あしなが学生募金 遺児支援の想いつないで 八王子駅など都内16カ所で実施
「一人でも多くの遺児に奨学金を届けたい」--。そんな願いが込められた「第109回あしなが学生募金」が、4月19日と20日にJR八王子駅など都内16カ所で実施された。親に障害があったり亡くなっているなど経済的に困窮している子どもを支援する、あしなが学生募金事務局により、26日(土)、27日(日)までの4日間行われる。
この募金活動は一般財団法人あしなが育英会の奨学金を受けている大学生たちが中心となり、「後輩遺児にも奨学金を届けよう」という想いをつないで、1970年から55年にわたり続けられてきたもの。全国120カ所で行われ、集まった募金の全額があしなが育英会に寄付されて日本とアフリカの遺児の奨学金として活用される。
市内堀之内にキャンパスを構える東京薬科大学2年の山下花奈さんも、その想いをつなぐ一人だ。自身も3歳の時にがんで父親を亡くし、同会の奨学金に支えられて大学に通うことができた経験を持つ。「金銭的な理由で自分は進学できないと思い込んでいた」という過去の経験から、「昔の私のような現状のさなかにいる子どもを減らしたい」と願い、昨年から街頭募金に参加している。奨学金により金銭面で安心して勉学に励むことができること、育英会を通じて同じ境遇で夢を追う仲間ができたことに感謝しているという。
経済的困窮・社会的孤立も
「物価高騰によって経済的に困難に陥っている」「病院に行くお金も時間もなく、体を壊したまま働いている」。あしなが育英会が昨年行った奨学生保護者アンケートに寄せられた、遺児家庭や障がい者家庭の切実な声。育英会の調査によると、高校奨学生世帯の平均可処分所得は187・8万円で、2023年国民生活基礎調査における全世帯平均の半分以下、母子世帯平均と比較しても約63・6万円低いという。経済的な困窮に加え保護者の「時間貧困」も深刻だ。同会奨学生の保護者は全国平均と比較して睡眠や食事等の生活必須時間が少なく、また20・5%が「相談相手がいない」と回答するなど社会的孤立の問題も浮き彫りになっている。
また高校授業料の無償化が決定したことで「奨学金は不要では」という声も聞かれるようになったが、同会はこれを「誤解」と否定する。「あしなが育英会の奨学生世帯はすでに無償化(就学支援金)の対象であり、今回の無償化は影響がない。また無償化の対象は授業料のみで、それ以外の学校教育費は依然として大きな負担となっている」と説明する。文科省の調査によると、授業料を除いた学校教育費の平均は私立高で約53万円、公立校でも約31万円にのぼる。
一方で昨年のあしなが育英会高校奨学金は、資金不足のため申請者3487人に対し採用数1538人で、採用率は44・1%に留まるのが現状だ。
先輩から後輩へ
JR八王子駅南口で19日に行われた募金活動には、14人の大学生が参加。のぼり旗や募金箱を手に、駅利用者らに支援を呼びかけた。
5回目の参加という坂木朔太郎さん(東京造形大学3年)は「自分も親が持病で十分に働けず、高校から奨学金を活用してきた。育英会へ恩返しし、またこれから一人でも多くの高校生が奨学金を受けられるようにしたい」と思いを語った。
あしなが学生募金事務局では街頭募金のほか、ネットや郵便振替でも寄付を受け付けている。詳細はHPで。あしなが育英会【電話】03・3221・0888。