自閉症娘と10歳差の弟はもめ事ばかり。特性や反抗期が原因?本当の理由は…
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
お互いに苦手?13歳の自閉症長女と3歳の次男との関係は…
広汎性発達障害(ASD・自閉スペクトラム症)の娘には、弟が2人います。
娘と5歳差の長男とは、今はとても仲が良く、よく同じ話題で盛り上がっています。しかし、10歳差の次男とは、以前もコラムで書いたように……
仲が悪いというわけではないけれど、お互いを苦手とするような微妙な関係でした。
しかし、以前のコラムから時が経ち、次男が2歳になると、イヤイヤ期の2歳児VS反抗期の中学生という最悪な組み合わせになり……
次男がすれ違うだけで、長女を叩いたり……それに娘がイライラする、という気が抜けない関係になってしまいました。
なぜこんなにも相性が悪いのか……。
ASD(自閉スペクトラム症)の特性から「察する」のが苦手で次男を怒らせてしまう娘と、イヤイヤばかりで姉を拒否する次男というだけではなく、もっと何か原因があるのではないか。
私は、2人の様子を見てみることにしました。
毎日毎日もめる姉と弟。見ていて気づいたことは…
毎日毎日もめる2人を見ていて、あることに気がつきました。
娘は、次男の行動を注意ばかりしていたのです。それに対して次男が反発し、それにイライラした娘がまた注意するという負の連鎖でした。私は娘に注意する意図を確認することにしました。
なんと娘は、10歳年下の弟のことを姉としてしつけなければならないと考えていたようでした。驚きましたが、今までの次男に対する行動や発言のすべてに納得できました。
それから、娘の次男への態度は急激に変わりました。
愛でて……
おだてて……
とにかく次男に甘くなりました。そんなことを続けてしばらくした頃、次男が……
次男が娘に自分から抱きつくなんて、信じられない光景でした。それから、次男は娘に自分から近づくようになり、
とにかく姉を、尊敬するようになりました。すると娘も、今まで次男のことを嫌がっていたのが……
と、次男を好きなんだと伝わることをよく言うようになりました。もともと人に対してあまり興味のなかった娘がこんなことを言うようになるなんて……。
これで3きょうだい関係は安心!……と思いきや、今度は、今までうまくいっていた同性同士の2人に暗雲が……。
今まで次男が小さいからと、いろいろ譲ってくれていた長男でしたが、次男の力が強くなり、体も大きくなったことから、やり返すようになりました。2人が遊び始めると、いつも喧嘩が始まります。一難去ったけど、また一難(笑)
長男と次男の場合は、同性同士だし、なんだかんだ喧嘩しても引っつくので、そこからお互いにいろいろ学んでくれと思いながら、見守る私です。
執筆/SAKURA
(監修:室伏先生より)
SAKURAさん、ほほえましい姉弟関係を共有いただき、ありがとうございました。弟さんへの注意は、お姉ちゃんとしての責任感や正しいことを教えてあげたいという想いからきていたんですね。その行動を観察し、疑問を投げかけながらお気持ちを理解され、関係性を良好にする言葉かけをされたSAKURAさんの姿勢、見習いたいです。お子さんの気持ち、考えを尊重するためには、まずそれを正確に理解するための観察と会話が欠かせないということを改めて気づかせていただいたエピソードでした。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。