ウーパールーパーみたいなオタマジャクシを持ち帰って飼育したら『カスミサンショウウオ』だった
小学生の頃、田んぼで見つけたちょっと変わったオタマジャクシを飼育してみた筆者。その正体はカスミサンショウウオだった。今もなお生命のサイクルを繋いでいるカスミサンショウウオ飼育の苦労と魅力を紹介。
変なオタマジャクシ
話は私が小学生の時に遡る。田舎育ちだった私にとって田んぼや水路というのは格好の遊び場であった。毎日遊んでいる田んぼの近くである見たことのない卵を見つけた。
カエルの卵は透明な卵塊が一つの丸っこい塊だが、それはチューブ状の形状をした何かの卵だ。謎の卵から孵化したものはオタマジャクシのように見えたがどうも何か違う。
正体はカスミサンショウウオ
まるでウーパールーパーのように頭の左右に枝のようなものが生えており、まだ小さいのにすでに4本の足が生えている。カエルのオタマジャクシとは違う謎の生物を連れて帰り親に聞くがなんなのか分からなかった為、親の知り合いの博物館に勤める方がいたのでその方に聞いてみた。
その方から帰ってきた答えは“カスミサンショウウオ”の子供との事だった。こんなため池とも呼べない様な土管の水たまりにサンショウウオが居たという事に非常に興奮したのを覚えている。
私はただの一般人なので、カスミサンショウウオに対して学術的な知識を持っていない。素人が調べたところによると、九州(宮崎除く)に分布しており絶滅危惧Ⅱ類に指定されているようだ。
幼生の飼育はかなり大変
小学生の時に出会ってから20年が経過したが、今でも同じ場所で毎年産卵が行われている。地域によってばらつきはあるようだが、私の知る池では毎年1〜2月には卵が確認できる。
3月頃には小さな幼生が泳いでいるのが見えるようになる。私は幼生を数匹持ち帰り、生涯を全うするまで飼育してみることにした。(※カスミサンショウウオを販売、頒布目的での採捕は禁止されています)
この幼生が曲者である。似た姿のオタマジャクシなら雑食なので野菜やコメ等を与えておけばいいのだが、サンショウウオは基本的に動く物しか食べない。しかも生まれたての幼生は1cmにも満たないので小さな動く生きエサが必要だ。
色々と調べた結果、生きたミジンコを調達しなくてはならないようだ。調達方法は自然から採取してくるか、ペットショップで買うか、ブラインシュリンプなるものを使うかだ。色々試した結果、ペットショップで買ってきたミジンコを培養しそれを与えていた。
ある程度大きくなるとエサ問題が楽になる
4月中旬頃になると幼生たちもある程度成長し2cmくらいになる。これくらいになるとエサはある程度の大きさの物も食べられるようになる。冷凍のアカムシを解凍し、ピンセットで2~3匹つまんでサンショウウオの目の前をちらつかせる。
この時期は食欲旺盛なのか、結構な量を食べる。何度もエサをあげていると慣れてくるのか、水槽をのぞき込んだだけで水面に浮いてくる個体も居た。かわいいもんである。満腹になるとアカムシをちらつかせても全く反応しなくなる。
この時期は空腹なら目の前の動く物にとりあえずかぶりつくようで、しっぽが短くなった個体が数匹居た。共食いを避ける為、全員が満腹になるまでせっせとエサやりをする。
陸化する時は脱走に注意
5月の中頃になると、頭の左右にあったエラが無くなっていく。陸化の合図だ。カスミサンショウウオはカエル同様に子供の頃は水生、成長すると陸生になる。
この変化の時はエサを食べなくなるようで、アカムシをちらつかせても全く反応しない。エラ呼吸から肺・皮膚呼吸になるので水から上がることのできるものを水槽内に配置しておく。
水槽の壁をよじ登る個体もいるので、脱走に注意したい。足の小指の爪くらいの隙間でも脱走する。水槽内に姿が見えない場合は周辺の影になる場所をよく探すと脱走兵を大体発見できる。
成長とともに水槽を一新
水槽内のサンショウウオがある程度皆陸化した段階で新しい水槽を立ち上げた。湿らせたソイルを敷き、水辺として小さなプールを制作。ここからは陸上生活で食べるエサを与えていく。
コオロギやワラジムシを調達し与えるが、大きすぎると食べられないのでペットショップで売っているコオロギならSSサイズが良い。ワラジムシは自分で落ち葉の下等を探すが根気のいる作業だ。
ちなみにこちらが大人になった姿である。2年前に幼生を持ち帰り飼育を続けている個体だ。いずれ今回の個体達も成長すれば同じ水槽で飼育する予定だ。どの個体も愛嬌があって可愛らしい。
20数年前、小学校の時に出会った場所でずっと生命のサイクルを繋いでいるカスミサンショウウオ。恐らく今飼育している個体達は20数年前に出会った個体と血が繋がっているのであろう。自分の知る生息地だけでも静かに見守っていきたい。
<檜垣修平/TSURINEWSライター>