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「鉄道コレクション」から「新交通システムコレクション」へ! ゆりかもめがNゲージ化 どうやって実現した?

鉄道チャンネル

トミーテック「鉄道コレクション」から派生した「新交通システムコレクション」としてゆりかもめが登場!

Nゲージ鉄道模型の大手メーカーであるトミーテックは、「TOMIX」「鉄道コレクション」の2種類で、さまざまな車両を模型化しています。今回扱いたいのは「鉄道コレクション」。「TOMIX」では発売していない、JR型・私鉄両方の車両を多数展開しています。実在する車両と並行して、懐かしい世界観のフリーランス車両「富井電鉄」シリーズも手掛けています。

そんな「鉄道コレクション」から衝撃の新製品!レインボーブリッジを渡り、お台場、船の科学館、東京ビッグサイトや豊洲など、臨海副都心へのアクセスを担っている新交通システム・ゆりかもめの7300系が、「鉄道コレクション」から派生した「新交通システムコレクション」として2025年3月20日に発売されました! 新交通システムは、鉄の車輪で走行する一般的な鉄道とは異なり、ゴムタイヤで走行するため、実車の構造を鉄道模型でそのまま再現するのは困難です 。

では、鉄道模型でゆりかもめの製品化はどうやって実現したのでしょうか。そもそも、なぜ新交通システムをNゲージ化する企画が生まれたのでしょうか。同社担当者に取材しました。

(1) 新交通システムとは

新交通システムの鉄道は、4~6両編成の小型車両がコンピューター制御による無人運転により、専用軌道の案内軌条に従い、ゴムタイヤで走行しています。一般的には「新交通システム」の呼び名が定着していますが、正確には「AGT(Automated Guideway Transit )」と呼ばれます。ガイドウェイを使用する自動運転の交通機関ということですね。

国内の新交通システムとしては、1981年に兵庫県神戸市で開業したポートライナーが最初で、他にも金沢シーサイドライン(神奈川県)、日暮里・舎人ライナー(東京都)、ニューシャトル(埼玉県)、Osaka Metroニュートラム(南港ポートタウン線・大阪府)、アストラムライン(広島県)など各地に点在しています。今回取り上げるゆりかもめは、1995年に新橋~有明間が開業し、2006年に有明~豊洲間が延伸しました。

列車の走行に必要な案内軌条は、基本的に軌道側面に設置されている場合がほとんどですが、千葉県の山万ユーカリが丘線では、軌道の中央に案内軌条が設置されています。

「ゆりかもめ」車両イメージ(写真:PIXTA)

「新交通システムコレクション」第1弾となる車両は、ゆりかもめの7300系。その実車は2014年に登場し、既存車両の7000系・7200系を置き換えました。外観は明るくスタイリッシュなイメージで、臨海副都心のシンボルにふさわしい近未来感を感じさせる車両に。すべての利用者にとっての「快適な移動空間」になるようにデザインされました。沿線の発展や大規模イベント開催に伴う混雑を緩和するため、座席はオールロングシートとなっています。

Nスケールで模型化が実現したゆりかもめ7300系
先頭車両では、運転台付近の内装も再現

製品仕様としては、2025年3月20日発売で価格18,480円。6両編成のセットとなります。先頭車両は運転台付近の内装も再現され、ダミーカプラーも取り付けられた状態になっています。動力化する場合、動力車には「TM-TR07」(2軸車用)を、トレーラー車には「TT-03R」(車輪径5.6mm・2両分、カプラー黒)を使用します。

先頭車両
中間車両

ちなみに、Nゲージサイズのプラモデルとしては、プラモデルメーカーのフジミがゆりかもめ7200系を組立キットで商品化したことがあります。しかし、Nゲージ鉄道模型のメーカーから、プラスチック完成品として新交通システムが発売されるのは初めて。だからこそ、大手メーカーであるトミーテックからの製品化発表は衝撃的でした。

(2) なぜNゲージで「ゆりかもめ」?

しかし、冒頭で述べたように、ゆりかもめはゴムタイヤで走る新交通システム。Nゲージ鉄道模型は鉄車輪でレールから電気をもらって走行するため、実車通りの走行はできません。それではなぜ企画したのか、またどうやって既存のNゲージに落とし込んだのでしょうか。今回は葛飾区立石のトミーテック東京オフィスにて、企画担当に取材してきました。なぜ、新交通システムが既存の鉄道模型で実現したのでしょうか?

