英語がなかなか話せるようにならないのはなぜ? 「ことばの仕組み」を「ことばの働き」と関連付けて学ぼう【高田智子の大人の学びなおし英会話】
学校でひと通り英語を勉強したはずなのに、いざ話すとなると英語が出てこないとお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、『高田智子の大人の学びなおし英会話 春号』より、NHK基礎英語の元講師の高田智子先生に、中学英語を「わかる」から「話せる」に変えるために必要なポイントを教えていただきましょう。
「ことばの仕組み」と「ことばの働き」
あなたは、下の3つの文章のニュアンスの違いがわかりますか?
( 1 )Do you want to be a baseball player?
( 2 )Do you want to read this book?
( 3 )Do you want to go for lunch?
これらはどれもDo you want で始まる疑問文です。話し手がどのような意図で聞いているのか考えてみましょう。
( 1 )は、「野球の選手になりたいの?」と、子どもに将来の夢を「たずねる」文です。
( 2 )の「この本を読みたいですか?」は、おそらく読みたければ貸してあげましょうと「申し出る」文でしょう。
( 3 )は「ランチに行きませんか?」と「誘う」目的で発せられた文ですね。
これらの文はwant to do というフレーズを含む「疑問文」ですから、文法、つまり「ことばの仕組み」としては同じカテゴリーに入ります。けれども発話の目的や意図、つまり「ことばの働き」は異なります。
野球選手になりたい子どもが Do you want to be a baseball player? と聞かれたら、Yes I do. と答えるでしょう。けれども友だちがDo you want to go for lunch? と聞いてきたら、 Yes I do. ではなく、Sounds good. のように応じますね。このように、コミュニケーションの目的や場面、状況に応じて話すには、「ことばの仕組み」を「ことばの働き」と関連付けて学ぶことが必要です。
目的別のファイルで「わかる」から「話せる」へ
おそらく多くの方は、「ことばの仕組み」を中心に勉強し、「ことばの働き」にはあまり注意を向けてこなかったのではないでしょうか。大人の学びなおしでは、「ことばの仕組み」と「ことばの働き」の2 つを車の両輪として学んでいきます。
上の図のように、目的別のファイルを頭の中に作るようなイメージで考えてみましょう。
「場所を紹介する」というファイルには、そのために必要なhave/hasといった道具を入れておきます。「人を紹介する」というファイルには3 人称単数現在などを入れておく、というイメージです。
このように整理しておくと、コミュニケーションの目的に応じて、必要な知識をすぐに取り出すことができます。
いかがでしょうか。「英語を話すのが苦手」という方も、「ことばの働き」にも目を向けることで、英語が話せるような気がしてきたのではないでしょうか。
「高田智子の大人の学びなおし英会話」では、「ことばの働き」を中心に扱っています。春号からの方も、夏号から始める方も大歓迎です! この夏、一緒に英会話をものにしていきましょう!
高田智子(たかだ・ともこ)
清泉女子大学教授。2018-2021年度NHK基礎英語講師。学習院女子中・高等科に20年あまり勤務し、NHK「基礎英語」をはじめラジオ語学番組を活用した授業を実践。英語を使ってできることを増やすための指導法や教材の開発、教員養成に取り組む。関東甲信越英語教育学会理事。