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「組織で活躍する人」が上司との1on1でやっていること【トップビジネスパーソンに聞く】

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「組織で活躍する人」が上司との1on1でやっていること【トップビジネスパーソンに聞く】【求人ボックスジャーナル】はたらき方やキャリアを考える機会を創出するメディア

上司との1on1というと「毎週の進捗報告をするだけ」とか「評価には関係ないといわれるけど、結局は評価」と思っている人が少なくないようです。

要は1on1なんてものは、「面倒で、やりたくないこと」の一つで、上司・部下ともに「形だけやっている」なんてことも。
そういう側面があるのは事実です。

が、どうせやらなければならない以上は、「有意義な時間」にしたいのは、誰もが思うところでしょう。
「うちでは上手くいっているよ」という人も少なからずいます。

実際、1on1は、うまく利用できれば「上司と信頼関係を築く場」としては、なかなか使い勝手の良いものです。

では、どうすれば1on1が生産的な場になるでしょうか。
いくつか条件があります。

__

今回は、12年間経営コンサルティングに従事し、WEBメディアの運営支援、記事執筆などを行うティネクト株式会社の代表、安達裕哉さんに、「 上司と1on1で話すべきこと 」について伺いました。

“自分の言葉”で話す

まず重要なのは、「自分の言葉で話す」ことです。
1on1は、単に「問題ありません」「進捗は40%です」と、機械的に説明する場ではなく、「モヤモヤしている」「何となく不安」「誰と仕事がやりにくい」といった、 普段言語化されない内側の考えを、素直に相手に伝えることに、価値があります 。
このように「言語化する努力」を双方が行う事で、「進捗報告をして上司から指示をもらう」だけではなく、「一緒に知恵を出し合う」ような関係を築きやすくなります。

たとえば、ある大手メーカーで新規事業を成功させたAさんは、1on1を迎える前に、いつもノートに「最近わかったこと」や「どうしても引っかかっている課題」を書き出していました。そうして整理された内容を、自分なりの言葉で上司に伝えると、上司も「なるほど、じゃあ別の視点はどうだろう」と反応しやすくなります。
モヤモヤしているだけだと、上司もアドバイスがしづらいし、本人も次のステップに進めないままで終わりがちです。けれど、Aさんのように最初から「自分はこう思っています」とはっきり伝える努力をすると、場の雰囲気はとたんに変わります。
ただし、上で述べたように「しっかり自分の言葉で話す」には、事前の準備が欠かせません。頭の中だけでわかっているつもりでも、いざ口に出すと説明が散らかってしまうことはよくあるはずです。

だからこそ、1on1の前に「どんなテーマを上司と話したいのか」「上司に聞きたいことは何なのか」「自分がどういうビジョンを持っているのか」をメモに残すだけでも、かなりスムーズに意見交換ができるようになります。
実際、複数のリーダーが「自分の言葉で考えを伝えようとした時こそ、新たに気づくことがあるし、上司も深い質問をしやすくなる」と言います。

相手の視点を引き出す

自分の言葉でしっかり話すことが大切とはいえ、1on1は片方だけが一方的に語る場ではありません。むしろ、相手の視点をどう引き出すかによって、対話がどれほど充実するかが決まってきます。
事実、 本当に組織で活躍している人は、「ただ上司の助言をもらうだけではもったいない」と考えている ようです。

ある大手ホテル業の管理職の方から、1on1のやり方を聞いたとき、とても参考になるエピソードがありました。
とある部署の1on1では、部下が報告を行い、上司(ここではBさんとします)がコメントする、という報告の場になっていました。ある日、部下がこう切り出したそうです。
「Bさんなら、こんなときどうされるでしょう?」

Bさんは、部下の普段とは違う様子に、どうしたのかと思いましたが、「実は、過去に似たケースを担当したことがあって…」と話をしたところ、部下の方に非常に感謝されたそうです。
Bさんは終わりに「何で今日はあんなことを聞いたのか」と部下へ尋ねたところ、「何回か1on1をやってみて、Bさんと話すのに安心感があった」と言ったそうです。

このように「 心理的安全性を保つことで、相手の視点を引き出す 」態度こそ、結果的に実りのある1on1が実施できます。
さらに、1on1だけではなく、チームメンバーや他部署とのやりとりでも、 「相手がどんなことを考え、どんな状況を抱えているのか」を丁寧に聞き取るスキルが高まります 。その結果、お互いの認識のズレが減って、協力して仕事を進めやすくなります。