「『鉄道コレクション』では長らく、いろいろな会社様の電車を、全国幅広く商品化してきました。基本的には鉄輪で走る普通の鉄道車両がメインだったと思うのですが、これだけ長く商品を出させていただいた中で、目新しさや新しい風を入れたい、という流れが社内にありました。お客さまにも目新しさを感じていただけるものを考えた時に、他社さんの鉄道模型でも製品化されておらず、かつ、いろいろな方の目に触れ、興味を持っていただきやすそうなモチーフとして、『新交通システム』をチョイスさせていただきました」(企画担当)

「鉄道コレクション」は、ブラインドパッケージの第1弾が2005年に発売してから、現時点で19年間続いているロングタイトル。当時から、他社ではなかなかNゲージ化されない、古い時代のローカル鉄道を手頃な価格のプラスチック完成品として世に送り出しています。今は、当初に比べて価格も上がってはいるものの、鉄道会社や時代を問わず、多くの車両が製品化されるようになりました。

筆者から見ても、2021年11月に第1弾が発売した「ノスタルジック鉄道コレクション」、2022~2023年に発売した「リニア地下鉄コレクション」のように、幅広い車両のNゲージ化に取り組んでいることがうかがえます。Nゲージの線路を走行する80分の1スケールの車両、ナローゲージの発売歴もあります。

その一方で、「我々自身も凝り固まったところにいたのではないか」とも話す企画担当。シリーズの裾野を広げるという意味でも、今までなかった新交通システムをシリーズに取り入れることになりました。

時代やJR・私鉄を問わず、「鉄コレ」で多数の車両がこれまで製品化されてきた

では、新交通システムの鉄道模型の第1弾がゆりかもめなのはなぜでしょうか。企画担当によれば、「『新交通システム』という類を想像された時に、人によるところはあると思いますが、イメージしやすい路線がゆりかもめなのかと思います。東京の湾岸エリアを走っているということで、いろいろな方の目につきやすく、東京のランドマークを構成している一つの要素としてチョイスさせていただきました」とのこと。

実際に、ゆりかもめの沿線には多くの観光スポットがあり、東京ビッグサイトではさまざまなジャンルのイベントが開催されることも多いです。おもに夏・冬には、屋外でイベント開場を待っている間に何本ものゆりかもめが視界を横切っていったりもします。そのため、企画担当の話す通り、鉄道ファンでなくともゆりかもめを見たことがある、または乗ったことがある人は多いのではないでしょうか。

加えて、「TOMIX」からは東京臨海高速鉄道りんかい線70-000形、「ザ・バスコレクション」からは都営バスや東京BRTの発売実績もあるため、それらと並べれば、東京ベイエリアの交通をNスケールでより充実させられるでしょう。「鉄道コレクション」はディスプレイモデルなので、動力化せずにジオラマにおいても存在感を発揮します。

(3) ノス鉄のノウハウがゆりかもめにも活かされた

鉄コレのゆりかもめも、従来の「鉄道コレクション」同様、床下を動力ユニットや走行化パーツに交換することで線路上を走行できるようになります。本品では、「ノスタルジック鉄道コレクション」に使用する「TM-TR07」(2軸車用)を使用します。

鉄道模型は、コントローラーから線路に流れる電気を動力車輪で受けてモーターを駆動させ、モーターの回転を車輪に伝達させることで走行します。この基本構造は「ノス鉄」も同じですが、一般的な鉄道と違って車輪が2軸しかないので、他のNゲージ車両に比べてもだいぶ小型なほうです。

昨年10月に開催された「全日本模型ホビーショー」では、このように動力化させたゆりかもめの走行展示も行っていて、来場者を中心に、SNSでも大きな反響があったとのこと。

ゴムタイヤの内側に見える銀色の車輪で、線路から電気を受け、モーターを駆動させて走行する

「コレクションアイテムではあるのですが、遊びの余地を作るということは、鉄道コレクションのスタンスとしては重要」とした上で、動力ユニットについてはこのようなお話もありました。

「ノス鉄動力を最初に作った時に、サイズ感も含めていろいろ応用が利くように、今後いろいろな所に展開できるように…とは思っていました。最初に動力をいろいろ使えるように考えたからこそ、ゆりかもめも走るようになったのかと思ったりはします」(企画担当)

