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ジャパニーズウイスキーの新たな試みと課題

TBSラジオ

アメリカのロサンゼルス・ドジャースと今シーズンからパートナー契約を結んで話題になった八海醸造。現地ではチームの「公式日本酒」として販売も行われます。

日本酒メーカーが挑む、初めてのウイスキーづくり

そんな八海醸造が初めてウイスキーを作ったそうなんです。一体どんなウイスキーなのか・・・?八海醸造株式会社 深沢原蒸溜所の所長、上村太一さんにお話を伺いました。

八海醸造株式会社 深沢原蒸溜所 所長 上村太一さん

やっぱり弊社、清酒メーカーということで、原料のところに使うのは米だろうという事と、あと発酵させるに酵母が必要なんですけども、清酒メーカーでありますので、清酒酵母を使って発酵させているっていうところはこだわっている特徴的なところだと思います。熟成する段階で、魚沼の風土がこのウイスキーを育ててくれていますので、米の旨味とか、魚沼の風土を感じられるようなウイスキーになってくれたらいいなと思って作りました。日本はもとより世界に爆発的に広がっていければなと、そんな風に思っています。今回の2025年リミテッドにつきましては、抽選販売になっておりまして、詳しい数字までは把握してないんですけども、今もうすごい状況だという事を聞いております。

お米で作ったウイスキー、その名も「Hakkaisanシングルグレーン 魚沼8年ライスウイスキー2025 LIMITED」

(写真提供:八海醸造株式会社)

そもそもなぜウイスキーを作ろうと思ったのか。きっかけは木の樽に貯蔵した米焼酎だったそうで、2016年にウイスキーの製造免許を取って作り始め、8年間の熟成を経て満を持して発売。お米で作ったウイスキーを出しているメーカーは他にも一部あるそうですが、この「魚沼」のように8年という、長期熟成のものは珍しいんだそうです!数量限定販売で1回目の抽選販売はすでに終わっていますが、今後7月と10月にも抽選販売を予定しているということです。

ジャパニーズウイスキーの抱える問題

独自の個性を活かした新たなウイスキーが生まれる一方で、人気の裏には課題もあるようです。日本洋酒酒造組合の専務理事 新井智男さんにお話伺いました。

日本洋酒酒造組合 専務理事 新井智男さん

日本産のウイスキーっていうのは今、世界の5大ウイスキーと称されるほどに評価が高まっております。特に海外のマーケットでジャパニーズウイスキーがどのように認識されているかっていうことについて、調査販売店の従業員さんへのインタビューも含めて調査を行いました。その結果、アメリカではジャパニーズウイスキーっていう表示があって売られてるんだけども、よくよく見ると定義には合致しない・・・。いわゆる模倣品っていうんですかね。販売店にはまだまだジャパニーズウイスキーの基準の認知度が十分じゃないのかなと。もう少し周知広報した方がいいんじゃないかなという声も聞きました。

日本のウイスキーが海外でも評価され一つのブランドになったのですが、スコッチウイスキーやアメリカのウイスキーのような厳格な定義や基準がなかったんです。その結果ジャパニーズウイスキーを名乗る模倣品が国内外で増え、消費者の間でも混乱が生じてしまいました。

そこで組合は2021年に「ジャパニーズウイスキー」を名乗れる基準を作りました。例えば製造の過程で、日本国内の水を使用すること、日本国内で発酵、醸造、3年以上の熟成、そして容器詰めを行うこと、など・・・。ただあくまでも自主基準で、組合に所属しているメンバーがこれを守って製造している状況です。

(基準を満たしたジャパニーズウイスキー)

現在組合では、法令化に向けて政府にアプローチしていて、今後この自主基準が法令化することによって、よりジャパニーズウイスキーのブランド価値も高まっていくと話していました。

ジャパニーズウイスキーのブランド価値向上へ、そしてあの問題も・・・。

ジャパニーズウイスキーの今後の展開について再び日本洋酒酒造組合 新井さんのお話です。

日本洋酒酒造組合 専務理事 新井智男さん

自主基準からさらに進んで、製法品質表示基準(法令化)を目指すという事で、よりジャパニーズウイスキーの信頼性、評価が高まっていくことを期待していますし、またロゴマークを今後使用していくことで、さらに消費者の皆さん、あるいは販売店の皆さんから見てジャパニーズウイスキーについての識別性が増していくのかなと思っています。ジャパニーズウイスキーの基準には該当しないウイスキーについても、国産ウイスキーで非常に品質の良いものについては洋酒酒造組合としても大事なカテゴリーだと思っていますので、国産ウイスキー全体として今後も消費者の皆さんからご理解、支持いただけるよう努めていきたいと考えているところです。

ロゴマークがつくことで、かなり分かりやすくなりますよね!

(ジャパニーズウイスキーのロゴマーク/写真提供:日本洋酒酒造組合)

基準をクリアした製品にジャパニーズウイスキーのロゴマークを付けて、消費者にわかりやすく、そして国産ウイスキーと共存しながらも、その違いをはっきりさせていく狙いです。

今後はより品質が定められたジャパニーズウイスキーが世界へ、という事なのですが、輸出となると最近話題のアメリカの関税問題が日本ウイスキー業界にもあるようでした。日本洋酒酒造組合によると、アメリカは輸出先のTOP3に入るほどマーケットが大きいとのこと。八海醸造のライスウイスキーは、まだアメリカへの輸出はしていないのですが、今後輸出するとなれば、関税で価格に影響があった際には、リピーターを含め、興味をもった人にいかに手に取ってもらえるかが鍵だと。ジャパニーズウイスキーを含む日本のお酒の歴史や風土、作り手の想いを改めて発信していくことが今できることだと話していました。今後のジャパニーズウイスキーの世界進出にも、アメリカの関税問題は影響を及ぼしていきそうです。

現在開催中の大阪・関西万博でも、基準を満たしたジャパニーズウイスキーが万博協会を通じて午餐会などで提供されるそうで、ジャパニーズウイスキーの評価がさらに高まっていくことが期待されます。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)

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