学習メインと生活メイン、タイプが違う2か所の発達支援施設に通った息子。行き渋り、癇癪…就学までの変化は?
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
初めての児童発達支援
わが家の長男が発達支援施設に通うようになったきっかけは、幼稚園入園から半年ほど経った頃の保護者面談で、先生から「療育に通ってほしい」と言われたことでした。幼稚園で席に座らない、上履きも履かない、ときには教室から脱走し、運動会の練習は不参加……など、長男のさまざまな困り事が発覚したため、そこから3か月待ちの発達相談、受給者証の取得、知能検査などを経て、ようやく年中の夏頃から発達支援施設に通えることになりました。
最初に通った発達支援施設では、1回約2時間の児童発達支援を週に2~3回、幼稚園が終わったあとに受けていました。親子分離で学習メインの個別支援が基本で、ほかにもお友だちがいる時は2~3人の小集団で行うこともありました。流れとしては、最初に部屋の中でのウォーキングなど身体を動かす時間があり、そのあとにクイズや絵本、製作など長男の様子を見ながら長男に合った学習内容で進めてくれていました。
はじめは楽しそうだったのに……長男の様子に変化が!?
こちらの施設に通い始めて1年ほど経つと、遊び中心の内容から、だんだんと小学校へ向けての学習がメインになっていきました。通い始めたばかりの頃は長男も通うのをとても楽しんでいたのですが、課題の難しさもあってか、だんだんと行き渋ることが多くなっていきました。
嫌がる長男を連れて行くのは大変でしたが、いま振り返ってみると、文字や数などの理解力向上に繋がったと思いますし、小学校での掃除の仕方や授業の受け方なども教えてくださり、本人も小学校入学後に助かったのではないかと思います。
2か所目の発達支援施設
長男は年中の12月に幼稚園から保育園へ転園し、年長からは保育園に併設されている発達支援施設にも通い始めました。この発達支援施設は、長い間運営しているところで、経験豊富な先生が揃っていることで知られており、キャンセル待ちも多数でるほどの人気でした。
そのため、最初に通っていた施設は週に1回土曜のみにし、2か所目の施設は週に2回、保育園を途中で抜けて平日に通うことにしました。
2か所目の発達支援施設も親子分離での支援でしたが、こちらは10人ほどの小集団で行われていました。長男は、日常生活の支援がメインの「生活クラス」に入りました。まずは着替えなどのお仕度、挨拶から始まり、「日付やその日の天気、その日の参加人数」を毎回担当になった子が発表します。そのほか、運動の時間や給食もありました。
こちらの施設では、1回の活動は約4時間と、1か所目の施設の支援時間と比べると倍の長さでした。指導方針は、その子ができないところは手助けしつつも、できるまであきらめないという、ある種の厳しさがありました。通い始めの最初の2か月間は親子通所をする決まりがあったので、支援中の様子を近くで見ることができたのですが、長男が活動を嫌がって癇癪を起こす場面もよく見られました。しかし、先生方は長男が活動に取り組めるようになるまで、根気強く付き合ってくださっていました。不思議なことに、こちらの発達支援施設に関しては、長男が行き渋ることは最後までありませんでした。
年長の1年間で見違えるほど成長した長男
年長の終わり頃になると、支援中に嫌がる場面はほとんどなくなっていきました。むしろ、普段保育園では拒否する集団遊びやダンスにも楽しそうに参加し、周りの子たちをサポートする姿まで見られるようになりました。こちらの施設でたくさんの成功体験を積ませてもらったことで、自信をもって過ごせているように感じました。通った期間は年長の1年間だけでしたが、この1年で長男はものすごい成長を見せてくれました!
結果として、どちらの発達支援施設での経験も長男の成長に繋がったと実感することができて、通ってよかったと心から思っています。
執筆/プクティ
(監修:室伏先生より)
プクティさん、発達支援施設でのご指導の様子や、長男さんのご様子について共有してくださり、ありがとうございました。これらの施設での経験が、長男さんの成長に繋がったとのことで、本当に良かったですね。
1か所目の施設では、お子さんが自信を持って学びに向き合えるよう、お子さんのペースに合わせた取り組みをされていたのですね。課題の難しさにつらくなってしまった場面もあったかもしれませんが、小学校での学習を中心とした生活の準備・練習ができたことは、きっと大きな意味を持つ経験になったのだと思います。
2か所目の施設は、日常生活における自立支援や集団生活に必要なスキルの獲得が重要視されていたのですね。これは小学校生活のみならず、今後の長い人生においてとても重要な能力です。ご家庭でいろいろ教えようとしても、お子さんはご家族には甘えたくなってしまって最大限の力が発揮できないこともあります。また、生活の中でできることが増えると、ご家庭でも園でもさまざまな機会に成功体験が積み重なり、自信に繋がります。成長の兆しをいち早くキャッチして、ご家庭でもポジティブなフィードバックをしてあげたいですね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。