ゆりかもめの中間車両を動力化した状態。ウェイトは天井に取り付け

実際に、この2軸車用動力はNゲージの「ノス鉄」だけでなく、一部のナローゲージにも使用可能になっています。他の動力ユニットも、対応する台車・床下機器を取り付ける ことでさまざまな車両に使用でき、その取り回しの良さは「鉄コレ」動力の長所ともいえるでしょう。

床下レリーフ裏側の突起を、動力ユニットの取り付け穴に合わせる
ゴムタイヤは回転せず、レリーフとして成型されている

車体の基本構造も「ノスタルジック鉄道コレクション」を踏襲しています。そのため、新交通システム特有のゴムタイヤは回転せず、床下機器のレリーフの一部として成型されています。床下パーツのゴムタイヤと走行用車輪の位置は若干ずれていますが、走行時は車輪のフランジが沈み込むため、雰囲気を損ねにくくなっているように見受けられました。

先頭車両に走行用車輪を装着させた様子

車体を固定するアダプターも、床下レリーフの上に一体成形となっていました。実車の側面窓が小さいため、内部の部品が目立ちにくくなっています。

台車の基本構造は「ノスタルジック鉄道コレクション」と共通

「ノス鉄のノウハウを活かしていますので、ノス鉄で出来上がった知見や資産も含めて、お客様に扱っていただきやすい、あまり複雑にならないようにも考えて、このような形になっています」(企画担当)

「ノス鉄」自体の構造が単純で扱いやすいので、それをベースにした「新交通システムコレクション」も、目新しさの割にユーザーが手に取りやすく作られたということになりますね。筆者が持参した既存の「ノス鉄」と床下を比較しても、大きな違いはほとんどなく、「ノス鉄」のノウハウが活かされていることがよくうかがえました。

床下機器のレリーフこそ違うものの、「ノス鉄」とほぼ同じ要領で扱える(写真上・ゆりかもめの床下、同下・ノス鉄第3弾デハ7号の床下)
筆者が持参したノス鉄第1弾・キワ90タイプと比較すると、意外にも車体長がほぼ同じだった

ちなみに、鉄輪走行で少しでも新交通システムの雰囲気に近づけるとしたら、路面電車の併用軌道を再現できる「ワイドトラムレール」、または通常の線路とアスファルトタイプの「路面用パーツキット」を使用し、高架線にするとそれらしくなるでしょう。案内軌条もふまえ、側壁の高さを上げるとさらに本格的になると思います。

そのままだと連結間隔は一定だが、動力化により若干変動する(写真は動力非搭載の未塗装サンプル)

ただし、動力化した際、動力車とトレーラー車で連結間隔が多少変わるとのこと。仕様上、動力ユニットのカプラー長がトレーラー車のそれより若干長くなるため、連結間隔も少し伸びます。貫通路にホロを取り付けると気になりにくくなるかもしれません。

(4) 新交通システムにNゲージ化のきざし、まずはどう受け入れてもらえるか

今回ゆりかもめ7300系が「鉄道コレクション」としてNゲージ化されたことにより、他の新交通システムもNゲージ化できる可能性が出てきました。まだ発売されていないのに気が早いかもしれませんが、これ自体に話題性がありつつ、今後のラインナップ拡大も期待できる注目の製品になりそうです。

とはいえ、まずは今回のゆりかもめ。企画担当からは、 「お客様のご意見に耳を傾けながら、我々の考える今後の路線とすり合わせて、いろいろ考えて行けると良いなとは思っています。まずはゆりかもめをお手に取っていただいて、市場の皆様にどう受け取っていただけるかを見て行きたい」とのコメントがありました。

「鉄道コレクション」から派生した、「新交通システムコレクション」ゆりかもめ7300系は、価格18,480円で2025年3月20日発売。ゴムタイヤで走る新交通システムが、従来の鉄道模型として製品化されることには驚きましたが、19年間続いてきたロングタイトルの新しい切り口を模索したことと、「ノスタルジック鉄道コレクション」で得たノウハウを活かしたことにより、新交通システムのNゲージ化が実現しました。今までのNゲージと同じ要領でコレクションしたり、動力化させたりできます。

目新しさこそありますが、「ノス鉄」ベースの単純構造なので、鉄道模型の中では扱いやすいのではないかとも感じています。1両が短いので小半径のカーブも走行でき、広げる場所を選ばないのも大きなメリット。沿線の情景を作り込んだり、りんかい線や都営バスなどと並べたりなど、お好きな方法で楽しんでみてはいかがでしょうか。

記事:若林健矢
取材協力:株式会社トミーテック

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