急激に成長中の「ESG投資」注目が集まる理由とは
老後2000万円が必要といわれ、積極的な資産運用に注目が集まっています。
そんな中、最近よく耳にする「ESG投資」。今回は、「ESG投資」とはどのような投資方法なのか詳しく解説していきます。
そもそもESG投資とは
ESG投資とは、環境、社会、企業統治に配慮した企業を選び投資することをいいます。それぞれの項目は以下の通りです。
E:環境(Environment)
温室効果ガス排出削減や再生可能エネルギーの利用など環境に配慮しているS:社会(Social)
地域活動への貢献や労働環境の改善、女性の社会進出など社会に貢献しているG:企業統治(Governance)
法令遵守の企業活動や労働環境の整備に取り組んだ経営をしている
今までの投資では、企業業績や財務情報が重視されており、利益率がどれほど高いかなどの企業価値が投資判断の材料となってきました。しかし欧米を中心に、企業の社会的意義や、短期的な成長ではなく長期的な視野に立って環境問題や社会貢献に配慮した経営を行っている企業へ投資する方法が浸透しています。
2009年には欧州会議でESGの情報開示を強化する方針が採択され、地球温暖化や人権問題が今後会社の業績を左右すると考えられるようになったこともその背景にあります。
ESG投資額は、2018年には全世界で30兆ドル以上にも上り、欧州で約14兆ドル、米国でも約12兆ドルとその投資額は年々増加しています。日本国内でもESG投資額は2016年から2018年の2年間でおよそ8倍以上増え、2018年時点で2兆1800億ドルにまで伸びています。
なぜ今、ESG投資が注目されているのか
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投資を行う上で、目先の業績や利益を重視するのではなく、10年、20年といった長いスパンで企業価値を見出していくことがESG投資の醍醐味といえます。アフターコロナの時代を生き抜いていく企業は、環境、社会、企業統治に配慮した企業であり、これらのことを疎かにしている企業は短期的な利益を上げることはできても長期的にはどうなるか分かりません。
そのきっかけとなったのが2006年当時の国連事務総長アナン氏が金融業界に提唱した「責任投資原則(PRI)」です。保険会社や銀行、信用金庫といった巨額の投資を行う機関投資家の意思決定プロセスにESG課題を考慮することが社会的責任になるとされ、持続可能な社会の構築に貢献している企業を選別して投資する手法が注目され始めました。
世界の公的年金を運用する機関でも動きがあり、米国では公的年金基金が2012年から投資判断にESG投資を採用しました。日本でも年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2017年に1兆円規模のESG投資を始めました。
ESG投資にデメリットはないのか
ESG投資とは長期的に企業価値を高めていく企業へ投資することになるので、短期的な利益が出にくいことがデメリットといえるでしょう。
また、環境や社会へ配慮するということは本来の企業活動以外にもコストがかかり、企業にとって利益を圧迫する可能性があります。また企業統治を重視するということは、社内の環境整備にコストをかけるだけでなく、多くの従業員の時間も必要とするので、その分生産性が低くなることも懸念されます。
このようなことからESG投資は短期的な利益よりも、今は利益が出ていなくても長期的に企業価値が高まっていく企業を投資対象としていく投資といえるでしょう。
ESG投資の7つの種類
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世界のESG投資額の統計を集計している国際団体GSIAは、ESG投資を以下の7つに分類しています。
1. ネガティブスクリーニング
武器、ギャンブル、たばこ、アルコールなど、好ましくない活動に従事する企業を投資対象から除外する。
2. ポジティブスクリーニング
労働条件対策、環境保護など社会問題や環境問題の評価が高い企業に投資する。
3. 規範に基づくスクリーニング
OECD多国籍企業ガイドラインなどの規範に沿って、気候や人権、労働に関する問題など最低基準を満たしていない企業を投資対象から除外する。
4. ESGインテグレーション型
財務情報で分析するのではなく、ESG投資の要素を含んだ非財務情報を重視して分析する。
5. サステナビリティテーマ投資型
サステナビリティ(持続可能性や再生可能エネルギー)を重視した企業へ投資する。
6. インパクト投資型
社会や環境に貢献する技術やサービスを提供する企業へ投資する。
7. エンゲージメント・議決権行使型
投資家が投資先の企業に対してESGを積極的に働きかけ対話する。「物言う株主」とも呼ばれています。
ESG投資の始め方
ESGを積極的に配慮している企業を選び、株式や債券を購入する方法がありますが、自分でそのような企業を選定するには時間がかかるでしょう。
よって個人投資家がESG投資を始めるには、ESGに配慮した企業に投資している投資信託やETF(上場投資信託)に投資する方法がおすすめです。
各証券会社のホームページで「ESG投資」特集が組まれているのでそれをチェックするのもいいですし、ESG関連銘柄をスクリーニングで検索できる機能もあるので、まずは証券会社のホームページを覗いてみてください。
まとめ
今までの投資は、財務情報を分析して指標を見ながら投資することが一般的でした。ESG投資は財務情報より将来的な企業価値に注目する点から、非財務情報を評価する投資といえるでしょう。
企業が直接利益に繋がらない環境、社会、企業統治に力を入れ、人材育成やイノベーションを起こすことは、長期的に企業価値を高めていくことに繋がります。
これからは短期的に利益を上げて儲かっている企業へ投資する時代ではなく、長期の資産形成のためにESG投資を行う時代となるでしょう。