なぜ「石にされてしまった感」を覚えるのか? 各地のキャラクター石像たち、その個性を楽しむ
ひと昔前に比べると、あちらこちらでキャラクターを目にするようになった気がする。2021年段階で全国の自治体のご当地キャラは1553体を数え(※注1)、町おこしに一役買っている。地域の商店街や観光施設などのキャラクターも含めれば、数えきれないほどのキャラクターが存在していることだろう。
こうしたキャラクターたちが、像として街に飾られていることも多い。色鮮やかなFRP製、銅製など使われる素材もさまざまであるが、私が一番気にかかるのが、石でできたキャラクター像である。
なぜかと言えば、『ドラえもん』の「のび太の魔界大冒険」で、大魔王の手先・メジューサに石にされてしまうドラえもんとのび太を思い起こさせるからであった。
バカバカしいとはわかっていつつ、かわいらしいキャラクターが石になっている姿を見ると、つい「魔法で石にされてしまったのでは……」と思ってしまう。今回は、各地で石になっているキャラクターたちを見ていきたい。
「石にされてしまった感」を覚える理由
なぜキャラクターたちに「石にされてしまった感」を強く覚えるかというと、普通はカラフルな色彩のキャラクターが、石像ではたいてい灰色一色になってしまうからではないだろうか。
中にはキャラクターの色に合わせて、赤御影石などで作られている石像もあるが、こちらもやはり単色である。
こうした懸念を払拭するためか、埼玉県さいたま市浦和区のキャラクター「浦和うなこちゃん」石像は、黒との二色づかいで生き生きとした感じになっていた。
さらには、リボンや衣装などにワンポイントで赤色が用いられる石像も多く見られる。
ご当地キャラブームの火付け役でもある滋賀県彦根市のキャラクター「ひこにゃん」も、「井伊の赤備え」で知られる赤兜をかぶっているのが特徴で、市内各所で見られる石像も兜はだいたい赤色で作られている。
色を石で再現しようという苦労のあと
人気キャラクター「ハローキティ」は、サンリオ創業者が山梨県甲府市出身であることから、2022年に「甲府市ふるさと大使」に就任し、ある意味「ご当地キャラクター」となった。甲府市内に設置されたキティちゃんの石像は、チャームポイントのリボンや服が赤色で作られており、「石にされてしまった感」がだいぶ薄らいでいる。
群馬県太田市のキャラクター「おおたん」は、合併した4市町を象徴する4色の丸を頭に載せており、黄は「実り」、青は「空」、橙は「太陽」、水色は「清流」をあらわしているとのことだ(太田市ホームページより)。東武鉄道の太田駅前に設置された「おおたん」石像は、なんとかしてこの4色を石で再現しようという苦労のあとがうかがわれ、微笑(ほほえ)ましい。
各地で個性豊かなキャラ石像を見つける楽しさ
別の意味で微笑ましいキャラ石像もある。栃木県宇都宮市の餃子店『宇都宮餃子館』では、キャラクターの「スタミナ健太くん」石像を店頭に設置しているが、なんと台座に書かれた文字が「スタシナ健太」となっているのである。
説明書きによれば、海外の石屋さんに発注した際、「ミ」と「シ」を間違えて彫られてしまったとのことで、見ると思わず微笑んでしまう。
こうして個性豊かなキャラ石像を見ていると、「魔法で石にされてしまった」感覚は薄らぎ、逆に「石でいろいろな表現ができるのだな」という驚きのほうが強くなってくる。今後も各地で個性豊かなキャラ石像を見つけることを楽しみにしたい。
イラスト・文・写真=オギリマサホ
※注1:「日本経済新聞」2022年2月6日( https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC0429G0U2A200C2000000/ )
オギリマサホ
イラストレータ―
1976年東京生まれ。シュールな人物画を中心に雑誌や書籍で活動する。趣味は特に目的を定めない街歩き。著書に『半径3メートルの倫理』(産業編集センター)、『斜め下からカープ論』(文春文庫)。