渥美半島で絶滅したとされていた<アカハライモリ> 50年ぶりに再発見?
アカハライモリは本州に広く分布する両生類です。
繁殖行動や形態的な差異から異なる6つのグループに分けられることが知られており、渥美半島と知多半島に生息するアカハライモリ渥美種族は他の中部地方産の集団と比較して、繫殖期においてもオスが婚姻色を呈さないことが知られています。
アカハライモリ渥美種族は個体数を減少させており、渥美半島から既に絶滅したと考えられていましたが、愛知教育大などの研究グループにより、50年ぶりに再発見されました。
アカハライモリとは
アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)はイモリ科に属する両生類です。
本種は日本固有種として知られ、本州、四国、九州及びその周辺の島しょ域に広く分布。水の綺麗な池や水田、流れの緩い場所に生息します。
近年、土地開発や水質汚染により個体数を減少させている生物です。環境省のレッドデータでは準絶滅危惧 (NT)に分類されているほか、地域的な絶滅が懸念されています。
アカハライモリは腹部が赤またはオレンジであることに加え、皮膚や筋肉などに毒を持つことが特徴です。
アカハライモリの地方種族
アカハライモリは大きく分けて3系統、さらに繁殖行動や形態的な特徴から6つの種族(関東、東北、渥美、篠山、広島、中間)に分けられることが知られています。
中でも、渥美半島に生息するアカハライモリ渥美種族は3つの系統のうち中部日本群に属する集団です。
アカハライモリ渥美種族は他の中部地方産の個体と比較して小型の傾向があるほか、体表面の質感が滑らかで軟質であること、繁殖期のおいてもオスが婚姻色を呈さないことが知られています。
かつて、アカハライモリ渥美種族は愛知県の渥美半島と知多半島に分布していたものの、渥美半島では1973年を最後に確実な記録がなく、絶滅したと考えられていました。
その後、知多半島のアカハライモリが渥美種族の残存集団と判明するものの、既知の産地の多くは失われており、2019年時点の確実な産地は1地点のみとされています。
アカハライモリ渥美種族の再発見
長年、渥美半島から絶滅したと考えられていたアカハライモリ渥美種族ですが、2021年と2022年に豊橋市の住民が自宅敷地内の古井戸の近くでイモリを発見し、愛知県に情報を提供しています。
その後、愛知教育大などのチームが周辺を調査し、市内の休耕田2カ所で100匹以上のアカハライモリ渥美種族を発見。渥美半島での発見は実に50年ぶりとなりました。
貴重なアカハライモリ
再発見されたアカハライモリ渥美種族ですが、本種族は絶滅のリスクが非常に高いことから愛知県で指定希少野生動植物に指定されており、採捕、採集、殺傷、損傷、譲渡等が禁止されています。
本種族の減少の原因は開発や生息地の消失などが考えられており、繁殖環境の保全が重要です。
また、アカハライモリはペットとして需要の高い生物であるため、本種族を含むアカハライモリの採集圧の増加にも注意する必要があります。
(サカナト編集部)