また、上の例では、上司が部下の話を聞く立場でしたが、逆のケースも考えられます。
部下が上手に上司の話を引き出してあげると、上司も「ここまで聞いてくれるなら、自分ももっと正直に話そう」と思うようになります。
そうやって本音のコミュニケーションが生まれると、上司と部下という上下関係を超えて、人間同士としての信頼関係が育まれます。

上司に依存しない

1on1で上司に助言を求めるのは自然なことですが、「何でも上司に聞いておけばいいや」という受け身の姿勢になると、せっかくの機会を逃してしまいかねません。
組織でしっかりと成果を出している人たちは、1on1を「上司の考えをそのままもらう場」ではなく、「自分の判断や行動を検証する場」として活用 しています。

たとえば、エンジニアのCさんは、「上司のいう事をそのまま実行するだけなら自分の頭で考える力がつかない」と言います。
Cさんは新しいプロジェクトの進め方について上司に相談するときも、「この方法で取り組もうと思いますが、ここで詰まっています。(上司)さんとしてはどう見えますか」と切り出し、最終的にどう動くかはあくまで自分で決めるようにしていると言います。
このスタンスが大事だと感じる理由として、 「考える訓練になる」「(自分の意見なので)実行力があがる」 というメリットが挙げられます。 「どのタイミングで誰からどんな情報をもらい、最終的にどう決断するか」という感覚が身につけば、「主体性」を発揮 できます。

また、上司のほうも「指示待ちの部下」より「自分で考えて動ける部下」のほうが一緒に働きやすいと感じるでしょう。
わからないところをちゃんと聞きに来てくれるなら、上司としても「お、ここは真剣に答えよう」という気持ちになりますし、部下の自主性が見えるぶん、一歩踏み込んだサポートをしやすくなります。
一方、「全部上司に決めてもらおう」というスタンスで向かうとと、上司は「この人は自分で考えないのかな」と感じてしまうかもしれません。その結果、「1on1の意味ないよね?」と感じてしまうことすらありえます。
このことから、管理職向けの研修でも「1on1では部下に答えを教え込まず、まずは部下に考えさせよう」と指導していることが殆どです。

行動で終わる

書籍『ヤフーの1on1(本間浩輔、ダイヤモンド社)』において、「話したことは必ず行動につなげる」というエピソードが語られています。
これは全くその通りで、何度も1on1を重ねていても、「結局、言っただけで終わってしまった」「いろいろ話したけれど具体的な成果が出ていない」では、1on1に“時間”という貴重なリソースを投下するに値しないからです。

具体的な例として、営業を担当しているDさんの話がわかりやすいと思います。Dさんは上司との1on1で「新しい施策」が決まると、その日のうちにざっと行動計画のたたき台を作ってしまうのだそうです。
まだ完成度が低くても、作りかけの状態でも構わないから、人に見せられる形にしておき、次の1on1で「こんな感じで考えてみました」と提示するというわけです。
たたき台があれば上司から「ここはもう少し数字を入れると説得力があるね」「関連部署と連携して実績データを集めてみたら」と新しい提案を受け取れるので、さらにプランがブラッシュアップされる。Dさんはこの「行動→1on1で報告→修正」というサイクルを回すことで、手堅い成果を積み上げているとのことでした。

話をするだけで終わってしまうと、「やっぱり上司と話しても変わらなかった」というネガティブな感想を抱いてしまいやすいかもしれません。また、うまくいかなかった場合にも、「どこまで具体的に動いたのか」「なぜうまくいかなかったのか」を検証できるのも1on1の強みです。
失敗したとしても、それを次にどう活かすかを上司と一緒に考えれば、また新しい道が見えてきます。失敗を糧にできるかどうかは、その後の対応にかかっているのです。

こうして考えてみると、1on1は「上司と一対一で話をする」という形式ではあるものの、実は「主体的に、会社の仕事をどう前進させるか」を一歩ずつ確認していくための仕掛けでもあります。
1on1は言うほど簡単なものではありません。しかし、上司と部下がお互いに1on1を生産的な活動にしようとすれば、必ず実りはあるはずです。

プロフィール

安達裕哉

1975年生まれ。筑波大学大学院環境科学研究科修了後、デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。 品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事し、その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。 大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。
現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」および生成AIコンサルティング会社「ワークワンダース」 の代表として、コンサルティング、webメディアの運営、記事執筆などを行う。

代表著書 『仕事ができる人が見えないところで必ずしていること(日本実業出版社)』
『頭のいい人が話す前に考えていること(ダイヤモンド社)』 X(旧Twitter) 安達裕哉

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