意識障害、けいれんなどの重篤な症状につながる可能性があります。

日頃からこまめな水分補給を心がけることを意識しましょう。

こまめな水分補給と排泄した分の水分を補う

高齢者は、若い人と比べて喉の渇きを感じにくくなるため、自発的な水分摂取が減少しがちです。

そのため、家族や介護者が、定期的に水分を勧めることが重要ですが、1回に大量の水分を摂取するのではなく、少しずつ飲む回数を増やすことが効果的です。

中には、一度に多くの水分を摂取することが難しい人もいますので、そのような場合は、こまめに少量ずつ飲むことを心がけましょう。

また、コップやストローを使って飲みやすくしたり、水分補給の時間を決めて習慣化したりするなど、高齢者が飲みやすい環境を整えることも大切です。

さらに、排尿量と同程度の水分を補給することも意識してください。1回の排尿量は、200~300mL程度が一般的です。トイレに行った後は、水分を摂るということも習慣づけると良いでしょう。

ただし、むくみがある場合や、心臓や腎臓に疾患がある場合は、医師の指示に従って水分量を調整する必要があります。過剰な水分摂取は、かえって体に負担をかける可能性があるためです。

注意したいのが、高齢者の中にはトイレが近くなることを恐れて、水分摂取を控えてしまう人もいることです。これは水分不足は脱水のリスクを高めるだけでなく、便秘や尿路感染症などの原因にもなります。

適切な水分補給の重要性を説明し、高齢者が安心して水分を摂れるようサポートするように努めてください。

飲み物の種類や形状を工夫して水分摂取量を増やす

水分摂取を嫌がる場合は、本人の好みに合わせて飲み物を選ぶことが大切です。

お茶やスープ、ジュースなど、さまざまな種類の飲み物を用意し、選択肢を増やすことで、水分摂取量を確保できます。例えば、麦茶やハーブティーなどカフェインを含まない飲み物や、野菜ジュースやスムージーなど栄養価の高い飲み物を取り入れるのも良いでしょう。

果物に含まれる水分も効果的です。果物は、水分補給と同時に食物繊維やビタミン、ミネラルも摂取できるため、高齢者の健康維持に役立ちます。

ゼリーやプリンなどの柔らかい食べ物も、水分補給に有効です。飲み込むことが難しくなっている方でも、ゼリーなら比較的食べやすいため、おやつ代わりに取り入れるのも検討してみてください。

また、あんかけやあんでとじた料理を活用すると、食事から摂取できる水分量が増えるのでおすすめです。料理にとろみをつけるとムセにくくなるのに加えて、水分補給もできます。特に、なかなか水分が摂れない方や、食事摂取量が少ない方に有効です。

このように、高齢者の嗜好や体調に合わせた工夫次第で、水分補給の方法はさまざまあります。飲み物の種類や形状を変えることで、高齢者が自発的に水分を摂りやすくなるのです。

さらに、高齢者が水分を摂りやすい環境を整えることも重要です。例えば、こまめに水分を勧めたり、飲みやすい容器を用意したり、飲み物を手の届く場所に置いたりするなど、小さな工夫が水分摂取量の増加につながります。

在宅介護における高齢者の水分管理のポイント

在宅介護では、高齢者の水分管理に細やかな注意が必要です。施設と比べて、高齢者の状態を常に把握することが難しいため、家族や介護者は、高齢者の様子を注意深く観察し、適切な水分補給を行うことが求められます。

ここでは、在宅介護における水分管理のポイントを3つ紹介します。日頃から意識して実践することで、高齢者の脱水を予防し、健康を維持することができます。

脱水のサインを見逃さない

在宅介護では、脱水の初期段階で発見し、適切に対処することが重要です。日頃から、以下のような症状がないか注意深く観察しましょう。

口の渇き
高齢者は口渇感を訴えにくいため、口の中の乾燥に注意が必要です。
尿量の減少
尿の回数が減る、尿の色が濃くなるなどの変化があれば、脱水の可能性があります。
皮膚のつっぱり感
脱水により、皮膚の弾力性が低下します。
体重減少
短期間で体重が減少した場合は、脱水の可能性を疑います。
血圧低下
脱水により、血圧が下がることがあります。
脈拍数の増加
脱水により、脈拍数が増加することがあります。

こうした症状は、脱水の初期症状であり、早期発見が重要です。症状が進行すると、けいれんや意識障害など重篤な状態につながるおそれがあります。

脱水が疑われる場合は、意識して水分補給することが大切です。その際、水分のほかに電解質を補うことも忘れてはなりません。経口補水液やスポーツドリンクなど、電解質を含む飲み物のほうが水分の吸収がよくなるため、うまく活用しましょう。

普段と様子が違うと感じたら、迷わず医療機関に相談するようにしてください。早期発見・早期治療が、高齢者の健康を守る鍵となります。

水分摂取量のチェックと記録を習慣化する

在宅での高齢者の水分管理では、毎日の水分摂取量をチェックし、記録することが重要です。自発的な水分摂取が減少しがちな人もいるため、客観的なデータに基づいて水分補給を行うことが求められます。

飲水量や食事からの水分摂取量を記録し、1日の合計量が目安量(体重1kgあたり30mL)に達しているか確認しましょう。記録を付けることで、高齢者の水分摂取量の変化を把握しやすくなります。

記録には、水分チェックシートやアプリを活用すると便利です。高齢者本人や家族が記録をつけることで、水分不足に早く気づくことができます。

また、記録を付けることで、高齢者自身が水分摂取に意識的になることも期待できます。自分の水分摂取量を客観的に把握することで、必要な水分量を自覚し、自発的に水分を摂るようになるかもしれません。

ただし、記録を続けることが負担になるようであれば、無理をせず、できる範囲で行うことが大切です。高齢者の状態に合わせて、柔軟に対応しましょう。
 

かかりつけ医や介護支援専門員に相談する

在宅介護で高齢者の脱水が心配な場合は、かかりつけ医や介護支援専門員(ケアマネージャー)に相談することをおすすめします。高齢者の脱水は、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こるため、医療や介護の専門家の助言を得ることが重要です。

医師は、脱水の危険性がある場合、点滴などの処置を行い体内の水分バランスを整えます。また、普段の水分摂取量や食事内容について助言を行い、脱水予防につなげます。

介護支援専門員は、高齢者や家族の状況を考慮しながら、適切な介護サービスの利用を提案します。例えば、以下のようなサービスを利用することで、高齢者の水分管理を支援できます。

訪問診療
医師が自宅を訪問し、健康状態をチェックします。脱水の危険性がある場合は、点滴などの処置を行います。
訪問看護
看護師が自宅を訪問し、バイタルチェックや療養上の指導を行います。水分摂取量の確認や、脱水予防のアドバイスも行います。
デイサービス
日中、施設で過ごします。食事や水分補給、レクリエーションなどを通じて、脱水予防に取り組むことができます。
ショートステイ
短期間、施設に滞在します。24時間体制で水分管理を行うことができます。

在宅介護における高齢者の水分管理は、家族や介護者だけで行うことが難しい場合があります。医療や介護の専門家に相談し、適切な支援を受けることは、高齢者が健やかな生活を送ることにつながります。

少しでも水分管理に不安を感じたら、医療・介護の専門家に相談し、適切な支援を受けることをおすすめします。

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