佐藤輝明への助言、忘れられない一発…阪神優勝にOBの糸井嘉男氏も感激
四球と犠飛はリーグ最多、糸井氏が指摘する「隙のなさ」
阪神タイガースが2005年以来18年ぶりのセ・リーグ優勝を達成。球団OBの糸井嘉男氏も声を弾ませた。
「嬉しいです!昨年まで一緒にやってた選手がいっぱいいますからね。2年前に2位になったシーズン、優勝を確信してたのに大逆転をくらって悔しい思いをしたんで、後輩たちがそれを晴らしてくれました」
糸井氏がそう回想するのは2021年だ。矢野燿大監督体制となって3年目、近畿大学から入団したドラフト1位ルーキー佐藤輝明がオープン戦から話題をさらい、4月9日から8連勝するなど開幕ダッシュに成功した。2位に最大7ゲーム差をつけて首位を走っていたが、佐藤が59打席連続無安打と大スランプに陥るなど失速。つかみかけたペナントはヤクルトにさらわれた。
しかし、今季は違った。盤石の投手陣と一発はなくてもリーグ最多得点を奪っている野手陣がガッチリ噛み合い、危なげのない戦いぶり。糸井氏は「本当に隙がなかったですね。打撃陣を見ても突出した成績を残している選手はいないけど、四球とか犠飛など、あまり表に出ない数字が全然違います」と指摘する。
9月13日終了時点でチーム合計の452四球、43犠飛はともにリーグ最多。1046安打はリーグ4位、70本塁打はリーグ5位にもかかわらず、総得点はリーグ最多の500だ。糸井氏が言う「隙のなさ」を証明する数字だろう。
「弟のように思っている」佐藤輝明
2年連続最多勝の青柳晃洋やプロ15年目の西勇輝は不本意なシーズンだったかも知れないが、逆に村上頌樹や大竹耕太郎ら実績の乏しい先発投手が大活躍した。
糸井氏は「毎年活躍するのは難しい世界。青柳や西は前半良くなかったけど後半は素晴らしい。そして村上、大竹が2桁勝ったのは計算外でしょう。2人をローテーションに入れた岡田監督をリスペクトします。2005年に岡田監督で優勝して18年間、どの監督も優勝していないわけですからね」と指揮官の手腕を絶賛する。
近畿大学の後輩にあたる佐藤輝明は苦しんだ時期もあったが、9月に入って調子を上げてきた。糸井氏が現役時代から気にかけてきた選手だけに、佐藤を見る目は優しくも厳しい。
「テルは大学の後輩でもあるし、同じ左バッターで体型も良く似てるから弟のように思っています。彼なりにいろんな壁にぶち当たって、たまに食事に行った時は軽くアドバイスしたこともありますが、彼も研究熱心なので少しずつ乗り越えてきました。チームでは本塁打と打点の二冠王ですからね。20発は絶対クリアしろよと言ってたんです」
14日の巨人戦で見事、優勝を決定づける20号を放って史上7人目の新人から3年連続20発を達成。しかも、これまで記録したのは清原和博、原辰徳、有藤道世、石井浩郎、森徹、牧秀悟と全て右打者。左打者では史上初の快挙となった。
「レフトへの浜風が強い甲子園を本拠地にしてる阪神の左バッターであることを考えれば凄いことですよ。いつか、30発もクリアしてほしいですね」。自身が左打者にとって強敵の浜風を体感してきたからこそ、後輩には記録達成を期待している。
鳥肌が立った阪神移籍1年目の特大アーチ
糸井氏が忘れられないシーンがある。阪神移籍1年目だった2017年4月5日のヤクルト戦、1-1の同点で迎えた7回裏2死一、二塁からルーキのストレートをジャストミートし、京セラドーム大阪のライト上段席に放り込む決勝3ランを放った。
「大歓声を浴びて、こんな素晴らしい球団の一員になったんだなと思いました。鳥肌が立ちましたね。味わったことのない感覚を覚えています」と振り返る。日本ハム、オリックスで幾多の名場面や修羅場を経験してきた超人でも、地鳴りのするような阪神ファンの大歓声は感動ものだった。
パ・リーグではそのオリックスが首位を走っており、日本シリーズで古巣同士の対決が実現するかも知れない。
「実現したら特別な日本シリーズになるでしょうね。思い入れのある2チームなんで、普通に観戦に行きたいです」。超人が瞳を輝かせる夢のシリーズは実現するか。今年のプロ野球はまだまだ楽しみが尽きない。
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記事:SPAIA編集部